フランケン食品の害-水平遺伝子伝達

社会の科学研究所

科学、社会、持続性

http://www.i-sis.org.uk

訳 山田勝巳

 

ISISは、水平遺伝子伝達が話し合われることになっている新規食品諮問委員会(ACNFP)の来る公開会議へ書面で質問を提出した。 本題に関しては、ISISの代表Dr.メイワン・ホーがしっかりと書き、政府にもしばしば説明してきおり、今回の会議で見解を発表したいと求めたが、要請は拒否された。 そこで、見解を文書にして提出し(以下に全文)、「会議の席で」ACNFPより「くどいくらい」返答を求めた。私達のGMに関する「全国討論」の意見参加として、この全文を出来る限り配布してください。

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水平遺伝子伝達を確認する最近の証拠

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ISIS 意見参加ACNFP/

食品基準局 公開会議 2002年11月13日

 Dr. メイワン・ホー記, 社会の科学研究所,

PO Box 32097, ロンドン NW1 0XR

<m.w.ho@i-sis.org.uk>

Tel: 202-7272-5636

 

水平遺伝子伝達は、最も危険な組み換え技術の一つだ。 私は、これについて監督機関にGM作物の組み換えDNAが直接ウィルス、バクテリア、植物や動物細胞に取り込まれるということを示す証拠が既に出ていた1996年以来注意を喚起してきた(1)。

 

「組み換えDNAは普通のDNAと変わりない」と繰り返されてきた文句はうそだ。 組み換えDNAは、多くの面で水平遺伝子伝達に最適なようにしてある。 種の壁を越えてゲノムに飛び込むように設計されており、色々な種とそれらに寄生する種(プラスミド、トランスポゾン、ウィルス)のDNAと相同性があるため、全てと再結合がしやすくなっている(2)。 組み換え構造には存在しなかった組み合わせがあり、食品連鎖にはなかった遺伝子産物が多くなることにもなる(3)。

 

水平遺伝子伝達の危険には:病原細菌に抗生物質耐性遺伝子が伝播する。 

病気に関係する遺伝子が拡散し、組み換えを起こして病気を発生させる新型ウィルスやバクテリアを作る。 

組み換えDNAが人の細胞に入り込み、癌を引き起こす。 癌のリスクは、遺伝子治療(人の細胞の遺伝子組み換え)で最初の犠牲者が出た最近のレポートで強調された。 骨髄細胞が体外で遺伝子組換えされ再移植される方法は、これまでどちらも遺伝子治療の最大の危険性と認識されていた感染ウィルスを作ったり、癌を発生することを回避できると考えられていた。

 

遺伝子組み換えで用いられる組み換え構造は、人の細胞でも他の動物や植物でも基本的には同じ。 往々にしてウィルスからの侵略的プロモーターが組み換え遺伝子の発現を強化するために、動物や人の細胞には哺乳類の細胞に感染するサイトメガロ・ウィルスから、植物には、かんらん科の植物に感染するカリフラワーモザイクウィルス(CaMV)からの35Sプロモーターが用いられる。

 

生憎CaMVウィルスは、植物独自のものだが、35Sプロモーターは生物界全体に活性があり、人の細胞も例外でないことは、1989年の科学文献で見たとおりである。現在商業栽培されている事実上全てのGM作物にこのプロモーターを挿入している。 植物遺伝学はこの重大な情報を知らないようだ(5)。

 

1999年には、CaMV35Sプロモーターのもう一つの問題が発覚した;他のDNAと離脱結合をしやすい傾向が強い組み換えホットスポットがある(6)。 それ以来、わたしたちは、CaMV35Sプロモーターが水平遺伝子伝達や組み換えで特異的に拡散しやすいということを監督官庁に警告し続けてきた(7−9)。 最近論争になったメキシコ野生種の汚染は(10)、CaMV35Sプロモーターを使った組み換えDNAが野生種の「ゲノム全体に断片化し無秩序に分散している」事を示すという見解に基づいており、この見解は我々の予測と一致している(11)。

 

同様に、GM大豆粉末の組み換えDNAが入ったハンバーガーとミルクシェークを食べた人間ボランテイアの食事一食で結腸瘻バッグに出た腸内容物のバクテリアに移行しているのが発見されたという、食品基準局FSA(12)が今年発表した結果も驚きではなかった。

 

私にとって受け入れ難かったのは、基準局がこの発見を退け危険性を軽視したことである。 「遺伝子組み換え(GM)食品の遺伝子がそれを食べた人間の腸内細菌に移るということは極めて起こりにくいこと」であり、「今回の発見も数名の政府専門家によって検討されたが、人間に危険性はない」というコメントは、重大な誤解を招くものだ。

 

まず、実験が、陽性結果が出ないように厳重に設計されている。 例えば、組み換えDNAの構造解析では、全体のごく一部しか見ていない。 従って、特に組み換え構造が断片化し再組み換えを起こしやすいことが良く知られているのだから発見できたとしても、実際の移行分のごく一部しか検出できないのだ。

 

第二に、調査の範囲が意図的に制限されていた。 組み換えDNAを血液中や血液細胞で調べることも全くされていない。既に1990年代初期に組み換えDNAが腸や胎盤を通過して胎児や新生児の細胞や血液細胞、肝臓、脾臓細胞の構成要素になっているのを示しているのに、である(13)。

 

FSA報告(12)にある組み換え遺伝子は健康なボランティアの便からは発見できなかったという所見は、安心からは程遠く、組み換えDNAが既に腸細胞に取り込まれたか、それより先の血液に入り込んだ可能性の方が懸念される。

 

第三に、検出法に限界を設けたことについては全く検討されておらず、水平遺伝子伝達の頻度や範囲が極端に過小評価されてしまい、当然ながら本当のリスク評価には完全に失敗している。 逆に、「人間には危険がない」という嘘の安心感を与えている。

 

農漁食料省(MAFF)が委託した食品安全局の前身である別の水平遺伝子伝達のプロジェクトでは、組み換え作物を作るための中心となる遺伝子組み換えベクターとして開発したクラウンゴール病を引き起こす土壌菌アグロバクテリウム・ツメファシエンスに関してのものがある。 外来遺伝子は、植物ゲノムに組み込まれるTi(腫瘍誘発性Tumer inducing)と呼ぶプラスミドの一部であるT-DNAに組み込まれるのが普通である。

 

アグロバクテリウムが植物細胞にT−DNAを注入する方法が接合に極めて似ていることがわかった。接合とはつまり、細菌細胞間の交配で、関連する信号や遺伝子は全て接合に必要なものと互換性がある(14)。T−DNAベクター方式で作られた組み換え植物は、アグロバクテリウムを介して多くの病気を起こす他の細菌とごく普通の接合メカニズムでいつでも遺伝子の水平伝達ルートを持つことになる(15)。

 

1997年にMAFFへ提出された報告書では、アグロバクテリウム・ツメファシエンスが本当に遺伝子の運び屋になっている可能性のあることを示唆している(16,17)。 この研究者達は、このベクター方式で使ったアグロバクテリウムを組み換え後に除去するのが極めて困難であることを発見している。

 

遺伝子転移が根系や発芽種子で頻繁に起こることは分かっている(18)。 この状況でアグロバクテリウムが増殖して他の細菌や次の作物に組み換えDNAを伝達することは可能である。 アグロバクテリウムは、数種の人の細胞にも遺伝子を伝達することが分かっている。 それも、植物細胞を改造するやり方に似た方法でである。

 

我々は、これに関するISISレポートを明確な質問と共に11月13日の開会会議用に検討用としてACNFPに提出した(20)。 上述の水平遺伝子伝達の危険性は全て現実的なもので、GM作物のもたらす恩恵などはるかに及ばない。 GM作物やGM食品を商業的に認める理由など全く見当たらない。 

 

水平遺伝子伝達のリスクを調べるために以下の実験と検査をすべきである。

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1. アーパッド・プシュタイ博士が行ったような給餌試験を実施すべきである。 これに使う大豆・メイズ粉末は、全ての特性を把握して、大便、血液、血液細胞、細胞のゲノムへの組み換えDNA移行調査も入れた死後の組織検査で組み換えDNAを完全に、適正にモニターすること。 追加対象として、同じGM飼料検体からの非組み換えDNAもモニターすること。

 

2. 人間のボランティアでの摂取試験を、特性を確定した組み換え大豆/メイズ粉末で行い、完全で適正な組み換えDNAのモニターを大便、血液、血液細胞で行う。 追加対象として、同じGM飼料検体からの非組み換えDNAもモニターすること。

 

3. 組み換え作物の継代安定性を総合的に調査すること、特にCaMV35Sプロモーターのものを適切な定量分子技術を使って行うこと。

 

4. 挿入遺伝子の均一性と遺伝的安定性を確認するために、組み換え系統の全分子特性を明らかにすること。

 

5.アグロバクテリウムT-DNAベクター方式で作り出された全ての組み換え植物は、バクテリアとベクターの残留性について検査すること。 栽培した土壌も土壌菌への遺伝子逃避がないかモニターすること。 水平遺伝子伝達の可能性について、次の作物へ発芽種子や根系を通して起こっていないか慎重にモニターすること。

 

参考文献と補追

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1. 1996年に遡る農漁食料省と保険安全行政機関と私との文書.

 

2.        ホー MW. の水平遺伝子伝達、遺伝子工学の隠れた害、TWNバイオテクノロジー・シリーズ、第三世界ネットワーク参照。

2001 ( ISIS オンライン・ストアで入手可http://www.i-sis.org.uk/onlinestore.php#books);

 Ho MW. の水平遺伝子伝達と遺伝子工学, SCOPES AAAS, 2000ウェブサイトでも見られる .

 

3.        Ho MW. マイケルミーチャー環境大臣閣下への組み換え農業とそれに関する事項の特別な安全懸念についてのブリーフィング(http://www.i-sis.org.uk/meacher99.php). April 1999 ; 

Seminario Internacional sobtre Direcito da Biodiversidade, Revista cej: Centro de estudos Judiciarios do Conselho da Justica Federal, Brasil, pp.120-6, 1999で発表。

 

4.        サイエンス、今週のニュース, 10月4日、2002;  メイワン・ホーの"予見された遺伝子治療の危険が現実に" も参照(http://www.i-sis.org.uk/PHGT.php) ,ISIS レポート、10月、2002

 

5.        "UKの劣悪科学で承認されたGMメイズ"  メイワン・ホー著, Science in Society 2002, 15 (http://www.i-sis.org.uk/isisnews/sis15.php), 10-25.

 

6. Kohli A.,Griffiths S, Palacios N, Twyman R, Vain P, Laurie D and Christou P. 組み換えライスの組み換えプラスミド再配列分子構造解明でCaMV35Sプロモーターにホットスポットのあることが明らかになり、マイクロホモロジーによる組み換えが支配的であることを確認。

Plant.J. 1999, 17,591-601.

 

7.Ho MW, Ryan A and Cummins J. カリフラワーモザイクウィルスは災害への処方箋? 

健康と病理の細菌生態学1999 11, 194-7.

 

8. Ho MW, Ryan A and Cummins J.カリフラワーモザイクウィルスを使った組み換え食物の危険性.

健康と病理の細菌生態学2000, 12, 6-11.

 

9. Ho MW, Ryan A and Cummins J. CaMV35S プロモーターホットスポットの確認と動物における活性.

健康と病理の細菌生態学(Microbial Ecology in Health and Disease) 2000, 12, 189.

 

10. Quist D and Chapela IH. メキシコ、オアハカ州で伝統的土着メイズへの組み換えDNAの侵入.

Nature 2001, 414, 541-3, 2001.

 

11. "あきれた組み換え汚染否定" by Mae-Wan Ho, Science in Society 2002, 15, 13-14 (http://www.i-sis.org.uk/isisnews/sis15.php).

 

12. Netherwood T, Martin-Orue SM, O'Donnell AG, Gockling S, Gilbert HJ and Mathers JC.

 遺伝子組み換え大豆の挿入遺伝子が小腸を生き延びるものの大腸では完全に劣化 食品安全局プロジェクト G010008に関する技術報告 "人間の食料にGMOを使うことによる危険性の評価"

-         ニューカッスル大学

 

13. Doerfler, W. and Schubbert, R. (1998). 環境からの外来DNAの摂取: 取り込み口としての消化器と胎盤Wien Klin Wochenschr. 110, 40-44.p. 40.

 

14. Ferguson GC and Heinemann JA. 異種間接合の最近の歴史 水平遺伝子伝達第2版

(ed. M Syvanen & CI Kado),pp 3-17, Academic Press, San Diego, 2002.

 

15. Ho MW. 水平遺伝子伝達で言語道断なこと? Heredity (in press); "ナンセンスのために良識を避ける" by Mae-Wan Ho, Science in Society 2002, 16, 29-30.

 

16. McNicole et al (1997) 遺伝子逃避の運び屋アグロバクテリウムの可能性. MAFF. R&D and Surveillance Report: 395 (http://www.i-sis.org.uk/isisnews/sis16.php).

 

17. Barrett et al (1997). アグロバクテリウムを使った植物遺伝子操作のリスク評価と組換え植物分析の関わり合い. 植物細胞組織と組織培養(Plant Cell Tissue and Organ Culture )47: 135-144.

 

18. Sengelov G, Kristensen KJ, Sorensen AH, Kroer N, and Sorensen SJ。大麦苗の精子圏(spermosphere)とシュードモナス種の根圏における組換え遺伝子カセットの水平伝達によるゲノム上の位置の影響. Current Microbiology 2001, 42, 160-7.

 

19. Kunik T, Tzfira T, Kapulnik Y, Gafni Y, Dingwall C, and Citovsky V.アグロバクテリウムによるHeLa細胞の遺伝子変化 PNAS USA, 2001, 98,1871-87; also, "人細胞に遺伝子を注入する一般的植物ベクター", ISIS News 2002, 11/12, p. 10 http://www.i-sis.org.uk/isisnews/i-sisnews11.php

 

20. "見つからない方に賭ける" and "ナンセンスのために良識を避けるAverting sense for nonsense" by Mae-Wan Ho. Science in Society 2002, 16, 28-30 (http://www.i-sis.org.uk/isisnews/sis16.php).

 

FSAに対し2002年7月22日に提出した質問の内容は以下の通り:

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1. 組み換え大豆サンプルのGMの中身、構造、組み換え挿入物、崩壊の状況などの状態が極めてずさんだったのはなぜか。

2. 何故、たったの一食しか与えられずモニターしたのか。

3. 組み換えDNAの存在を著しく過小評価すると分かっていたのに、何故極小さな断片しかPCR増幅対象にしなかったのか。

4. 陰性サンプルには組み換えDNAが無いというというのは、不当な推定であることが分かっているのに研究者がそうしたのはなぜか。

5. 当時既にマウスの研究で組み換えDNAが血液に入り、更に体細胞に入ることが分かっていたのに、何故研究者は血液中や血液細胞の組換えDNAを調べなかったのか。

6. 何故、こんな低劣な研究をFSAが受け入れたのか、もっと悪いことには、組み換えDNAの水平伝達の規模は、データが示すよりも格段に大きいと予測される結果が出ているのに、何故GM食品は大丈夫だと誤った解釈をしたのか。

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