ISIS レポート WHO伝統医学への世界戦略 WHOは世界規模で伝統医学を各国の保険制度に盛り込もうとしている。 これは、特に医薬植物や伝統的知識のある第三世界にとって安全で手頃な効果的保険制度を構築する絶好の機会と言える。売り惜しみや医源的健康被害を増加させる遺伝子治療に何十億ドルも浪費するのではなく、ホリスティック医療モデルの研究にお金を使う時期が来ている。 サム・バーチャー WHOは今年1月WHOとしては初めての伝統的、補完的代替医療(TMとCAM)2002-2005の世界戦略を発表した。 何千年も遡る健康的実践が政策、制度、証明、生物多様性、伝統知識の保護と保存について明確にどういうものかまだはっきりしていない。 WHO健康テクノロジーの主任部長ヤスヒロ・スズキ博士は、「TMとCAMは、無批判に熱心な人達と全体的に懐疑的な人達両方の犠牲になっている。」そして、「この戦略は、人の持っている健康の真の力を引き出しながら、証明されていない、あるいは乱用されている治療のリスクを最小限にするためのものです。」という。 急性の呼吸器系の中国療法を長期的食事療法の補助として誤用してアメリカで死人が出たケースが示すようにTMを間違って使うと問題が起きかねない。 このような稀に起こるケースも、アメリカで死因の第3位になっている現在の処方薬や治療による有害反応に比べるとほとんど目立たない存在である。
無秩序に使用する更なる商業化によって、伝統療法が本当に必要な人々の手に届かなくなることが懸念される。エイズが蔓延している国では、4人に3人が何らかのTMを使っている。 南アでは伝統的に強壮剤として使われてきたスセーランディア・マイクロハイラの研究が進んでいる。これは、HIV/AIDS患者の体重を増やし、体力や食欲を刺激するのではないかと期待されている。 近代医療で使われている薬の約25%は伝統医療で使われていたものからきていることを留意していただきたい。 WHOは、戦略準備に3年掛けており、加盟国への援助目的は:国のTM/CAM政策と計画を作り実行に移すために健康制度とTM/CAMを統合する。 必須の薬草療法を含むTM/CAMの利用のしやすさと値ごろさの確保 TM/CAM製品と治療の安全性、効果、質を確固としたものにする。 TM/CAMの供給側需要側とも治療上適正な運用を促進する。 問題はこれらの勧告を国家レベルでどう実現するかである。 WHOによるTMの研究と評価は2000年より始められている。TMは、伝統中国医学、アーユルベーダ・インド医学、アラブのウマニ医学、ホメオパシー、整骨療法、カイロプラクティック等で構成され、これらを二つに分けている。 薬物療法では薬草やミネラル/動物の器官を用い、非薬物療法では針、マッサージ、整骨療法、リラクゼーション療法、瞑想、ヨガなどの技法を用いる。 近代医学が医療の中心である国では伝統医療はCAMとして扱われる。 今のところ、TMを医療に組み込んでいる国は中国、南北朝鮮、ベトナムがある。 中国では40%がTMで治療されている。 アフリカでは医療の80%がTMでマラリア地域では子供達の60%が家庭での薬草治療を受けている。 これはTM施術者と患者の比が1:200−1:400で一般開業医との比では1:20000と大きく違うためである。地元で受けられる治療が信頼できる手頃な薬草療法であることが一層重要になる。 中国の薬草療法アーテスミサ・アニュアは、薬剤耐性のあるマラリアに有効であることが最近分かり、年間150−200万人この病気で死亡しているのを予防できる可能性が出てきた。 もっと多くの研究者、医師、医療雑誌がTM/CAMを機会ある事に排除するのではなく貴重なのだということを学ばなければならない。ヨーロッパのホメオパシーは、イギリスの国家医療に統合されているだけでなく、学会の支持も得られてきている。
伝統代替医療は、途上国に多くの熱心な施術者と利用者がいる。伝統/代替医療が近代医療と併用できること、実際に行われていることは余り知られていない。 併用して害があるというケースは余りない。 代替医療は、先進国で広く使われている。 カナダでは70%、オーストラリアでは48%、USAで42%フランスでは38%となっている。 伝統・代替医療に使われる費用は世界的に急速に増えてきている。 マレーシアでは、伝統医療の費用は西洋医療に較べるとほんの少しだがそれでも合計すると西洋医療にはUS3億ドルであるのに対し伝統医療費はUS5億ドルとなっている。 USAでは代替医療に27億ドル/年支出され、オーストラリアとカナダではそれぞれ8000万ドル、24億ドルとなっている。伝統医療の地球規模の市場は600億ドルとなっており、イギリスでは23億US$が毎年伝統医療に支払われている。 WHOの伝統医療勧告では新しい医療素材の保護と保全記録データも入っている。原住民の知識も真剣に受け止められており、現地の部族代表は生物多様性の保護が目的だが、同時に土着の植物や動物が持ち去られ特許化されたり、最悪絶滅されたりという悪質な海賊行為を止めさせるために自分達の権利を主張している。 何世紀も正しく使われてきた土着の知恵が、住民に文化的に適合しない西洋医学が押しつけられ取って代わられている。(ドクターがきたぞ、助産婦を守れ!ISISニュース11/12.2001を参照)この知識の喪失が、地元民の健康を害している。 伝統・代替医療でも一律に受け入れられているものもある。 2001年には針と薬草医療に関する規則がイギリス上院で批准された。針治療は中国で発祥し、78カ国の針治療師と一般開業医で行われてきた。アジアには50,000人,ヨーロッパには15,000人の針治療師がいる。3000年の歴史の中で、鎮痛効果や出産前後の障害、癌の代替医療の一つとして良く知られるようになっていた。 多くの実証と上院の支持で、針は病院や一次医療の一部となりうる有力候補である。 英国針協会は、”良く分かる……”、”関節炎、癌、心臓発作、血圧等”と題した44冊のシリーズ冊子を家庭医出版(BMAと共同で)発行している。これが医師と同じくらい患者への情報源になっている。 現在英国では、10%の一次医療トラスト(PCT)は代替医療を取り入れたいとしている。健康生活センターではPCTと共同して組み入れが進んでおり、一般医からの紹介も受け付けている。チャールズ皇太子総合健康基金は、評価、医療の質の管理、証拠原理に関する情報を作成するための支援を行っている。 このサービスは、共同学習として知られ、成功例をネットワークで提供する専門家が居る。 世界戦略を実行するためには国家レベルの協力が必要で、現在情報の共有とデータ収集に19の研究所が関わっている。ホリスティックな健康管理専門家と彼らの方法をモニターし、評価し説明する地球規模の団体やNGOが出始めている。 これが伝統医療・代替医療の国際基準、ガイドラインを設定し、研究、教育、開発、保存、法的位置づけを規定している。 現在の所WHOの191加盟国中25カ国が伝統医療・代替医療政策を作っている。
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