有害な薬用バイテク・コーンがアメリカで極秘に栽培

 

有機消費者協会HP

5/28/04)

訳 河田昌東

 

 ジョー・カミンズ教授が、危険な薬用作物がアメリカで少なくとも過去2年間に生産され、公に知られないままに規制の孔を潜り抜け販売されてきたことを明らかにする。

 

 最近、ヒトのリゾチーム・タンパク質やラクトフェリンを作るように遺伝子組換えされたイネの試験栽培に多くの人々の反対がしてきた。これまでこうした試験は休止されてきた

(詳細は:<http://www.i-sis.org.uk/isisnews/sis22.php>). 

ところが、アメリカの化学会社、シグマ・アルドリッチ社は少なくとも過去2年間、トリプシン、アヴィヂン、ベータ・グルクロニダーゼをトウモロコシで生産し販売してきた。またプロデイジーン社とシグマ・アルドリッチ社は遺伝子組換えしたトウモロコシとタバコでアプロチニンを商品化している。トリプシンは消化酵素のひとつで、研究や病気の治療、食品加工などに広く使われてきた。商品名トリプジーンは動物飼料添加剤として市販され、シグマ・アルドリッチ社とプロデイジーン社がジョイントで生産している。

 

 遺伝子組換え作物の開発はアメリカでは一定の手続きを経て行われている。始めにさまざまな季節の条件下で制御された野外試験が実施され、それから申請者が農務省の動植物保健サービス(APHIS)とFDA(食品医薬品局)、そしてもしそのGM作物がバイオ農薬(Btのような)を含んでいる場合にはEPA(環境保護庁)にもGM作物の規制解除を求めて安全審査を申請する。審査が終われば、そのGM作物は規制解除が行われ、モニターなしで栽培できるようになる。

 ところが、バイオ医薬用GM作物は通常の規制を全く素通りしているように見える。逆に、最終的な安全認可なしに野外試験から販売までを行っている。しかも、それはFDAや農務省の協力で行われているように見える。(農務省はある種のバイオ医薬品については独占的な権限がある)。こうしてバイオ医薬品は裏口から市場に出され、野外試験の規制の抜け道の恩恵をこうむっている。食品とバイオテクノロジーに関わる団体、ピュウ・イニシアチブによれば、「現在のAPHISの規制は政府によるしっかりした認可や公衆の監視もなく商業化を許している。開発者は薬用GM作物の商業生産の前に規制解除の申請を行わずに商業生産している。今はそうしたGM作物がもし環境や人間に対する危険性が明らかにあっても、報告し野外栽培許可を受けさえすれば商業生産規模でそのGMを栽培できる。」という。

 そうした作物生産の施設は「野外試験施設」として許可を受けるが、それらの施設がどこにあるかは「企業秘密情報」として非公開であり、その遺伝子や生産物が簡単に近隣の作物や土壌、水を汚染しても近所の人々にさえわからないのである。生産者や政府の規制当局を通じてしか試験施設がどこにあるかを直接知る手段はない。アメリカ政府は公的なチェックや精査をバイパスして薬用作物の商業化を勧めているようにみえるが、これはもし公開されればアメリカの食品輸出の市場を脅かすことになる。逆に、カナダ食品監視サービスは同国内で多くのバイオ薬用作物の試験栽培が行われているにも関わらず、「試験栽培された製品を市場に出してはならない」という姿勢を維持している。

 薬用作物の規制に関しては2000年にFDAがレビューし、2004年にピュウ・イニシアチブが考察したが、ピュウの報告書しか、事実上安全性を確かめないで出荷している事実をつかんでいない。

 始めに述べたように、薬用タンパク質を作る作物の試験栽培は通常企業秘密とされ、出来たものが何であるかも公には隠されている。しかし、AHPISはその作物について記録を持っており、どこで栽培されているかもつかんでいる。2003年から2004年にかけてプロデイジーン社はネブラスカ州とテキサス州、アイオワ州とミズーリ州で試験栽培した。それらの商業用医薬品生産は大半トウモロコシを使って行われた。トウモロコシは基本的な重要な食用作物であり、薬品生産用には使うべきでないにも関わらず、である。特に人間や家畜がそれにさらされた場合、決して良いものではないのだから。

 

 トリプシンはタンパク質を分解するためにすい臓で作られる酵素である。 それは実験室でも広く使われ、化膿の治療や糖尿病の治療でも使われている。また食品加工や消化を助けるために新生児に処方されることもある。この植物製品はプリオンや動物ウイルスの恐れがないので望ましいものではある。トリプシン製造業社のデータシートによれば、これは皮膚や目にアレルギーを起こし、のどに刺激を与え、突然変異を起こすかもしれない。アビデインはトリの卵にあるタンパク質である。これは多くの昆虫にとって必要なビタミンであるビオチンと結合する。昆虫はビオチンがなければ生きられない。アビデイン生産用に作られたトウモロコシは貯蔵中に虫害に強い。地球の友のケース・スタデイーによれば、アビデインはヒトや動物のビオチン欠乏症を起こし、免疫欠損や成長障害をもたらすという証拠が多数存在する。僅かなビオチン欠乏でもマウスとヒトで出産障害につながる。

 アプロチニンは通常すい臓や牛の肺で作られるタンパク質分解酵素阻害剤である。植物で作られる組換えアプロチニンは現在市販されている。地球の友のビル・フリーズはこの製品に関連するアレルギーやすい臓病についてレビューしている。アプロチニンは生殖障害があることでも知られている。前もってアプロチニンに暴露されているヒトがアプロチニンにさらされれば重大な危険が生ずる。例えば、2歳の子どもがアプロチニンのテストのあと重篤なアナフィラキシー・ショックを起こし、生命に危険なアレルギー反応で喉を含む体組織の膨潤と呼吸困難、急速な血圧低下に見舞われた。フィブリン接着剤(訳注:膠)を部分的に塗ったあとアプロチニンに暴露し、致死的なアナフィラキシーが起こった。フィブリン充填剤に暴露後、同様なアプロチニンの塗布で急速な皮膚反応を起こした。

 アプロチニン組換え植物の秘密の野外試験は、事前に外科手術を受けた人がトウモロコシ畑で短時間アプロチニンに暴露されたり、あるいは外科手術の後でトウモロコシ畑に行ったりしたら、重篤なあるいは致死的なアナフィラキシー・ショックをもたらす可能性がある。 最後の商業栽培されているトウモロコシ中の組換えタンパク質はベータ・グルクロニダーゼ(GUS)である。この遺伝子は実験室で広く使われているが、医学的治療における重要性はなさそうである。新生児用の調乳にはGUS濃度は低いが、母乳にはGUSが高濃度に含まれていることが知られている。GUS濃度が高いのは母乳を与えられた新生児の黄疸と関連があり、糖尿病の母親の母乳を飲んだ新生児に高いことが分かっている。GUSは試験生物の表現型にほとんど影響を与えないと信じられていて、組換えのマーカーとして広く利用されている。しかし、GUSは桃のアブラムシの食欲を活性化することが知られていて、組み込まれた生物に全く影響がないわけではないことを示唆している。

  結論として、危険な薬用作物を秘密裏に生産することは実は開発を阻害することである。そうした製品を透明性の高い公的承認なしに販売するのは傷口をさらに広げるようなもので、規制当局が公衆の安全性よりは企業の利益を優先している、という世論を強化することに他ならない。

 

 

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