カナダの科学者らがSARSウイルスの遺伝子を解読

 

03年4月14日(月)

ワシントンポスト

ロブ・スタイン(スタッフ・ライター)

訳 河田昌東

 

カナダの科学者らが国際的な健康危機をもたらした新型肺炎ウイルスの遺伝子構造を解読した、と発表した。ブリテイッシュ・コロンビアのマイケル・ゲノム・科学センターの研究者らは、この情報を世界中の科学者らがこの病気と戦うためのデータをインターネット上で利用できるように公開した、といった。

コロナウイルスと呼ばれるこのウイルスの遺伝子の青写真は、科学者にとっていくつかの理由で必須なものである。最も直接的にはこのゲノムは新型肺炎SARSの更に正確な診断の開発スピードを早めるだろう。それによって公衆衛生当局が疑わしいケースを確認することが容易になり、初めて病気がどのようなスピードで広がったか、正確に知ることが出来る。少なくともこれまで19カ国で2960名の患者が報告され、119名が死んだと推定されている。アメリカの保健当局は現在バージニア州を含む少なくとも20州の166名の疑わしい患者を検査中である。このうち何人が真のSARSかは、正確な試験方法が無かったので分かっていない。

また試験方法は患者が何時感染したかを探るのにも欠かせない。SARSは潜伏期間が2日から7日だと考えられているが、保菌者が発病するまでにどれだけ長い期間ウイルスを撒き散らしているかは分からなかった。「これはSARSの拡大を阻止する戦いにとって大きな前進だ」と同センターのプロジェクト・リーダー、キャロリン・アステルは言う。彼女は普段はガンの研究者である。

科学者らが、コロナウイルスがSARSの原因だと突き止めて以来、遺伝学者らはその全遺伝子構造を解くレースを展開してきた。このカナダのラボはそれを最初に成し遂げたのだ。それが約30000個の成分(塩基?・・・訳者)からなると分かったのは、土曜日(12日)の午前4時だった。「この遺伝子配列決定は驚くべき速さで行われた。また、こんなに早く公に利用可能になったのも前例がない。早く情報を公開することで更に研究が進むだろう。」とハーバード医科大学のヘンリー・L・ニーマンは言う。

遺伝子構造の解明はこのウイルスが自然界に隠れていて、動物から人間へジャンプしたのか、あるいは人間のコロナウイルスが突然変異を起こしたものかどうか、などの解明にも手助けになるだろう。 「このウイルスがどこから来たのか正確に理解するための何かをきっと与えるだろう、という意味でこれは前進だ」とカナダ・トロントのマウント・シナイ・ホスピタルの感染病専門家ドナルド・ロウはカナダ放送協会に言った。

 

    データ集に SARS-コロナウイルス(Urbani株)DNAの全塩基配列

(2003414日(月)午前1055分、アメリカ疾病予防センター発表)

 

 

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