増える人口を養うために農業研究資金を!
ロバート・M.グッドマン Ph.D.
インターナショナル・ヘラルド・トリビューン
3月14日ウィスコンシン発
抄訳 山田勝巳
肥満と飢餓が共存するアメリカ。農家が低価格と酷税に抗議する中国。穀物が余っているのに蛋白質不足のインド。殺虫剤や化学肥料には誰も文句を言わないのにGMに反対するヨーロッパ市民。
こんな問題が世界に渦巻いているが、余り議論されないのが食料保障問題だ。世界の人口は今後30年で90億人に達する。殆どが、既に20億の人が栄養失調、飢え、貧困に苦しむ低開発国での増加である。たったの1世代の間に40億から70億に増えるのである。どうやって食べさせるのか誰も想像がつかない。1960年から人口が倍加するのに対応して、人類の歴史上初めて科学の発展という耕作面積を増やす以外の方法で食料を増やした。今後の食糧増産も科学への賢明な投資によるだろう。
1960年代に、緑の革命で色々な基金や政府が支援して食糧増産を達成した。しかし、今回の課題は収量を増やすだけでは対処できない。農業が、機械化、化学物質依存へと工業化するにつれて環境を損なってきた。北米の西部開拓も東部の土の疲弊が一因である。1930年代の機械化では黄塵地帯が出来、今では化学肥料が川や湖や地下水を汚染している。殺虫剤は有益な生物を殺し、抵抗性の害虫を増やし、短期的によく見えるが長期的には事態は悪化している。この基盤の上に食糧増産を成し遂げて行かなければならないのだ。
アフリカ、アジア、ラテンアメリカでは、人口増加、貧弱なインフラ、環境の荒廃、資源の限界が、来る数十年の飢えを深刻にするが、どう対処するのか。先進国で行き詰まっている方法で対処するのか。
私の答えは「No!」だ。これらの国の人々が自ら食料自立できるように支援すべきだ。食料援助をする変わりに、長期的な研究投資をして、彼らが自分達の環境、社会、経済にあった農業を決定できるようにすることだ。
現在直面する問題は、先進国が緑の革命で解決したものより遙かに難しい。人口は当時の倍でこれが更に倍増する。遺伝子工学は問題が多い。以前の解決策が今は問題の原因になっている。更に、先進国は途上国の農業開発に投資する政治的意志がない。とすれば、期待できるのは慈善基金やこの挑戦を受けようとするビジョンと方策を持った人達だ。彼らの持つリソースと、世界中の人々の生活の質の向上に対する不退転の意志を持ってすれば、リーダーシップと資金が得られ、一般の関心、そしていずれ各国の貧しい国の農業進展のための投資政策にも反映されてくる。
貧しい国々は、強力な公共農業機関と研究への大量の追加投資が必要である。遺伝子工学から有機農業までの最善の適正技術が必要で、重要な役割を担う地元の農民や企業がこれにアクセスできなければならない。過去に政治的結果として飢え、病気、餓死があったが、低開発国で農業が駄目になることによる災害の規模は、今まで経験したものを遙かに越えるだろう。
筆者はマディソンにあるウィスコンシン大学の植物病理、分子生物学、環境研究の教授であり、マックナイト基金の協同作物研究プログラムの議長でもある。