遺伝子組換えナタネ交雑種研修会 in 三重
2016/06/12

遺伝子組換え食品を考える中部の会では、食と農から生物多様性を考える市民ネットワーク(食農市民ネット)との合同で、GMナタネ交雑種研修会を行いました。

まずは、多忙の中、遠方より参加をいただいたみなさまのご協力に深く感謝します。ありがとうございました。

GMナタネの全国的な調査が始まって10年あまりが経過しています。その調査結果も、精度の高いものになってきています。そんな中、セイヨウナタネは交雑を起こしやすいアブラナ科植物ということで、中部の会でも雑種と見られるナタネを確認する機会が増えています。
今回の企画では、全国で調査活動をしている団体などでも雑種と思われるナタネと遭遇する可能性もあることから、それを見分けるための研修を目的としています。

さらに中部の会では、今回の研修会の後日、顕微鏡観察による雑種とセイヨウナタネの花粉の違いを検査するという目的もありました。

参加者には、実際に現地に自生するセイヨウナタネと交雑種を採取、確認し、さらに中部の会で設定した会場に移動後、試験紙による簡易検査、その集計なども行っていただきました。今回の企画をきっかけに、今後、交雑種に関する相互の情報交換を行い、GMナタネの全国調査をさらに意義ある方向に展開できればと期待します。

中部の会では、この調査に先立ち、6/5に下見調査を行い、あらかじめ交雑種の自生ポイントを確認しておき、限られた時間での研修を少しでも充実した内容となるよう努力しました。
クリックで詳細地図

今春(2016年)に行った抜取隊では、過去最多の6200本のナタネが駆除され、その多さに大いに驚かされました。これは、参加していただいている抜取隊員の熟練もあり、かなり徹底した駆除ができたものと思われます。しかしながら、第17回抜取隊の3276本と比して倍近くの数値となってしまっています。この事実から、依然として、輸送トラックからのこぼれ落ちが防ぎきれていないことが考えられます。またすでに、現場でのGMナタネの世代交代が継続的に行われていることも否定できません。

春の抜取隊から2ヶ月以上が経過した今回の現地研修会では、確認されるセイヨウナタネの数は激減していました。それに比して(これはあくまでの目視による判断ですが)、交雑種とみられるナタネが頻繁に確認されたように思われます。

今回の調査地点(左地図参照):クリックで詳細地図
A地点四日市市松泉町交差点南
B地点海山道1交差点南
C地点肥田町交差点南
D地点磯山駅前すぐ南
E地点大倉交差点歩道橋下
いずれも、雑種と思われる個体が複数確認されている地点を選抜。

検査結果の集計はこちらをごらんください。

中部の会での交雑種確認
中部の会では、いずれもDNA鑑定は行っていませんが、
2008年4月在来ナタネとの交雑を確認
2009年4月カラシナとの交雑
2009年秋ブロッコリー、カブなどの栽培種
2010年6月ハタザオガラシ、イヌカキネガラシとの交雑を疑わせる個体
を確認しています。いずれも高確率でGM陽性を確認しています。

交雑種の特徴
セイヨウナタネと比べて、枝が多く、垂直に上に伸びる
セイヨウナタネの自生区域と一致
交雑の相手として、同じ区域に自生するイヌカキネガラシ、ハタザオガラシなどが考えられる
種鞘が不稔の率がとくに高い
雄しべの葯に花粉ができないことが多い
2010年6月撮影
2011年11月撮影
自生のようす 中部の会では上記、2010年以前にも、雑種とは気付かずにサンプルとして採取していました。なんと、中部の会が初めて四日市港を訪れた2004年7月に、セイヨウナタネとしてサンプリングしていた事実が記録されています(RR陽性)。

交雑種をセイヨウナタネとして認識してしまう例は、中部の会の調査エリア以外(博多港など)でも考えらます。

現在、環境省など国のレベルでは交雑について、大きな問題として取り上げていません。GMナタネの自生拡大、さらには交雑による環境への影響を考えなければならないのではないでしょうか。

今回の研修が、日本各地での調査活動にプラスになることを期待します。


セイヨウナタネ
Brassica napus

ハタザオガラシ
Sisymbrium orientale

イヌカキネガラシ
Sisymbrium altissimum

中部の会では、今回採取した検体のさらなる考察として6/14、それぞれの花粉の顕微鏡観察を行いました。その模様はこちらをご参照ください。

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