食品照射で発生する化学物質がDNAを損傷: 最近の研究で明らかに

Public Citizen  3月号

訳 山田勝巳

 

 

食品照射で発生した化学物質が、DNAを損傷することを明らかにしたドイツの研究が初めて英語に訳され発表された。

食品にイオン化放射線を照射すると“希有放射線分解物(unique radiolytic  products)”と呼ばれる化学物質が発生し、重大な健康被害が起きうる。その一つ、2−DCBは照射飼料を食べたラットの大腸に”重大なDNA損傷"を起こした。皮肉なことにこの化学物質は照射を検出するための“マーカー”で、地球上の食品には一切含まれていない物質だ。

研究は'98年に照射推進の2団体の後援によって実施された。

実施したのは、ドイツのカールスルーヘ(Karlsruhe)連邦栄養研究センターで、世界的に最も権威のある研究所だ。この研究をPublic  Citizenが翻訳して、2月13日FDAとの会議の席で発表した。この会議は3月12−16日に開催されるコーデックス特別委員会に先立っての準備会議で、コーデックスでは現在の照射上限を取り払う提案を検討することになっている。

現在の上限は10KGreyで、これは、胸部レントゲン写真だと3億3千万回分で、人間を2000回以上殺すことができる量だ。これまで政府と業界は1950年代から照射の影響を否定する様々な研究を、主に古いとか十分ではないとか適切ではない等と言い訳して取り合わずに来た。動物実験では死亡したり、珍しい癌、致命的内出血、死産、生殖問題、染色体異常、肝障害、栄養失調、低体重などが報告されていた。

しかし、今回のドイツでの研究では、争う余地のない結果が出ており、最新の科学的プロトコルにそって実施されているので、これまでの言い訳はきかない。にも関わらず、WHOは、この研究の明瞭な結果や質の高い研究内容を歪めて取り入れず、上限を設けずに照射することを承認した。FDA担当官はこの研究を一度も見ていない。

FDAもWHOも今は言い訳が出来ない。両方とも照射食品が人間に実害があることを知っている。食品業界が要請しているプリカットサラダや加工肉などそのまま食べられる食品に照射を認め続けることは、確たる事実を否定することになる。 どうすればよいのか分かっているはずだが、そうするかどうかが問題だ。

 

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