New England Journal of Medicine(アメリカ医学会機関誌)
Volume 348:711-719
February 20, 2003Number 8
訳 河田昌東
弧発性クロイツフェルト・ヤコブ病患者の鼻腔上皮から病原性プリオンタンパク質を検出
著者:Gianluigi
Zanusso, M.D., Ph.D., Sergio Ferrari, M.D., Franco Cardone, Ph.D.,
Paolo Zampieri, M.D., Matteo Gelati,
Ph.D., Michele Fiorini, Ph.D., Alessia
Farinazzo, Ph.D., Marina Gardiman, M.D.,
Tiziana Cavallaro, M.D., Marina
Bentivoglio, M.D., Pier Giorgio Righetti,
Ph.D., Maurizio Pocchiari, M.D.,
Nicola Rizzuto, M.D., and Salvatore
Monaco, M.D.
要約
鼻腔上皮と嗅索が弧発性クロイツフェルト・ヤコブ病にかかわっている。我々は鼻腔表皮と鼻粘膜を検査し、鼻腔表皮に感染性の病原性プリオンタンパク質(PrPSc)が溜まっているかどうか調べた。我々は神経病理学的に弧発性クロイツフェルト・ヤコブ病と診断された9名の患者を調べた。脳組織、鼻粘膜のくっついた篩板、その周りの呼吸器上皮を採取した。対照に同年齢の対象患者及び他の神経縮退病患者の鼻粘膜を生検の際に採取した。鼻粘膜と呼吸器粘膜、頭蓋内嗅覚システムを光学顕微鏡で調べ、病理学的変化と異常プリオンの蓄積をウエスタン・ブロット法で調べた。
9人の患者全てで鼻腔内繊毛と中枢嗅覚器官から異常プリオン(PrPSc)が検出されたが、呼吸器官粘膜からは発見されなかった。対照の11名の患者からは異常プリオンは検出されなかった。
我々の病理学的、生化学的研究は異常プリオンが弧発性クロイツフェルト・ヤコブ病患者の鼻腔粘膜の神経上皮に蓄積していることを示し、鼻腔の生検で生前患者の診断情報が得られる可能性を示している。鼻腔はプリオンの感染経路やプリオンの拡散手段かもしれない。