緊急リリース:2001年6月14日
連絡先Amanda Gordon, NET, 202-887-8831 or 202-887-8841
Liz Hitchcock, U.S. PIRG, 202-546-9707 (ext.316)
抄訳 山田勝己・河田昌東
新たな研究結果によれば、アメリカにおける数千の遺伝子組換え体の野外試験栽培が数千箇所で行われており、試験栽培は農家と環境へ汚染の脅威ををもたらしている。
ワシントンDC発
バイテク企業は毎年何千もの組み換え植物を米国内で実験栽培している。公益調査グループと遺伝子組み換え食品アラートが共同で今日発表した報告によると、重大な環境と汚染の脅威がありその監視規則も整備されていないにも関わらず、農務省は1987年から2000年の間に30,000件近くもの野外試験を許可してきた。
報告書、「増加する危険:アメリカにおけるGM作物の野外試験」 は、アメリカにおけるGM作物の野外試験状況を初めてまとめたもので、環境中への遺伝子操作作物開放の危険性を取り上げている。「私たちの環境は遺伝子組換え体の試験場として使われており、一度放てば回収できない重大な危険をもたらしている。確実な安全対策が出来るまで、野放しの実験は止めるべきだ。」
実験作物圃場は農家に汚染の脅威を与え、農家は遺伝子組換え作物の試験が何処で行われているか知る手段も、どうやって汚染から守るかという手段も持たない。現在のシステムでは遺伝子組換え体を栽培していない農家の作物と企業の実験的な組換え体との間の受粉による汚染が起こってしまう。
現在、FDAとCDC(アメリカ疾病管理センター)、EPA(環境保護庁)は人間の食用に認可されていないスターリンク・コーンの調査を続けている。昨年、遺伝子組換えアラートが人間の食品からスターリンクを検出して、FDAが300品目以上を回収を命令し、農家や加工業者、穀物業者に数百万ドルの損害を与えた。
「もし、29000件の実験のどれかが近所の農家の作物と交配し汚染すれば、スターリンクで食物供給がこうむったと同じことが起こるだろう」とカプランは言った。
通称Btコーンと呼ばれる殺虫遺伝子を組み込んだ植物は、土壌をだめにし、オオカバマダラ蝶のようないわゆる非標的昆虫を殺す。その上、ウイルス抵抗性の植物は新たなウイルスの出現につながり、既存のウイルスを更に強くする恐れもある。もし、野外試験が適切でなければ、実験中の遺伝子が農家の生産物や環境中に入り込み不可逆的な遺伝子汚染をもたらす。
報告書の新事実
昨年行われたすべての野外試験の60%以上が「企業秘密」に属する秘密の遺伝子を含んでいる。これは一般人がそれらの情報について知ることが出来ないことを意味する。1987年から2000年にかけて、モンサントは毎年多数の野外栽培試験を行った。その数はおよそ2000件に上る。 1995年以来、野外試験を行ったトップ10社の中7社はモンサントとジュポンの2社に吸収合併された。
2001年1月までに、多数の野外実験を行った10の州と地域名を挙げると、ハワイ州
(3,275件), イリノイ州(2,832件),アイオワ州 (2,820件), プエリトリコ (2,296件), カリフォルニア州(1,435件), アイダホ州
(1,060件),ミネソタ州 (1,055件), ネブラスカ州 (971件), ウイスコンシン州 (918件), インジアナ州 (886件)である。
これらの実験的な遺伝子操作作物は、組換えの結果や環境への影響を調べるために開放された環境下で栽培されている。「遺伝子操作食物アラート」は遺伝子操作した作物をそうした開放された条件下で試験することは環境と近隣の農家に重大な脅威を与える、と指摘している。
野外試験の目標は遺伝子組換えによる生物の潜在的な生態学的リスクに関する情報を得ることにある。
しかしながら、農務省により得られたデータをチェックしてみると、そのデータと言うのは極めて少ないことが判明した。結果として、行われた膨大な量の野外試験に比べて、土壌に与える長期的な影響や非標的種への影響などに関する疑問には回答が無いままである。
「いかなる新しい技術も試験は必要だが、遺伝子組換え食品は試験段階でも環境中に放出する以前に重要な科学的問題を考慮しなければならない」と
オクラホマの農家で上院議員のPaul Muegge はいう。「そうした検討なしに野外試験を行うのは早計であり危険である。それは実験室の試験が終わらないうちに薬剤の臨床試験をやるようなものだ」
「増大するリスク:合衆国における遺伝子組換え作物の野外試験」は次のホームページで閲覧可能。www.pirg.org/ge。
LEON DROUIN KEITH (APプレスライター)
ロスアンジェルス発(AP)
遺伝子組換え作物の野外試験で農家、消費者、そして環境が危険にさらされている、と環境保護団体が新たな報告書で警告した。この報告書はカリフォルニア公共利益研究グループと遺伝子組換え食品アラートによって書かれたもので、農務省によるいいかげんな遺伝子組換え作物の栽培試験認可を批判している。「我々の環境は遺伝子組換えの大規模な実験場として使われている」と報告書が発表された記者会見で同研究グループのJulie Milesは言った。
同報告書によれば、農務省の基準では実験場から組換え植物が拡散し、既存の作物や環境を汚染するのを適切に防ぐことは出来ない。また、農務省が請求のあった試験の4%以外はすべて受理しているという事実は、同省が申請書にゴム印を押しているに過ぎないことを示している、と指摘している。 報告書はまた、試験植物に組み込まれた遺伝子は秘密に包まれている、という。すなわち、昨年度の試験のうち3分の2は企業秘密のようだ。
「この技術の審査は不適切であり、再評価の必要がある」と報告書の著者Richard Caplan は電話取材に答えた。
この会議で発言した有機農家のJames Birchは、セントラル・バレーにある彼の50エーカーの作物は遺伝子組換え作物によっておしまいになってしまうかもしれない、と心配している。 「コーンの花粉は何マイルも飛ぶし、私の畑はそれによってだめになるかも知れない」と彼は言った。彼は家畜の餌は通常遺伝子組換え作物なので、自分の畑には堆肥をやらないことにしている。
「きちんとした安全策が無ければ、組換え作物は食糧システムの中に入りこんでくる」と彼はいう。
国内のコーンと大豆の半分以上を占める遺伝子組換え作物は、ヨーロッパよりもアメリカで広く受け入れられてきた。しかし、ここでも矛盾から逃れられているわけではない。
昨年、消費者用には認可されていないバイテクコーンが、食品を汚染し、タコスその他のコーン製品を回収した。しかし、バイテク企業のスポークスマンは連邦政府の規制は消費者を守っている証拠だと言った。試験栽培をもっともたくさん申請したモンサント社のMark Buckinghamによれば「14年間の規制システムは環境と消費者を守っている」Buckingham によれば、試験栽培では緩衝帯に他の作物を植えたり、在来種とは栽培時期をずらしたり、試験植物を処分したり、色々な方法で防護は行われている。
バイテク企業組織の広報デイレクターLisa Dryは「我々は優秀な科学者をたくさん抱えていて、間違いのないデータを出しているので、大半の試験栽培の申請は認可されている」と述べた。
組換え作物で市場出荷前のものは、競争のために秘密が必要だ、とジュポン社の系列化にあるパイオニア・ハイブレッド社のスポークスマン Doyle Karrは言った。「それは我々にとってビジネスの一部だからね」
この報告書は1987年から2000年にかけてアメリカ農務省が認可した約29000件の遺伝子組換え作物の試験栽培を取り上げている。その大半はこの3年間に行われたものである。ハワイがもっとも多く、イリノイ、アイオワ、プエリトリコ、カリフォルニアと続く。
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訳注:同報告書からデータを転載する。
1987年から2001年1月までの間にアメリカで遺伝子組換え作物の野外試験件数(主なもの)
ハワイ(3275件)
イリノイ(2832件)
アイオワ(2820件)
プエリトリコ(2296件)
カリフォルニア(1435件)
アイダホ(1060件)
ミネソタ(1055件)
ネブラスカ(971件)
ウイスコンシン(918件)
インヂアナ(886件)
開発中のため、組換え遺伝子なども企業秘密で、何で汚染するのかも事前にはわからない。最大の実施者はモンサント社とジュポン社。