アメリカがバイテク作物の規制を改定へ
農務省が遺伝子組換えの環境影響を検討
ワシントン・ポスト
(http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/articles/A40458-2004Jan22.html)
04年1月23日
記者:グリフ・ワイト
訳 河田昌東
米農務省は昨日遺伝子組換え作物の現行規制の改定に着手した、と述べた。これは遺伝子組換え作物の規制の環境に与える影響を包括的に見直す初めての試みである。
遺伝子を変えた植物の開発に対する政府の規制は近年における主要な矛盾であり、環境保護団体は規制が不十分で周辺の生態系を十分考慮に入れていない、と主張している。農務省当局者らは昨日この現行規制を改定する方向で再検討することで合意した。もっとも、この改定で規制が必ずしも厳しくなるとは限らないのだが。同省当局者は、自分達は現実をより良く反映させたいと考えているだけだ、と言った。「科学や技術が進むにつれて、我々は規制の枠組みをそれに合わせようとしているのだ」と農務長官のアン・ベネマンは言った。この変更案の中には、同省の規制権限を拡張し、遺伝子組換え作物の試験栽培の許可システムの全体的な見直しは勿論、これまで含まれなかったある種の植物や昆虫の規制も含まれる。新たな許可システムは生物を潜在的な危険性の評価に基づいて色々な段階に区分し、それに応じて適用する規制の度合いを変えることになろう。
加えて、農務省の動植物安全監査サービスは、既存の規制効果を評価し、広範な環境への影響に関する見解を今年度末までにまとめる予定である。この改定作業は今日から3月23日までのパブリック・コメントを求める期間から始まる。昨日の発表はバイテク企業を代表する商業団体に歓迎され、規制強化で遺伝子組換え食品に対する消費者の信頼を得られるようにして欲しい、と彼らは表明した。「人々に新たな技術を受け入れるようにする最良の方法の一つは、強力で健全な規制が機能していることを知らせることだ。規制が科学的根拠に基づいている限り、我々は支持する。」とバイテク企業連合のコミュニケーション部長のリサ・ドライは言った。
環境保護団体と消費者グループは、これまで長い間遺伝子組換え生物の環境への影響を調べるように主張してきた。そして彼らは昨日政府の広範な見直しにそれが含まれるというニュースを歓迎した。「政府はこれまでしてこなかった。それだけにこれは大事件だ」と言うのは、食品と栄養問題の消費者政策提言団体「公益のための科学センター」のバイテク・プロジェクト部長グレゴリ―・ジャフである。しかし、彼はこの規制改革は長丁場になり、出来上がるまでには数年間かかるだろう、とも付け加えた。食品安全センターの法務部長、ジョセフ・メンデルソンは、もしある種の生物が規制から外されるようなことになれば、規制を厳しくすることにはならないかもしれない、と懸念を表明した。「問題は結局のところ彼らがどれだけ責任を負うかどうかだ。換骨奪還にならなければ良いが」とメンデルソンは言った。彼のグループは有機農業を推進し、潜在的に危険性をはらむバイテクの応用を制限すべきだと主張している。
ベネマン農務長官は規制に対する如何なる変更も最も妥当な科学的でかつ現実的なリスク評価を基にすると述べた。今月初めに公表されたある調査によれば、世界中で7百万の農民が遺伝子組換え作物を栽培し、その多くは病害虫や雑草に対抗力を持つ組換え体である。これらの作物の栽培面積は、多くの環境保護団体やヨーロッパのいくつかの国の政府が遺伝子組換え作物の安全性や有用性に疑問を投げかけているにも関らず、昨年15%を越えた。政府による昨日の発表は、今週末に農務省の委託を受けた研究報告書が発表され、遺伝子組換え生物が食糧供給に障害を与えず、既存の生物種に危険性をもたらさないようにするための新たな技術が必要だ、という結論をだしたことに対する対応である。この報告書は米国研究審議会(National
Research Council )の専門家パネルによって作成されたもので、遺伝子組換え生物による潜在的に有害な影響を排除するために、「総合的な封じ込めシステム」が必要だと提案している。このシステムはパネルの専門家によれば、連邦の規制による監視が必要である。農務省動植物保全監視サービスは1987年以来バイテク規制を行い、10000以上の遺伝子組換え生物の試験栽培を監視してきた。この間、60種類以上の遺伝子組換え生物が安全と認定され、商業的利用のために規制を解除された。
環境保護団体とバイテク企業グループは昨日、この規制改定案を歓迎すると言いつつも、この改定の結果を批判する権利は留保した。