ザンビアがGM食糧援助に「NO」という訳
2002年11月7日
地球の友www.foe.org
訳 山田勝巳
遺伝子組み換えを食べるか、それとも死ぬか
アメリカ人にとって、ザンビア政府のアメリカからのGMコーン入り食糧援助に対する最終的拒否は、旱魃と飢餓に直面している国がどうして初めての大規模援助が断れるのか恐らく理解できないに違いない。 ザンビアの大統領レビィ・ムワナワサは、遺伝子組み換えでない食糧援助を他から探そうと決めた。 何故この贈り物にけちがついたのだろうか。
もし、リスクがはっきりしない遺伝子組み換え食料を食べるか、確実に死ぬことが分かっている飢餓を選ぶかの選択しかないとしたら、食べる事を選ぶのは明らかだ。 だが、明らかでないのは、何故ブッシュ政権が、ザンビアやその他の国にこの「取るか、止めるか」の情け容赦のない選択を出したかだ。
商業市場には、アメリカにも他の国にも非組み換えのコーンが何百万ブッシェルもある。 南アとオランダは、それをザンビアへ寄付しており、日本は世界食糧計画に南部アフリカ向け非組み換えコーン購入費用として1200万ドルの援助を申し出ている。 一方、アメリカでは、致死的アレルギー性が疑われた未承認のスターリンクコーンが大規模汚染を起こして以来、ここ2年間でタコスやトルティーヤメーカーは、旧来の白いコーンへの切り替えに成功している。 ブッシュ政権が、ザンビアの非組み換えコーンへの望みをかなえようと思えば、その国の食習慣にあわせて小麦や米を他の国へ援助しているように、比較的安価で援助できる筈だ。
ザンビア政府が遺伝子組み換え食料を拒否した鍵は、組み換えコーンに健康影響がありうるということだ。 これには、リコールできていなかったスターリンクが入っている可能性も含まれている。 もう一つの要因は、自分の国の農民が種を保存して栽培し、国内を遺伝子組み換えで汚染してしまうことだ。 そうなると、旱魃前は非組み換えコーンの輸出国で人気があったザンビアは、将来は農民が困窮し経済的困難に直面することになる。
世界の人々は、アメリカが組み換え食品は安全だと言っているのに、国立科学アカデミーや環境庁の科学諮問委員会等アメリカの科学組織がもっと安全性試験が必要だと言っているのはおかしいと感じている。 委員会は、殆どの組み換えコーンに入っている細菌毒は人のアレルゲンである可能性があると書いている。 この間、アメリカ国内で深刻なコーンアレルギーが数十件報告されているがきちんとした調査が行われていない。
事実、FDAは直接組み換え食品の安全性試験を行ってこなかった。 食品医薬品局は、単にバイテク企業に検査内容を自主的に提出するよう求めているだけだ。 国立科学アカデミーによると、業界データの透明性は全く不十分だという。 FDAが独立した安全性試験を行わない限り、世界中の人々は組み換え食品に対して正当な懸念を持ち続けるだろう。 また、組み換え作物のメーカーがモンサントやデュポンといったDDT、PCBs、枯葉剤といった数例挙げただけでも猛毒で地球をこれまで汚染してきた企業では懐疑的にならざるを得ないだろう。
一度わずかでも放たれてしまうと組み換えコーンで広範に汚染されてしまうことは、アメリカやメキシコで記録されたとおりだ。 汚染への恐れは2000年に全コーン栽培面積のたった0.5%のスターリンクが、全収量の10%以上を汚染したことでも正当化できる。 アメリカ農民の損失は10億ドルに達すると見られている。 組み換えコーンの栽培を禁止しているメキシコの遠隔地で組み換え特性のものが出てきたことは、いかに汚染が起こりやすいかということを示している。 汚染源は、アメリカから輸入された家畜の餌用か加工用のものが偶然植えられたかこぼれたかしたものだと考えている研究者がいる。
スターリンクの回収漏れに関する懸念は、2002年6月にボリビアの市民団体が、アメリカ国際開発局が贈った食糧援助にこの組み換えコーンが混ざっているのを発見した事から出てきている。 EPAの諮問委員会は、人が消費するのに安全なレベルというのはないと言っている。
最後に、飢饉と正当な健康と環境影響の懸念を考慮して可能な選択の中から、遺伝子組み換え食料を拒否するというザンビアの決定は尊重されるべきだ。 究極のところ、様々な世論調査によると、選択が可能なら、アメリカ人の大多数も遺伝子組み換え食品よりも旧来の食品を選ぶのだから。
ンニモ・バスィ事務局長 地球の友 ナイジェリア
ラリー・ボーレン健康・環境担当部長 地球の友 US