遊走性の腸管内樹状細胞がPrPSc(異常プリオン)を腸から運び出す
http://vir.sgmjournals.org/cgi/content/full/83/1/267
Journal of
General Virology (2002), 83,
267–271
Fang-Ping Huang,1. Christine F. Farquhar, 2 Neil A. Mabbott,2 Moira E.
Bruce2 and G. Gordon MacPherson1
1 Sir William Dunn School of Pathology, South Parks Road,
Oxford OX1 3RE, UK
2 Institute for Animal Health, Neuropathogenesis Unit,
Ogston Building, West Mains Road, Edinburgh EH9 3JF, UK
要旨 訳 小森冬彦
ウシ海綿状脳症並びに変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)は、そしておそらく羊スクレイピーも、食べることによって感染する伝達性海綿状脳症(TSE)である。通常TSE病原体はリンパ組織内で自己複製してから中枢神経系へと広がっていく。TSEモデルマウスの場合、リンパ節胚中心に存在し正常プリオンタンパク質を発現している濾胞樹状細胞
(FDCs) が(異常プリオンの)複製に大切で、これを欠いたマウスでは神経への異常プリオンの侵入は起こらない。vCJDの患者とスクレイピーに自然感染したヒツジにおいても、TSE感染の生化学的マーカーである病態型プリオンタンパク質(PrPSc:異常プリオン)はリンパ組織中のFDCsに蓄積する。TSE病原体が腸管内腔と胚中心の間を移動する仕組みは知られていない。一方腸管免疫の研究において、遊走性の骨髄由来樹状細胞(DCs)は血中から腸壁を通して腸に入り、腸管内腔の抗原を拾い上げて腸間膜リンパ節に運ぶことが知られている.
我々は本報告でDCsがPrPScを補足することをin vitro(試験管内)試験によって示し、動物の腸管に投与されたPrPScをDCsが直接リンパ組織中に運ぶことをin
vivo(生体内)試験によって示す。これらの試験結果から、DCsは腸管内腔とリンパ組織のTSE病原体複製機構を結ぶ架け橋のひとつであると考えられる。