中国で未承認GM米販売  中国米輸出販売にも影響―グリーンピース

農業情報研究所(WAPIC)

05.4.15

 グリーンピース・インタナショナルが4月13日、中国で過去2年間、人間消費用に未承認の遺伝子組み換え(GM)稲が違法に栽培され、販売されてきたらしいと発表した(Scandal: Greenpeace discovers illegal GE rice in China:http://www.greenpeace.org/international/news/scandal-greenpeace-exposes-il)。中国政府はGM稲の商業栽培を許しておらず、今までに許してきたのは実験栽培だけであるにもかかわらず、中国国内でGM稲が栽培され、販売され、消費されたらしく、さらに輸出された可能性もある。中国が米を輸出する市場の多くは非GM米を要求しており、汚染は、特に日本、韓国、ロシア、欧州連合(EU)における中国米の販売にマイナスの影響を与える恐れがあるという。

 グリーンピースが明らかにする事実は次のようなものだ。

 グリーンピースがGM稲導入のリスクを調べるために雲南省で行ったRice for Life tourの際に、地方農民がその調査員に対して、政府の承認なしで数ヵ月前からGM稲が販売されているという秘密情報を漏らした。これを受けた調査で、GM系統を含む米種子・未精米・精米のサンプルが発見された。湖北省の種子会社、農業普及所、農民、精米業者、卸売業者、小売業者から25のサンプルを収集、国際試験所・GeneScanで検査した結果、19のサンプルに組み換えDNAが確認されたという。

 その中の二つのサンプルは、植物体内に殺虫毒素を生産するBt稲としての陽性反応を示した。Bt稲の大規模屋外実験は、何年もの間、湖北省省都・武漢市の華中農業大学の科学者により行われてきた。この地域の境界は、野生・栽培稲の自然の進化が最も活発で、世代から世代へ、最大多数の品種・変種を生み出している場所で、「生物多様性の中心」と呼ばれるところに危険なまでに近い。野生種稲のいかなる汚染も、自然の稲進化に取り返しのつかない変化をもたらし、来るべき世代に予見できない影響を与える恐れがあるという(野生稲が存在する場所・生物多様性センター・違法GM稲の発見場所およびGM稲種子販売・栽培・GM米販売場所は、上記サイトに掲載されている地図を参照されたい)。 

 別の情報によると(Doubt over Greenpeace report on GM rice,China Daily,4.14:http://www.chinadaily.com.cn/english/doc/2005-04/14/content_433935.htm)、グリーンピースは、昨年中国では127haから160haでGM稲が栽培され、950トンから1,200トンのGM米が生産されたと推定する。今年は1333haから1667haで栽培され、生産量は2万トンから2万5000トンになるという。

 グリーンピースは、公開されて利用できるBt米の環境・健康影響評価はどこにもないが、トウモロコシやワタなどの研究から、環境と人間の食品安全への深刻な影響があり得るとし、中国政府が未承認GM稲を畑と食品チェーンから回収し、汚染源を直ちに調査する緊急措置を取るように要求している。グリーンピース・インタナショナルの科学者、ジャネット・コッターは、Bt米はアレルギー反応を惹き起こす恐れがある、「マウスでアレルギータイプの反応を惹き起こすかもしれないことが示されてきた」と言う(Greenpeace claims GE rice is being grown illegally in China,AFP via Yahoo! News,4.13)。

 しかし、前記のチャイナ・デーリー紙によると、農業専門家と中国当局は、GM米がコントロールされていないというグリーピースの批難を否定、その検査方法に疑問を投げかけているという。中国農業バイテク学会会長のZhu Xinquanは、「私はグリーンピースの発見に同意できない。行われた検査が科学的であったかどうか疑う」と言う。農業部のGMO安全局の匿名の担当官は、「我々は具体的な検査報告を見ていない。その上、GM米種子の検査は中国の技術基準に従うべきだ」、「湖北省農業部にこの問題に関する現場検証を行うように求めた」と語る。

 当局者はGM稲の屋外実験が湖北その他で行われていることを認めるが、栽培面積は2haに制限されていると主張、Zhu氏は、GM食品の規制は数年まえから執行されており、GM米の商品化承認の前に一層の研究を行う、米は中国人の重要な食料だからGM米の安全性については用心深い態度が取られねばならない、GM米の販売は厳格に禁止されており、省レベルのGM安全局も定期的チェックを行っていると弁明している。

 とはいえ、グリーンピースの発見が中国のGMO管理に重大な疑問を投げかけ、中国米に対する国内及び国際的な不信を高める結果を招くことは不可避のようだ。中国で大きな影響力を持つチャイナ・デーリー紙も、農業専門家や農業部官吏はグリーンピースの主張を直ちに否定したが、「彼らの答えはGM米の安全性のめぐる国民の不安を和らげない」という意見を掲げる(Opinion:Safety fears over GM rice warrant caution,China Daily,4.15)。

 遠く離れた英国のガーディアン紙も、「中国農民にインターネットで販売された未許可のGM米が人間消費用に販売されてきた、それはアレルギー反応を惹き起こす恐れがあるが、発見されないままに英国に輸入された可能性がある」、「英国は中国から米を輸入する多くのEU諸国の一つだ。関係するGM米の量は生産総量の僅かな部分ー約1,200万トンにあるとはいえ、正確には誰も知らないし、あるいはどこへ行ったかも分からない。世界中どこでも、GM稲は合法的に栽培されていないから、輸入業者はどれほど英国の食料供給に入ったかチェックできない」と書く(Unlicensed GM rice may be in UK food chain,The Guardian,4.14)。

 シンジェンタの未承認GMトウモロコシBt10の販売のスキャンダルに続く中国GM米スキャンダルは、GM作物・食品への不信を決定的にする。ガーディアン紙によると、GM米種子はインターネットを通じて農民に販売されたというから、中国当局によるGM米コントロールが極めて難しいことを印象づける。それは、安全性にかかわるリスクに加え、中国にとっての経済的リスクにもつながる。中国当局によるGM米商業栽培の早期承認も難しくなったと言えよう。

 

 

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