注 釈:本文中印の付いた語句について解説しています。


FONSI:米国の環境影響アセスメント制度上の評価方法のひとつ。EA(Environmental Assessment=環境評価)を行った結果公開され、それに対するパブリックコメントを募集。その結果、環境への顕著な影響がないと判断されるとFONSI(Finding of No Significant Impact=顕著な影響が見られない)と評価され、そのうえで他の連邦政府機関の評価がされ、たとえばGM食品の承認が完結される
シンジェンタ(Syngenta):2000年、ノバルティス社(スイス)とゼネカ(英国。99年アストラ社を併合)が合併して出来た会社。
LL(リバティリンク):アベンティス社の除草剤バスタ(主成分グルホシネート)に耐性のあるGM作物。トウモロコシ、ジャガイモ、イネなどがあるが、LLライスは米国でも未承認。日本では、この除草剤に耐性のセイヨウナタネの自生が問題となっている。
SBL:イネの品種名に付加される略号。Sとは縞葉枯れ病(Stripe)、BLは(Blast)いもち病。愛知県の米の開発品種あいちのかおりSBLは、これらふたつの病気に対して抵抗性をもっている。ほかにも新潟、富山でもコシヒカリBL品種を非組換えで開発している。
ディフェンシン:カラシナのほか、一部の植物が持つ抗菌性タンパク質。ディフェンシン遺伝子を組み込んだ耐病性イネなどの研究が行なわれている。
Btバチルス・チューリゲンシス(Bacillus thuringiensis)という土壌細菌のこと。これが発生するタンパク質は、特定の害虫を殺す毒素を有する。ただしほかの昆虫にも毒性があるという報告もある。この遺伝子を組み込んだトウモロコシなどがある。
モンサント社:GM作物の種子、農薬メーカーの大手
除草剤耐性遺伝子組換えイネ:特定の除草剤に対して耐性のある遺伝子組換えイネ
グリホサート:除草剤に使われる成分(ラウンドアップを参照)
こぼれ落ち:ナタネを輸入している港周辺で、陸路での移送の際、トラックから積荷のナタネがこぼれ落ち、道路脇などで自生。
遺伝子汚染:本来、混入してはならないにもかかわらず、交雑などの要因で非組み換え種子に組み換えの遺伝子が乗り移ってしまうこと。現在、米国からの輸入種子(特にコーン)で問題になっている
GM(O):Geneticaly Modified Organism(遺伝子操作・組み換えされた生物)の略
トリプトファン:人間にとって必要不可欠な必須アミノ酸のひとつといわれる。脳のはたらきに係るとされ、サプリメントなどにも利用されている。トリプトファン事件というのがあり、昭和電工が発売したGM技術によって得たトリプトファンサプリメントだったが、毒性のある不純物のおかげで米国で38名の死者を含む、多くの被害者を出した事件。
パーティクルガン法:遺伝子組み換えの方法で、超小型の空気銃の要領で異生物体の遺伝子を組み換えをしたい作物の遺伝子に打ち込む装置
閉鎖系温室:農業試験場などで、気密性を保つことのできる試験栽培温室。この中で栽培された植物はそのままその施設内で焼却処分され、外部へ持ち出されることはない
非閉鎖系温室:細かい防虫アミで外部からの昆虫などの侵入が防がれていて、試験栽培のできる温室。この中で栽培された植物は外部へ持ち出されることはない
隔離圃場:外部からの持込、工作、または外部への持ち出しができないように、あるいは、動物が侵入できないように金網などのフェンスで仕切られた実験圃場。『模擬的環境利用』がこれにあたる。
一般圃場:通常の圃場。
個体(カルス):遺伝子を組み換えられたもの。植物としての形態はあっても、不完全なものもふくまれる
系統:遺伝子を組み換えられたもののうち、選抜され、外観、性質ともに完全に近いもの。(注:個体、系統とも品種としては認められない。)
ラウンドアップ:モンサント社の商品、除草剤。主成分グリホサート
クリンチャ―バス:幼生雑草を駆除できる除草剤(商品名)
初中期除草剤:水田などで使用。水中での雑草の発芽を抑制する
ラウンドアップレディー:ラウンドアップに耐性のある、という意味
低グルテリン米:酒米などに使われる低タンパクの米
種子支配:GM種子の特許権のおかげで、その種子の販売を特定の会社が独占してしまうこと
戻し交配:作物の品種を固定する場合に使われる手法。作出した『新品種』を『在来品種』と交配させる。通常この作業を最低数回行う必要がある。
トレーサビリティー(追跡可能性)農産物の流通経路から生産現場までの一部始終をたどることのできるしくみ
マーカー遺伝子遺伝子組み換えをするとき、その作業がうまく完了したかどうかを見極めるため、特定の試薬に発色したり、特定の抗生物質に耐性のある遺伝子もいっしょに組み込む。抗生物質耐性遺伝子を使用した場合、組み換え作業後、抗生物質を投与することで作業の完結を判断する。とくに抗生物質耐性遺伝子の使われているGM食品を摂取することで、ヒトの腸内細菌に抗生物質耐性の遺伝子が移るのではないかという問題が指摘されている。ハイグロマイシン、カナマイシンなど数種類の抗生物質耐性遺伝子が使われていて、現在認可済みのGM作物の大半がこれに由来している。
アグロバクテリウム法:アグロバクテリウムとは、植物の体内に侵入し感染症を起こさせる微生物。この「植物体内に侵入する」性質を利用して、特定の植物に組み込ませたい遺伝子を組み込ませるのがこの方法。
イムノクロマト法:特定のタンパク質に反応、発色することで高感度で検出する。米国での農産物の移送に際しては、簡易ですがこの方法で検査を済ませ非GMを確定した上で行っています。GMナタネの自生調査にも使われています。
ベクター:『運び屋』『媒介するもの』。アグロバクテリウム法などで、感染力の高いウイルスに由来する遺伝子に目的の遺伝子を移入させる。この遺伝子(DNA)をベクターと呼ぶ。
プロモーター:ベクター遺伝子がそれにあたり、組み換え生物の性質を決めるタンパク質の産生を促すスイッチのようなはたらきをする。
プラスミド:宿主染色体とは独立していて、自ら複製増殖機能のあるDNA(核外遺伝子)。ベクターとしての役割を持つ場合が多い。たとえば抗生物質耐性遺伝子を持ったプラスミドをベクターとして使い、その抗生物質を含んだ培地で大腸菌を培養すれば、そのプラスミドが導入された大腸菌だけを培養することができる。
サザンプロット解析:遺伝子を電気的に泳動させ、特定の遺伝子を解析・検定する方法。
イムノプロット解析:遺伝子を解析・検定する方法
コーデックス:国際食品規格。1962年、FAO(国連食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)が合同で始めた事業。もともとはコーデックス・アリメンタリウスというラテン語からきた言葉で、食品規格という意味を略してコーデックスと呼んでいる。日本は66年に加盟。
カルタヘナ議定書:正式には生物多様性条約第19条に基づくバイオセーフティに関するカルタヘナ議定書を指す。2000年南米カルタヘナで採択された。遺伝子組み換え生物の国際的な移動にともなう、生態系への影響に対処するために定められた。日本は03年、この議定書に調印、04年から国際的に発効。カルタヘナ議定書が生物の環境への影響を規制しようとするのに対し、工業などによる物理的な面からの規制を目的としたものに、気象変動枠組条約、京都議定書がある。これら両議定書に米国の調印はまだない。
MSA協定:1951年米国で制定された相互安全保障法。当時の米国の余剰小麦を援助という名目で安く供給する代わりに、極東の安全保障のための軍備増強を義務づけた。この小麦は『MSA小麦』と呼ばれ、日本の小麦農家に大打撃を与えた。のち1960年、この協定は日米安全保障条約へと進展する。
開放系利用:一般ほ場と同じ意。
宿 主:組み換え品種を作出するための基になる作物品種。
アレロパシー物質:他感作用、遠隔作用ともいい、生物個体(ことに植物)の生物物質が、近隣の他・同種の個体に及ぼす作用。一般に阻害作用をさし、先住者が後続者の育成を妨げる効果をもつこと。連作障害などの例がある。
TCAサイクル:生物体内で栄養分が様々な化学変化を受けてゆく様子。クエン酸サイクルとも言われ、生物が生存するための正常な新陳代謝のサイクル。これがうまくはたらかなくなると乳酸などが発生し、疲労や健康障害につながる。
ターミネーター:組換えを行なった生物が目的の性質を発現するためのきっかけとなるのが、プロモーター遺伝子なのに対し、ターミネーターでは、例えば第二世代ではその性質が発現しないか、自滅(発芽しないなど)させる性質をもった遺伝子。これにより農家は自ら種子を採ることができなくなる。自然界に放出された場合、その拡散を防ぐという目的もターミネーターにはあるが確実とはいえず、いったん世代を重ねるか他種と交配すれば自滅機能が薄れたり失われることもある。
特定遺伝子組み換え作物:実質的同等(性質はちがうが主成分については組換えをする前と同じ)とは異なり、明らかにもとの種とは違う成分が含まれるか、またはその増減が大きい作物。例として:高オレイン酸大豆、花粉症緩和イネなど。
第二世代の遺伝子組み換え作物:生産や流通段階でメリットのある作物に対して、消費者にそれを持たせた作物のことをこう呼ぶ。花粉症を緩和、オレイン酸を高める、特定のビタミンを強化するなど。
熱ショックタンパク質:熱の刺激ストレスに応答して発現が誘導されるタンパク質。細胞を高い温度にさらした時などに合成されるタンパク質。
IPハンドリング:分別生産流通管理(Identity Preserved Handling)。組み換えと非組み換えがきちんと分別して流通されたかどうか、組み換えの混入がないかなどを証明する根拠となる。
リスクアセスメント:まずリスクを見積り、評価することで、それに対応すること。
リスクマネジメント:人間の健康や生態系へのリスクを低減させるために、必要な措置を確認し、評価し、選択し、実施に移すプロセス。
リスクコミュニケーション:リスクアセスメント(評価)をする者、リスクマネジメント(対策の実施)をする者及び消費者、生産者、科学者などが、リスクに関する情報交換を行うこと。リスクに対応する場合のもっとも基本的なもので、相互の提携が必要。
ステップ8:コーデックスで規格を作る場合、8つの段階を踏む必要がある。ステップ8はその最終段階で、コーデックス会議での正式採択を意味する。
グルタチオンS−トランスフェラーゼ遺伝子:低温のストレスにも耐性があるとされる遺伝子。岩手の低温抵抗性遺伝子組み換えイネ『Sub29』に導入された。
抗生物質耐性遺伝子:マーカー遺伝子として使われる。目的の形質をもった遺伝子と一緒にこの遺伝子も導入すれば、特定の抗生物質を投与することで遺伝子の組換えが行われたかどうかを判別することができる。
エピト−プ:花粉症などのアレルギーを引き起こす原因となるタンパク質。
第一種使用:遺伝子組み換え生物などの実験を、環境中への拡散を防止せずに行うこと。GM作物の(隔離・一般ほ場での)屋外栽培試験はこれにあたる。
第二種使用:遺伝子組み換え生物などの実験を、環境中への拡散を防止しつつ行うこと。温室などの閉鎖された施設内でおこなう。
ペプチド:アミノ酸が化学結合して連結したもので50個までのものをペプチド、それ以上をタンパク質という。
隠れGM個体:GMナタネで起こっている現象。試験紙などを使った簡易検査では陰性と判定されるのに、PCR法などの遺伝子レベルの検査では陽性と判定される個体。
FDA食品医薬品局。米国の政府機関。日本の厚生労働省にあたる