論文3 The New England Journal of Medicie
Volume
345:1161-1166 October 18, 2001, Number 16
Transient
Intestinal Carriage after Ingestion of Antibiotic-Resistant Enterococcus
faecium from Chicken and Pork
Thomas Lund Sørensen, M.D.,
Marianne Blom, M.Sc., Dominique L. Monnet, Ph.D., Niels Frimodt-Møller, M.D.,
D.M.Sc., Rikke Lykke Poulsen, Ph.D., and Frank Espersen, M.D., D.M.Sc.
抄訳 河田昌東
チキンと豚からの抗生物質耐性腸球菌摂取による腸内の保菌
要約 抗生物質耐性菌は人の腸内で死なないばかりか、増殖する
ボランテイアによる人体実験を報告したのはデンマークのコペンハーゲン国立血清研究所の研究者らである。彼らは健康な成人18名(男性11名、女性7名)のボランテイアを募集し、6名には食料品店で買った鶏肉から分離したバンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェシウム菌を、他の6名には屠殺場の豚から分離したバージニアマイシン耐性のフェシウム菌を、残りの6名には食料品店から買った鶏肉から分離した両方の抗生物質に非耐性のフェシウム菌をそれぞれ牛乳と一緒に飲ませた。投与細菌数は国の基準内の一千万個にした。この量は消費者が通常肉を食べる量における汚染程度と同じである。本人たちには、耐性菌か非耐性菌かは知らせなかった。実験計画はコペンハーゲン市とフレデリクスバーグ市の科学倫理委員会の承認を受け、便採取は摂取前2日から摂取後35日まで行い、便中の菌の存否を調べた。投与した菌と同一かどうかの確認にDNAも分析した。
細菌投与前は勿論フェシウム菌は検出されなかった。便中の耐性菌は投与後2日から3日にかけて最大濃度となった。バンコマイシン耐性菌は人によってばらつきはあったが6人すべてから検出された。濃度は
便1グラム当たり2万個から1億個まであった。即ち、耐性菌は、摂取後に胃や腸内で死滅しないばかりか、人によっては大幅に増殖したのである。摂取後6日以降には便1グラム当たり百万個以下になり、14日以降にはゼロとなった。バージニアマイシン耐性菌を投与されたグループは、投与後2日から5日にかけて最大となり、便1グラム当たり一万個となった。一人は14日目にもグラム当たり千個の耐性菌が検出されたが、35日目にはゼロとなった。非耐性菌を投与された対象グループからは期間中耐性菌は検出されなかった。DNA分析から、便中の耐性菌はいずれも投与された菌株と同じであることが確認された。
デンマークでは、1997年の調査によると市販の鶏肉の5%がバンコマイシン耐性菌で汚染されている。屠場レベルでは48%の鶏肉がバンコマイシン耐性、市販の鶏肉の59%がバージニアマイシン耐性菌で汚染されている。