02/7/6の全国集会を踏まえ、以下のような質問状を愛知県農業総合試験場に対し送りました。
研究開発もかなり進行しており、必然的に質問も突っ込んだかたちで、具体的な回答を要求しています。
それに対し、8/19、愛知県農試より回答がありました。赤文字で示したのが回答です。
遺伝子組み換えイネの
研究開発についての質問状と
愛知県農試からの回答

@
現在愛知県農業総合試験場で行われている、除草剤耐性遺伝子組み換えイネについての、今後の具体的な計画内容についてお伺いします。
昨年8月27日の同試験場での説明会では、同年9月以降、隔離圃場等での栽培試験の計画はない、とのことでした。現在の同試験場での隔離圃場、一般圃場での栽培試験を拝見し、その進展状況に少なからず驚いております。今後の計画について、期間、方向性など具体的にお答えください。
回答
今年の研究成果を見て判断しますが、今年を含めて1〜2年は、優良系統を選抜していく予定です。

A
本研究開発の目標、あるいは目標値を明示してください。
昨年9月、県議会での中村友美氏の質問第7の2点目に対する農林水産部長の答弁(注1)、同11月28日付、生活クラブ生協にたいして、愛知県農業総合試験場からの回答をいただいております(注2)。

そこでは概略的な説明ならびに、生産において想定されるコストダウンの率などの回答をいただいております。

本遺伝子組み換えイネの具体的な目標、ならびに目標値をあらためてお伺いします。
回答
稲作の低コスト化対策として、不耕起乾田直播栽培を推進しておりますが、雑草対策がネックとなっております。このため、除草剤の影響を受けないイネの開発ができれぱ、除草剤散布回数の減少やそれに伴う労カの軽減が図れます。
また、試験研究の段階での目標値ですが、このイネの導入により、現行の大規模直播栽培に比較して10%程度の生産費削減を目指しています。

B
共同研究者である、モンサント社での開発はどのように行われてきているのでしょうか。その経過、現状、今後の方向性について、具体的にお答えください。
C
貴試験場の共同研究者である、モンサント社側の研究開発についてお伺いします。
a.
モンサント社側の研究開発に係わるデータの開示をお願いします。
b.
7月5日の説明会では、モンサント社側の交雑率等のデータが一部開示されておりました。しかしながら、後日提出いただいた説明会用資料には、該当のデータは含まれておりません。この件についても、開示をお願いします。
c.
同説明会でのモンサント側のデータは、貴試験場のそれと比して精度の低いものでありましたが、その件につきましても、ご見解をお伺いします。
回答
(B、C−a、b、cは一括回答)
遺伝子組換えによる除草剤耐性イネの研究は、愛知県とモンサントとの共同研究であり、当場が公開しているデータは、全てそこで行った試験データです。
別紙にあります7月5日の公開データの一部にA群、M群と系統を分けておりますが、これらの由来は同じものです。

D
本遺伝子組み換えイネが商品化され、何らかの問題が発生した場合、その責任の由来は開発当事者であるモンサント社同様、愛知県にも生ずると考えられます。
a.
本遺伝子組み換えイネはまだ商品化されておりませんが、われわれ、消費者ならびに生産者の立場から、事前にその責任の所在を明確にしておかなければならないと考えます。見解をお伺いします。
回答
現在は、試験研究の段階であり、商品化についての取組は未定です。

b.
すでに本年1月30日、国会議員会館での『遺伝子組み換えコメ(イネ)いらない!』署名提出と院内集会で、農林水産省から『開発企業には責任が生ずる、許可をおろした農水には責任は生じない』旨の回答を得ております。この点についても見解を伺います。
回答
農林水産省が行った回答の経緯については、承知していないので、コメントは、控えさせていただきます。
本年、6月27日の県議会において、かしわぐま光代氏から、知事宛てに質問がなされておりますが、明確な回答がなされておりません。

BSE事件では、生産者、関連企業において、少なからぬ経済的損失が発生しております。また食品企業・行政の度重なる不祥事により、消費者の食品への不信は深まる一方です。そのような状況の中、消費者の意に反した遺伝子組み換えによる商品開発を強行すれば、全国レベルでの不買運動さえ起きかねません。

E
現在愛知県で開発されおこなわれている不耕起乾田直播栽培において、本年度の作付面積はどの程度かお伺いします。
回答
平成14年度の県内における愛知式不耕起乾田直播の栽培面積は、約500ヘクタールです。

F
現在行われている不耕起乾田直播栽培においては、除草対策に無理があり、結果的に使用基準を上回る除草剤の使用を余儀なくされているという情報を得ております。貴試験場で行なわれている本遺伝子組み換えイネの開発は、そのような状況をもふまえたものと考えてよろしいですか。またその解決策としての、遺伝子組み換えという選択肢があるとすれば、それについての見解をお伺いします。

また貴試験場として、このように基準以上の除草剤が使われているかもしれないという、愛知県の稲作の現状についてお考えをお聞かせください。
回答
1.
現在行われている不耕起直播栽培における除草剤散布体系は、栽培指針(マニュアル)として公衣している巾で、@イネ出芽前(乾田期)、A入水前(乾田期)、B入水後、の3時期にそれぞれ散布を行うとしており、この体系で充分除草効果がえられます。
2.
除草剤の使用回数については、移植栽培と同様に不耕起播種栽培でも除草剤処理後の管理が十分であれば栽培指針以上の散布は必要なく、徹底した管理を行うよう指導をしています。

G
グリフォサートの残留について。グリフォサートは植物体に吸収され体内移行する除草剤であると承知しております。
a.
開発中の遺伝子組み換えイネに取り込まれたグリフォサートの経路をお答えください。また玄米に蓄積する危険性はないのですか。
b.
現在定められている玄米のグリフォサートの残留許容基準値は0.1ppmですが、開発中の遺伝子組み換えイネの各部位の同残留値をお答えください。
c.
開発中の除草剤耐性遺伝子組み換えイネの各部位のグリホサート残留値を答えください。
回答
(G−a、b、cは一括同答)

これらの試験は、グリホサートの適用を拡大する場合に、申請者が必要に応じて行うことになると思われますが、愛知県では行っていません。

H
除草剤耐性イネの遺伝子の人体内および環境中における外部流出について
a.
英国食糧基準庁報告書(注3)によれば、モンサント社のラウンドアップ耐性大豆を食事としたヒトの初めての実験が行われました。大腸切除患者に除草剤耐性大豆を含む食事を一食(450g)与えただけで、数時間後にほとんど分解されないまま組換えDNA(epsps)が腸内で検出されました。このことは、これまで政府やモンサント社が認可の際に根拠としてきた「合成胃腸液内で数分間で分解」という主張と大きく異なり、試験管実験のみのデータの信頼性を揺るがすものです。貴試験場で行われている祭り晴れイネの除草剤耐性も同じ遺伝子を使っており、食用になれば同じ結果が生ずると考えられますが、こうした問題についてどのような見解をお持ちですか。お答えください。
b.
同報告書によれば、この除草剤耐性遺伝子が小腸内の腸内細菌と組換えを起こし、除草剤耐性菌が腸内で検出されました。貴試験場の除草剤耐性イネの場合も同じ可能性がありますが、このような場合の安全性についてどのように対処しますか。お答えください。
回答
(H−a、bは一括回答)
一般的には、消化不良などの要因で、食物のDNAの一部は分解されずに排出きれるので、組換え作物の場合でも同様な現象があらわれるものと思われます。また、英国食糧基準庁は「人あるいは動物消化器官で、機能しているDNAかパクテリアに取り込まれる可能性は極めて低い」としています。今後、さらに研究の進展が必要であると思われます。

c.
腸内細菌に遺伝子が伝播するならば、当然野外での耐性イネの死骸、残骸などから土壌細菌への遺伝子伝達も考えられます。様々な土壌細菌が除草剤耐性遺伝子を持つようになった場合の土壌環境に対する安全性をどのように確保しますか。
回答
様々な土壌紬菌が除草剤耐性遺伝子を選択的に持つとは考えられません。

d.
土壌細菌が除草剤耐性になるかどうかについて、貴試験場における環境安全性の試験では留意されていますか。
e.
これまでの栽培試験でも、土壌中にラウンドアップ耐性菌が出現している可能性がありますが、検出のための実験は行われたでしょうか、あるいは今後行う予定はあるでしょうか。
回答
(H−d、e一括回答)
ラウンドアッブ耐性作物が大規模に作付けされているアメリカでも、ラウンドアップ耐性菌が増加し、環境リスクをもたらしたとされる事例は報告されておりませんので、遺伝子の水平移動によるこの耐性菌出現の可能性は低いと考えられます。
愛知県では、この耐性菌検出のための実験は行っていません。

A 第7の2点目
遺伝子組み換えイネの方向性について質問しています。県農林水産部長の答弁は『遺伝子組み換え稲の研究は、中・長期的な視点から、日本の稲作の将来を考えて行っているものでございます。一方、米の生産調整は、当面の需給の不均衡に対処するために行っているものでございますので、ご理解をいただきたいと存じます。』となっています。
クラブ生協の質問(GMイネのコスト削減について)に対しては、
『1.1996年の総理府「食料・農業・農村の役割に関する世論調査」によれば、回答者の83.4%が「国内で生産できるものは、生産性の向上を図りつつ、できるかぎり国内で生産する」としております。10〜20%のコストダウンは輸入米との価格対抗力を持つ技術ではありませんが、国内産農産物の生産向上のための技術開発は必要であると考えています。
2.3年後の生産者米価の見通しについては予測することはできません。
3.現行直播栽培に比較して10%程度の生産費削減を目指しています。』
注3
英国食糧基準庁報告書
詳しい情報は『遺伝子組み換え情報室』をごらんください
http://www2.odn.ne.jp/cdu37690/gmdaizunodnatyouwotuuka.htm