生活クラブ生協の質問状に対する
愛知県農試からの回答書
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13農総試第42号
平成13年11月28日
生活クラブ生活協同組合
反GMイネ実行委員会委員長
新谷千晶様
愛知県農業総合試験場長(印)
遺伝子組換えイネ実験についての質問状について(回答)
晩秋の侯、ますます御清栄のこととお喜び甲し上げます。平成13年11月2日付けで送付されました愛知県農業総合試験場における遺伝子組み換えイネの実験に関する再質問の回答については、別紙(以下)のとおりです。
担当 | 企画情報部共同研究推進室 |
電話 | 0561−62−0085 |
内線 | 323 |
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● | 質問@ 愛知県の農業に対する基本政策をお尋ねします。また、特に稲作に対する政策もお伺いします。 |
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回答
農業の基本政策については、平成11年1月に「あいち農林水産業ビジヨン2010を公表しており、多様な消費者ニーズヘの的確な対応、環境と調和した農業の推進を柱にして、魅力とやりがいのある農業の実現をめざレています。この中で、稲作については次のように記述しております。「農地の利用集積により経営規模を拡大し、直播栽培技術などを積極的に導入することにより、労働生産性を飛躍的に高めるとともに、水稲と麦や大豆を合理的に組み合わせた、大規模水田経営の確立と低コスト生産を進めます。」
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質問A GMイネの栽培コスト削減について
農業総合試験場の説明では、GM祭り晴の直播栽培によるコスト削減効果は10〜20%とのことです。その程度では輸入米に対し価格対抗力は全くなく、GMイネが国内で実用化・商品化される場合、さらに安いGM米の輸入を促進し日本の米作りを一層困難にしかねません。具体的な見通しを伺います。
また、3年後の在来祭り晴及び3年後実用化した場合のGM祭り晴の生産者米価見通しをお答えください。
また、現行直播栽培とGM祭り晴直播栽培のそれぞれ生産コスト試算の明細をお答えください。 |
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回答
1.1996年の総理府「食料・農業・農村の役割に関する世論調査」によれば、回答者の83.4%が「国内で生産できるものは、生産性の向上を図りつつ、できるかぎり国内で生産する」としております。10〜20%のコストダウンは輸入米との価格対抗力を持つ技術ではありませんが、国内産農産物の生産向上のための技術開発は必要であると考えています。
2.3年後の生産者米価の見通しについては予測することはできません。
3.現行直播栽培に比較して10%程度の生産費削減を目指しています。
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質問B GMイネを商品化・実用化した場合の県内米作への影響について
GM原料の表示制度が今年4月より開始されましたが、GM原料表示された食品を見かけることは、ほとんどありません。このことは、GM食品が消費者に受け入れられていないことを企業が反映させたものと考えられます。また、ハンバーガーのM社もGMポテトの不使用を明らかにしています。県内でGMイネを商品化・実用化した場合、愛知産米の市場評価を下げ、より一層稲作農業の継続が困難となる可能性が高いと考えられますが、見解を伺います。 |
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回答
開発中のGMイネの商品化・実用化については未定です。
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質問C 有機農業への影響について
県下自治体の中には、有機農業の推進を掲げるところも見受けられます。GM作物は、有機農産物として認証を受けられませんが、有機農業による米作りに対し、GM遺伝子による汚染や精米・流通における混入の危険が発生します。有機農業への影響について見解を伺います。 |
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回答
隣接ほ場にGMイネがあっても、一定の距離を置くか、開花の時期が異なる品種を栽塔することで支障はないと考えます。
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質問D 遺伝子汚染・在来種汚染について
日本のいわゆる「狂牛病」問題では、病原体タンパク質の種を超えた伝播への対策が全く不十分であったため、非常に大きな社会問題を引き起こしました。遺伝子の汚染はさらにそれ自体が生命活動の一環であるため、一旦汚染が広がってしまえば、もやは回収不能です。GM祭り晴実験圃場における交雑率は0.23%との回答が本年5月にあり、GMイネと在来イネの交雑が発生することが明確になりました。こういった遺伝子汚染・在来種汚染が発生することに対する見解を伺います。
さらに、GMイネを一般圃場へ大量に作付けする場合、分母集団が大きくなり、案験圃場における交雑よりも遥かに多く、また、相当遠距離まで交雑が起きると考えられます。
見通しを具体的に伺います。
また、イネ花粉の寿命は、平均5分程度との回答でしたが個体差が考えられます。イネ花粉の寿命は最大何分あるか。寿命が長い場合、風速5mで最大何m飛散して交雑可能かお答えください。 |
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回答
1.安全性が確認されたGMイネとの交雑は問題ありません。仮に交雑があっても、愛知県では平均して2年に1度以上の割合で農家は種子を更新しておりますので、種子更新の際にGMイネの遺伝子は排除されます。
2.愛知県の採種農場で過去に調査したデータによると、交雑可能な花粉の飛散は20m以内でした。
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質問E 県とモンサント社との共同研究の権利について
県と企業などが合同研究を行う場合の根拠(条例など)を示してください。
仮に、GM祭り晴を商品化・案用化する場合に、育種を行った愛知県が持つであろう権利割合については未定とのことですが、同様なあるいは参考となる事例の有無及ぴ県の見通しをお答え下さい。 |
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回答
1.産学官の共同研究は「愛知県科学技術推進大網」に基づきます。
この要綱に次のような記述があります。「地域内外の幅広い研究者・技術者の交流から新しい科学技術の創出をめざす「科学技術交流センター計画」の計画的かつ積極的な推進をはじめとして、研究交流・共同研究に係るコーディネート機能の整備を図り、産・学・行政、研究開発拠点間、また研究領域・分野間における交流・連携関係を一層強化していくことにより、地域の科学技術総合力を高め、創造的な科学技術の推進を図っていきます。」
2.GM祭晴れの商品化・実用化については未定なので、権利関係についての協議は行なっていません。
なお、権利割合を定めたものとしては、種苗会社とのものがあります。
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質問F GM祭り晴研究の費用について
研究費用に関して、2001年度の研究費予算は368千円と回答いただきましたが、その内容明細をお答えください。また、今回の実験に要したモンサント社の費用について、お答えください。 |
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回答
1.研究費予算の内訳は、旅費65千円、消耗資材費300千円、通信費3千円です。
2.モンサント社が要した費用については承知しておりません。
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質問B 来年度以降の計画
県議会などの答弁では、2〜3年はGMはGM祭り晴の品種の選抜・生産力検定などを行うとのことですが、今年までの実験を踏まえ、来年度以降の実験計画の内容について、具体的にお答えください。 |
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回答
今後さらに1〜2年かけて、より有望な系統を選抜していく予定です。
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質問H グリホサートの残留性について
直播譲培によるGMイネヘのグリホサートの残留が不安です。輸入大豆・コーンにおけるグリホサート残留性について、検査方法、検査割合、結果をデータに基づき、お答えください。 |
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回答
残留性の件については、愛知県ではデータをもっておりません。
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質問L アレルギーの安全性の評価について
GM祭り晴への挿入遺伝子は除草剤耐性GM大豆(ラウンドアップレディー)と同じとのことですが、モンサント社が行ったラットの動物実験では、GM大豆の摂取により生育障害も見られたとの実験結果もあるとのことです。厚生労働省のアレルギー性の検証も挿入遺伝手のアミノ酸配列の類似性のみを対象としており、不充分と思われます。県としての見解を伺います。 |
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回答
厚生労働省による安全性審査基準は、国際的な評価及び国内における研究を踏まえ、薬事・食品衛生審議会において専門的に審議されたうえで、策定されたものであることから、適切であると考えております。
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質問J GM原料表示制度について
EUのGM食品規制案では、畜産飼料も含め使用した場合は、全ての表示を義務付け、認可されているGM原料が1%以下の場合のみに表示する必要がないとなっています。
一方、日本の制度では、タンパク質の有無を根拠に、GM原料を使用していながら大半の食品が表示を免れており、しかも、5%未満の場合も表示が不要となっています。日本の現行制度では、消費者が選択することが事実上不可能になっています。県民の安全を守るため、全てのGM原料を表示するべきと考えますが、県の見解を伺います。 |
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回答
遺伝子組換え食品の品質表示基準については、国が消費者、学織経験者、生産・流通関係者からなる「食品表示問題懇談会」で2年半にわたる検討の結果、取りまとめられたものであることから、この制度に沿って表示がなされれば、問題はないと考えております。
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質問K 消費者及ぴ生産者に不利益・損害が発生した場合の責任の所在について
実用化されたGM祭り晴によって、消費者・生産者が何らかの不利益・損害を蒙った場合、国、県、開発企業・種子企業にそれぞれどのような責任が発生するのか、見解を伺います。 |
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回答
現在は・試験研究の段階であり、商品化・実用化についての取組は未定です。
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完
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