2004年5月8日
全農営農技術センター(平塚市)での遺伝子組換えイネの隔離圃場試験についての説明会報告
スギ花粉症GMイネに反対する会
5月8日、午後1時から標記の説明会が平塚市にある全農の営農・技術センターで開かれた。説明会には約120人が集まり、全農および生物資源研究所側からの説明に対し、熱心な質疑が行われた。午後3時からは、併設されている隔離圃場を見学した。
スギ花粉症に予防効果があるとする人工ペプチドを産生する遺伝子組換えイネの栽培実験に対しては、集まった市民、科学者、農家、消費者などから、多くの疑問と質問が相次いだ。
以下は、説明会のテープ記録を基にした会議録の概略である。敬称は略させていただいた。(発言は一部要旨/文責記録者)
開催側の出席者
全国農業協同組合連合会 営農総合対策部センター長:川名
生産システム研究室主任調査役:遠藤
営農総合対策部技術主幹:金田
生産システム研究室長:羽生
農業生物資源研究所新生物資源創出研究グループ遺伝子操作研究チーム長:高岩
営農総合対策部長:高田
1 開会
2 遺伝子組換えによる健康機能性稲の開発への取組みについて
3 スギ花粉症緩和効果ペプチド含有イネの隔離ほ場試験について
4 質疑
5 ほ場見学
6 閉会
1 センター長による開会のあいさつに引き続き、営農総合対策部長高田氏から説明がなされた。
2 遺伝子組換えによる健康機能性稲の開発への取組みについて
まず、全農・営農・技術センターのしごとについて、説明があった。
JAグループの農業技術の中心的な施設であり、関係の専門技術の研修、講習会を行っている。また、商品の品質の検査をやっている。今、残留農薬の検査、残留農薬検査技術の開発を行っている。それから、もう一つ、農業関係の新しい農業技術の開発研究を行っている。ただ、これについては、全農だけで行えるわけではないので、国の独立行政法人、財団、研究所などと共同で取り組んでいある。たとえば、コスト低減の新しい技術として、もみがらマットをつくる、スプレー菊の品種の開発、最近では、米の品種判別(DNA判別)などを行っている。その一つに、この健康機能性稲も含まれる。
資料1に関して
なぜ、全農が、今この開発に取り組むのか。
12年度から取り組んでいる。新事業創出研究開発事業に参画し、独立行政法人農業生物資源研究所などと共同して健康機能性稲(すぎ花粉症緩和米など)の開発に取り組んできた。
これまで温室でやってきたが、今年度は、隔離ほ場でやりたい。2月に承認申請をしている。4月15日、パブリック・コメントを5月12日まで求めている。
遺伝子組み換えの国内の研究開発については、その安全性について、やはりまだ、明らかにされていない。そういう懸念から、反対している声があることは承知している。
そういう情勢のなか、全農は、本来的には、遺伝子組み換えのない、安全・安心な国内の農産物を扱うこと、これは本来的な役割と認識している。この将来に大きな可能性をもった遺伝子組み換えを、適正に評価なり、判断をする必要がある、もう一つは、危惧される安全性について、我々自身もみきわめる必要がある、特に、全農は、この技術のなかでも、健康機能性について、大きな期待なり、関心をもっている。そういうことから、スギ花粉症米についても、この事業に参画をしている。全農の役割は、環境に対する安全性試験、である。
全農は、消費者の危惧する食品としての安全性、環境に対する安全性をみきわめることを第一義としてとりくんでいきたい。同時に、こういう開発に取り組むことによって、遺伝子組み換え技術を適正に評価なり、判断できるように、技術、情報を蓄積していきたい。
3 次に、隔離圃場試験について、羽生氏から説明。
「資料2 スギ花粉症緩和効果ペプチド含有イネの隔離圃場試験について」参照。
すでに4月18日に、生物資源研究所で説明した内容と前半は、同じであるが、今日はじめてきている方向けに繰り返す。
開発の目的 イネ花粉症の患者は、1700万人 症状緩和、予備軍の発祥予防のため。くしゃみ、鼻水、目のかゆみを軽減させる。医療費がかさんでいる。2800億円の削減をしたい。
注射による治療法があるが、お米を食べることで、症状を緩和したり、予防する。
スギ花粉症発症のしくみ 資料P2 (一部略)
治療法 次世代型の抗原特異的治療法 これは、免疫反応抑制ペプチドの投与
アナフィラキシーショックとは、例 ハチに刺された、2度目に起きるショックが強く出る。アレルゲンの注射では、このショックがでることがある。
スギ花粉症 効果のある部分、エピトープが7つみつかっている。これらを7つ連結するペプチドとして、イネに組み込む(7Crpと呼ぶ)。
タンパク質は、分解されるとされているが、全部は分解されない。
マウスの実験 組換え米を4週間、与える。そのあと、3週間。そして、その後にアレルゲンを鼻につけてやる。すると、T細胞が、非組換え米に比べると、半分くらいになっているという結果が出た。
抗体が3分の1程度に減っている。資料P4 (一部略)
したがって、アレルギーを起こすことが低減する。
次に、隔離圃場試験について (一部略)
生物多様性の影響評価と、食品安全性評価試験のための材料確保(ラットの用いた慢性毒性試験、癌原性試験、生殖試験、抗原性試験などを行う)ため。
土壌微生物の検査など。大根をうえ、後作の試験も。
ひこばえの越冬試験を行う。
モチ品種との交雑率の調査を行う。30ポット
ウルチが花粉にかかれば、ウルチが混じる。キセニア現象。
出れば、遺伝子検出を行う。
指針に基づき、距離による交雑防止をする。
隔離圃場 20メーター以内にはイネは栽培しない。
不織布で覆う。
食品安全性の確認済みではないので、モニタリングが必要。
4 質疑
会場 牧下(提携米ネットワーク)@全農として、消費者が現在多く反対していることをどのように考えているか。A風評被害をどういうように考えているか。B昨年、厚生労働省は、花粉症イネについては、異種タンパク質が入る可能性があるので、承認しないだろうという報道がなされている。これについて、どう考えているか。C全農は、いのちを育む食べ物を生産し流通する立場として、その思想哲学と今回の実験がそぐうものなのかどうか。
全農 資料1にもあるように、生産者の皆さん、消費者の皆さんがひじょうに心配をしていることについては承知をしている。それでもなおかつ、開発に参画しているということは、健康機能性を付加できる、そういう農産物が開発できる、そういう期待ないし、ある意味では予測に、我々として大きな関心をもっている。
JAグループ、生産者段階として、哲学に沿うかどうか。我々の立場は、安全安心である。そういうものをみなさんにお届けする、それが第一と考えておりますし、生産者の皆さんについては、圃場で栽培する際に、一般の作物に交雑して迷惑をかけるものであってはならない。栽培についても、その点に万全の注意を払って取り組んでいきたい。
センターの圃場については、周り1キロメートルに水田はない。まさに隔離と確信している。生産者の皆さんにも迷惑をかけない。進展度合いによって、安全性をみきわめることに重点をおいているので、それが確認されない、ということであれば、当然、その先の開発はないという決意で取り組んでいる。
全農 風評被害は先ほど部長が述べた。
厚生省の異種タンパクについては、花粉のタンパクは、米が持っていない異種タンパクである。しかも、花粉のアレルギーの基になるエピトープをつなげたものである。それはアレルギーになるから、やばいよ、ということですね。
これについては、この試験をしてはいけない、というのではなくて、こういうものが出てきたら、どこかでジャッジ(判断)しなくてはいけないということです。私どもが今やろうとしているのは、そこのところを調査することです。これが、アレルギーになるのかならないのか、このたんぱくは、どのような性質をもったものか、今から16年度から試験をする。最終的には、厚生労働省がジャッジされるのであろうということです。
会場 安田節子(日本有機農業研究会) これまでの厚生労働省は、特異な、医薬品の成分ができるようになった新しい遺伝子組み換えであることから、薬事法のなかで判断する「医薬品成分のある米」としての判断をすべきだという見解であると思います。これはアメリカにおいても同じようなことが言われている。将来、日本の米づくりの展望を開くということで、取り組んでいらっしゃるようですが、実用化されたとすると、一般の水田で栽培するようになる。はたして、一般圃場で栽培したときに交雑のないように、完璧にできるのかどうか。
日本の米の優位性は、安全・安心といわれましたが、遺伝子組み換えをされていないところにあります。しかし、輸入がふえているなかで、アメリカの米として遺伝子組み換えのものも入ってくるかもしれない。日本の米を食べたいというその動機は、安心だというところにあるのではないか。それを、あえて、全農が国際競争力を落とすような、組換えをやるということはどうなっているのか。
前に、ラクトフェリンをやるといっていたが、あれはどうなったのか。失敗したのか。納得できない。
(拍手)
全農 厚生労働省では、今はまだ、担当レベルの話だろう。なぜ、(全農が研究開発を)やっているか。薬品としてやる場合、健康機能性、日常の病気、生活習慣病を、通常の食事で抑えられないか、というのが目標。実際の医療でやろうとすると、これを大腸菌で生成させる。その場合の、薬品の怖さがある。たとえば、大腸菌にウィルスが感染した場合に、別の蛋白が出てくる可能性がある。大腸菌の場合、容易に変異するわけですが、変異しないイネに入れたほうが、常態のなかで食べられると思っている。
もともとは、スギ花粉の蛋白のなかの一部である。蛋白のなかの一部をとりあげたもの。天然にはない。人工物といえば、人工物。
(アレルゲンを注射する)治療法で行われている減感作療法には危険性がある。そこで、これをつかって、より安全性の高いものをつくろうということです。これをつかうことで、IgEと結合性がない。アレルゲンそのものを入れる方法とは違う、新しい機能性をもったものをつくって、それを入れる。
会場 安田 それは、ふつうの人が食べてだいじょうぶなのか?
農業生物資源研究所 それは、そのために実験をやる。食品安全性を、それについて安全であるかどうかを調べていこうということです。そして、それに問題がなければ、・・・我々は、最終的には一般の圃場でつくろうという気はあまりありません、はっきり言って。それは、そんなに消費者に問題があれば、工場のようなガラス室のようなところで、つくるという最終的にはそのような方法もある。
それほど、消費者に、反対が多ければ、我々はガラス室でつくることも。
(会場 がやがや)
全農 先ほど、日本の米のすばらしさとおっしゃった。我々もそういう自負をもっております。今回の隔離圃場においては大丈夫であるが、今後、一般圃場に出す場合にはやるのか、ということですが、とりあえず、一般圃場でやる予定はございません。
先ほど言いましたように、開発の過程で、安全性が確認されて、かつ、そういうものが、証明された、と。そういう段階で、実用化のための、一般の圃場での栽培にとりかかるという過程をふむわけです。今の開発の段階では、今のセンターの隔離圃場でやらせていただく。もう一つ、申し上げますが、一般圃場にもしも出すという段階においても、一般の生産者の皆さんの、同種の作物に意図しない交雑が起こるということについては、生産者の皆さんに迷惑をかけることですから、それについては、万全な措置をとることをして、栽培をしていくことになろうかと思うし、そういうふうにしたい。
ただ、そういう場合でも、安全性が確認されて、その段階のことだと考えている。
会場 野中(さがみ生活クラブ生協) 「安全性を確認したい」、「だからやるんだ」と、全農さんはいうが、これまでの実験経過のなかで、もっと確認しうる内容があったはずである。何匹つかったかとか、インターネットででも十分に公開されているのかどうか。その実験のなかで、ここがどう、ということで、それでは隔離圃場で、ということであれば、説明をききうるのだが、わからないことだらけで、なぜ、いま、隔離圃場が必要であるのか、よくわからない。 (拍手)
農業生物資源研究所 マウスの実験は、2カ所で研究をしている。一つは慈恵医大、もう一つは、東京大学医科学研究所。東京大学では、マウスのエピトープを使って、マウス10匹程度でやっている。慈恵医大では、マウス5匹を使ってやっている。それで、IgE抗体の産生が下がるという効果が結果として出ている。なぜ、こういう隔離圃場で実験をやるかというと、慢性毒性とか、ラットで、・・・ラットになりますと、食べる量が多くなる。ある程度の量を確保しなければならない。そういうところで、ラットを使って、慢性毒性や癌原性を調べるというと、食品安全性を調べる上で、多くの量を必要とするということで、ガラス室でつくるというのは、実験材料の確保ができない、そういうことで、材料を確保するために、隔離圃場でやるということだ。
会場 河田昌東(遺伝子組み換え情報室) 先ほど以来、健康機能性食品というように言われているが、これは認識が違うのではないか。その理由は、スギ花粉のエピトープだけを切り取って7つつなげた。スギ花粉のアレルゲンそのものではない。そういう意味で、天然物とは違う、人間が合成したタンパク質である。たとえば、インシュリンのようなものですね。
これまでの遺伝子組み換えというのは、特定の機能をもたせるために、別の生物から遺伝子を切り取ってきて別の生物にその性質を付与してきた。ところが今回の米では、スギ花粉由来ではあるが、そのものではなく、生成されるペプチドは自然界にはない人工的なものである。これは、遺伝子組換えにとっては、新しい分野を開くものであるし、安全性評価については、食べ物のなかにワクチンがあるというより、医薬品をつくる米を開発という逆の認識が必要である。
食べれば、花粉症が緩和されるというと、つい、食べ物ということにいくが、今回の実験の目的も、マウスやラットに食べさせる大量の米が必要というものになっている。ペプチドという非天然物、医薬品としての評価を行うべきである。
食品安全委員会で意見を述べたが、その時も、食品安全委員会はそのような安全性評価の方法がない段階であるという。安全性議論は、その方向性すら決まっていない。
そういう段階で、これをどんどん、開発だけを進めていくのに対し、消費者の方が心配されるのは当然だと思う。
これは、医薬品をつくるんだ、ということをきっちり認識していただきたい。
実験用のえさの量を確保したいという点ですが、やる気になれば、1反歩くらいのガラス室は、つくれると思います。1反歩あれば、何俵もとれるわけですから。隔離圃場といっても、人間以外は、出入り自由ですから、自然界に対して影響は完全にはできない。医薬品をつくるという立場から、やっていくべきである。
(拍手)
農業生物資源研究所 メカニズムを解明しながら、どこまで可能かを調べていきたい。
会場 河田 マウスの実験は、目的とは違うのではないか。治療という観点からすれば、もともとアレルギーになっている動物に、米を食べさせて実験の結果、どう変わったかをみるべき。先ほどのスライドは、健康なマウスに食べさせて、あとからアレルゲンを付けたものである。順番が逆ではないか。
農業生物資源研究所 自然界に花粉症にかかったマウスはいない。実際に花粉症にかかっているのは、サル、犬がいる。エピトープが、使っているのは、ヒトのエピトープである。先ほどの東大では、マウス用のエピトープを使っている。われわれは、自然界のサルをつかって、どういう結果がでるか、また、安全性に問題がないかどうか、をやっていきたい。調べていきたいと。
先ほどの実験は、予防的な実験である。慈恵医大ではサルもやっている。
会場 ガラス温室について、まだ回答がない。
全農 現場にいってご覧になるとわかる。交雑しない、ということを実験で確認したい。ガラス温室のなかではイネの生育がわるい。
会場 隔離圃場の広さは?
全農 2アールです。
会場 それくらいなら、できるはず。
農業生物資源研究所 加工をどうするのかについても調べる。熱処理でどのようになるか。この米は、生のかたちではなく、パックした形で、消費者に混じらないように出していきたい。
会場 河田 トータルで実験には、何キロの米が必要なのか。実験計画がきちんとしていれば、わかるはずである。
農業生物資源研究所 1,2年後には、研究開発者が食べてみようと思っている。
会場 倉形(市民セクター政策機構) 遺伝子組み換えで、米のなかに何がおきているのかを知りたい。意図しないことが起きているのか、いないのか。それとも、そのことはわかっていないのか。
コーデックスの基準で決められたことは、確かめてあるのか。コピー数、断片数、オープンリーディングの情報など。そうした情報をいただきたい。
飼料と食品が区分されないことがわかった。アメリカでも、双方の安全性審査をしたうえでなければ、環境の放出してはならないことになった。実験段階のレベルでは、今いった食品、肥料としての確認がされていない。隔離とはいえ、環境放出をする。スターリンク事件の教訓が生かされていない。
隔離圃場での栽培実験は、食品安全委員会をクリアしてからにしてもらいたい。
不織布をかけるというが、通常の条件のときではなく、強風、台風のときには、花粉が飛ばないのかどうか。
全農 情報提供は、確実にする。食品の安全性をクリアする前は、ガラス温室。これまで、ガラス温室でやってきたが、次には隔離圃場でやれというルールになっている。
もう一度、なかでつくれということであればだが、今回は、隔離圃場で申請を出している。隔離圃場でやる試験項目がある、そのために隔離圃場でやる。
情報は、ホームページでご覧になれる。
会場 倉形 目的とした以外のことが入って たんぱくの変異が起きているのか、起きていないのか、わかっていないのか。違っていたものが起きている可能性がある。起きていることを知りたい。
全農 私どものほうで、タンパクはつくられているという以外のことは起こっていない。もとの作物と同じことを確認している。
農業生物資源研究所 調べられる項目について、わかっている。どこまで調べるかによって変わる。
会場 倉形 組み込みによって、何が起こるか、その全容は把握していないということですね。
農業生物資源研究所 全容は、神ではないのでわかるはずがない。
(会場、がやがや)
会場 河田 資料2P3の4「7Crpエピトープペプチドの構造とイネ種子での発現」について 右下の図CBB染色をみると、コントロールの米から抽出されるタンパク質と組換え米からのものを比べたもの。今の質問にあったのは、右側の下のほうに、一本あるのは、組換え体ですから、新しい7Crpができている。問題は、そのずっと上のほうのグリテリンが多くなっている。これは、7Crpを導入したことで、グリテリンの発現が強くなったと考えてよいでしょう。つまり、多くなった。ということは、分解が弱くなった。
結果として、このお米には、グリテリンが多くたまっていると言えますね。それから、その上に二つ出ていますが、これは、もともとなかったものか、それとも濃くなったものか。
そうすると、シャペロニンも多くなったと、考えてよいでしょう。
下のほうの15kのところをみると、もともとあったバンドが薄くなっている。だから、先ほどの質問にお答えできたと思うんですね。7Crpを導入したことで、遺伝子に影響が出ている。それをどの程度、きちんと評価しているのかということが問題だと思う。
グルテリンがたまっていることは、それについても・・・腎臓病ですか、それにはよくないとされている。すると、腎臓病でしかも花粉症の人は、食べられない米といえる。それなら、シャペロニンが多くなればどうなるのか。そのようないろいろなことについて、その効果や評価はされているのか。調べているのか。基礎研究とはそのようなことをすることではないのか。そうしたことも調べず、量がほしいと言われても。
農業生物資源研究所 ぜんぶ、調べなければならないんですか。
会場 私たちが食べるんですよ。子どもも食べるんです。
生物資源研究所 私たちは、すべての人に強制的にだれにでも食べさせるわけではない。選んでもらう。必要な人に選択してもらう。
会場 一般圃場で他のところに混じったら、どうするのか。
全農 実用化については、3つ考えている。インフラの問題であろう。
1つは、全農は、生産者団体ですから、すくなくとも近所の風評被害はさけなければならない。花粉の飛散により、別の商品作物の販売に影響を与えるようなことがあってはならない。そのためには、完全に隔離されたなかで生産ができるようにする。
2 分析をして、どこにどのようなタンパクがでて、それ以外は変わっていないこと、変わっているとしたら、どういうところが変わっているのかを調べる。その安全性をはっきりとさせることが第2の問題です。
それから、3つ目、消費者の方が気にしていることです。何かわからないまま、食べたくないのに、食べちゃったということを避ける。それについては、ほしい人にわたす。ほしくない人にはわたさないという流通のインフラが必要だろう。したがって、生産場所からトレース(跡付けすることの)できる流通経路、表示、加工のしかた、できれば、それがひとめでわかるインフラができないと、やはり、日本の遺伝子組換えはむつかしいだろう。
外国から来た場合、我々はわかっていない。逆に、そういうものを要求していかなければならない。
会場 村上喜久子(中部よつ葉会) 私はじつは、花粉症です。これはスギ花粉症にしか効かないのですよね。私は、スギ花粉症から始まったが、檜花粉にも強い反応をし、ぜんそく様の発作を起こす。それだけでなく、いろんなことに反応する。 アレルギーの人はいろんなことに過敏に反応する。アレルギーは複雑なんですね。未解明である。この遺伝子組換え米を食べたいかというと、他のタンパクが入っているかもしれないとすると、私たちはアレルギーで感作の高い体質になっているので、これは無責任な医薬品ではないかと思う。アレルギー自体がよくわかっていない。遺伝子組換えもよくわかっていない。研究そのものが、だいたい問題ではないかと思います。 (拍手)
農業生物資源研究所 エピトープを7つ入れておくことで、いろんな人に効くようにしている。減感作療法では、7〜8割の人は直っている。
会場 村上 原理はわからない。意味がない。
農業生物資源研究所 必ずしも原理はわからなくても、注射をして直っている。
注射をして直そうと思っていても、サラリーマンなどは週2回もいけない。それで苦しんでいる。だから、食べて直せるようなものをつくりたい。自分でも治したいと思う。そんなの意味ないというのなら、そういう療法ができたら、ぼくだけ直して、(あなたがたには)使えないよ、と言いたい。
(会場 がやがや)
会場 森田 私も花粉症で20年間苦しんでいる。この部屋に入ったときから、鼻水が止まらない。原因はわからない。何をもって、隔離圃場で実験するほど、安全が確認されたのか。私は、マウスでもなく、ラットでもなく、ヒトである。ヒトのアレルギーにほんとにきくのか。開発された米でほかの症状がでないかということを、どなたが保証してくれるのか。
一般の圃場で栽培するとなると、何処へどう行くか。いろいろなところに広がってしまった場合にだれが回収できるのか。日本の米を食べていれば安心といえるような、そういう全農であってほしい。
(拍手)
会場 久保田裕子(神奈川県有機農業研究会) 研究開発なのか、実用化研究なのか。基礎研究だということも強調しておられる。そうであるなら、研究室にこもった研究にしていただきたい。だけれども、実用化もめざしているようだ。全農の姿勢、機能性ではなく、医薬品として扱うべき。生産、流通を区別して行うというが、外見は米なので、混同する。
表示では、偽装表示があったように区分けできない。意図せざる混入もありうる。他方、アレルギーは未解明、遺伝子組換え技術もまた、50年は研究室に閉じこめておくべきという議論もある。それでもあえて、実用化をめざすのかどうか。
全農には期待がある。安全な米をつくってほしいということだが、それを裏切ってまで、このような研究と実用化を進めようとしているのかどうか、再度、うかがいたい。 (拍手)
全農 我々が研究開発し、実用化できるものなら、したいということだが、あくまで、研究開発だ。そういう前提がつく。それと、もちろん、生産者団体なので、とくに、茨城の谷和原村で起こったようなことについては、皆さんがたは矛盾される、矛盾していると認識されるかもしれませんが、我々は、あのような栽培については、断固、反対している。JAグループとして、ですね。あれは、大豆の農家のみなさんに、交雑の可能性をあえて、危険をおかしてまで、栽培をする、そういう取組みについては、断固として反対していきたい。今回の研究開発等は、一線を画して取り組んでいることにご理解をいただきたい。
実用化する場合については、きちんとしたインフラが整備されていることが前提、になると思います。生産段階について、一般の同種作物と交雑しないところが確保できること、それから流通段階では、きっちりと、区分されるような、ことが確保されることが必要だ。加えて、消費者の皆さんは理解を得られない限りは、実用化できない。当然、そういうことが前提条件になると認識している。
それができなければ、やれない、ということですよ。
会場 入沢牧子(ストップ遺伝子組換え汚染種子ネット) 作物は、交配は起こる。生きものに遺伝子組換え技術を用いること、それを野外に放つことは止めるべき。今の食品には、それぞれの機能があるのだから、それを工夫するやり方で取り組めばよい。
公となっている情報では、このスギ花粉症予防効果ペプチド含有イネには、抗生物質耐性遺伝子をマーカーとして使う必要がなく、気にしている部分をクリアーした技術となっていたが、ハイグロマイシンは、抗生物質耐性なのでは?また、カリフラワーモザイクウィルス由来のプロモーターは、遺伝子の座を越え、流動性を引き起こすとして問題になっているものですが、これもやはり使われているのですね。
今回の説明会を、市長も知らないということですが、説明会の情報をどのように近隣にされたのか。今後の説明会を別途持つのか。 (拍手)
全農 市役所の農政課のほうに訪問して知らせた。JA湘南に出向いて離した。説明会を開きますという文書も渡してある。
農業生物資源研究所 抗生物質耐性マーカーは、実用化の段階では使わないようにする。今回の場合は、発現性を高くするために使っている。
会場 もう一回説明会をやってくれるのかどうか。
全農 説明会ではなく、こちらに訪問される方には、つねに公開します。
会場(農家) こんな説明会ではだめです。きちっとした説明会をしないと、安心できませんよ。これで済んだなんて、とんでもない。これで作付したらとんでもないですよ。許せませんよ。全農の責任で止めてください。
全農 逆に質問したい。なぜ、作付したら、だめなんですか。
会場(農家) 説明が足りない。もっときちっと、どういうことかを、行政を含めて説明すべき。ここには行政はいない。行政も出席するのがあたりまえ。県なども同席するべき。
自分たちは安全だこうだ、と言い切ればいいんですか。周辺に暮らしている人、わたしはここで農業をやっている者ですが、そういう者に対して、安心できる条件を整えるのが、全農の義務です。これで、再度説明会をやらないで、作付けるなんて、もってのほかですよ。
行政も、これでいいのかどうか。県も同時にどう考えるか。同席するのがあたりまえ。
(拍手)
会場 リスクも含めて、説明するのが説明会である。
会場 もう一回、開いてください。
会場 小宮(遺伝子組換えの危険性を考える会) 平塚に住んでいる主婦である。子どもに安全なものを食べさせたいと、7年前に、市議会にお願いし、前会一致で意見を採択してもらった。厚生省のガイドラインでは、安全性が確保されないし、交雑の危険もあるということで。今回のことは、きのう、周りの農家の人にきいたら、ぜんぜん知らなかった。全農がそんなことやっているのか、と。全農は農家の団体なのでしょう。怒っていました。農家の方に説明してもらいたい。4年後には、米も自分でつくらなければならない。100歩ゆずって、安全だとして、実用化するにしても、米が20メートル離れればよい、という規程では、信用できない。
説明会をきちっとしていただきたい。 (拍手)
全農 農協に対する説明会は、地元のJA湘南に伺い、組合長はじめ役員に説明した。4月の19日に説明会をした。
その時のJAからの要望は、3つあった。
1つ 情報開示をきっちりやりながら実施すること。とくに、この研究開発なり圃場については、いつでも説明、見学を受け付けること。さらには、3つめは、農林水産省の指針があるが、その指針だけを守っていればいいというわけではない。全農としての独自の判断、万全の取組みをしてほしいということだった。
そのすべてについて、私どもは、今後、そういうことを守りながらやっていくとお答えしている。
さきほどからの、このような説明会について、行政の了解を受け、今回の説明会をしている。この説明会の結果については、平塚市に伝える。行政が入った説明会を実施していただきたいという要望があったことも報告したい。
ただ、今の考えは、今後、個々の説明を受け付ける、見学を受け付ける、要望された情報の提供をさしていただく。今後、いつでも、問い合わせいただければ対応していきたい。
会場 先に市民の理解を得てからしていただきたい。
全農 まだ、農林水産省からの承認は得ていない。承認を得た後に判断したい。
会場 小宮 19日のことは、農家はなにも知りません、何人かにききましたけれど。期間が短すぎる。平塚市民として、署名運動をしてでも何でもして、やめていただくよう反対運動を起こします。
全農 何度もいいますが、これからも説明も受け付けますし、見学も受け付ける。情報も提供していく。
先ほど申したように、承認を得てから考えていきたい。
会場 必ず、行政を通してください。
会場(農家) やめてほしいとみんなが言っている。やっていい、なんて、誰も言っていない。それが住民の意思だ。
農家やっている者は、4月19日以降、田んぼが忙しくて出られない。この時期に突然言って、みんなに知れ渡るはずがない。田んぼをやっていれば、わかるはず。今の季節に、田んぼをやっている者がどのような状態か。なんでそんな拙速にやるのか。冬から準備期間が必要、十分時間をかけてやるべきであった。そんなやり方で、住民の理解が得られたなどと勝手に決めつけてやらないでください。 (拍手)
会場 久保田 この説明会にしても、4月26日にホームページに載せただけ。すぐに連休に入って、きょうの説明会である。これだって、知られていない。それでも説明会を再度やらないのか。
全農 きょうの説明会で十分にご理解いただいたとは思っておりません。それから、拙速に進めるつもりもございません。説明のなかでも申しましたが、このセンターのなかの隔離圃場の実験については、われわれは万全な対策で臨める。そういうことで、皆さんの質問なり、ご意見なり、情報提供については今後とも必ず、きっちりと対応しながらやっていきたいと思います。
会場 はっきり、全農として、やめるよと、言っていただけないのが残念です。先ほど、閉鎖圃場の次は隔離圃場でやらなければならないルールがあると言われが、全農のはっきりした姿勢はあるはず。今回の市民のこの声をきいて、たとえルールがあったとしても、全農の姿勢を前面に出すと言っているのだから、それをきちっと、この場で示してほしい。それができないということはどういうことか。
全農 わからないことはこれから、科学的なものを調べていく。皆さんが心配しているのは、花粉が飛んで交雑する環境安全性だろうが、これからする実験が別の作物に及ぼす影響はないと確信している。
(会場 温室でやってくださいよ。納得できない、などの声あり。)
全農 これから、隔離圃場のほうを見ていただきます。(質疑応答終わり)
5 隔離圃場の見学
ネットをはった圃場が用意されていた。ネットの目は8ミリくらいで虫が入りこむことができる。不織布を回りに張るというが、天井に張らないことに対して、不十分という声が強く出た。とくに農家からの不安、不信の声が強く出された。2アールの田に、周辺にポット30個という規模の小さいもので、それによる交雑試験だけで環境安全性に問題ないとされることについても疑問が出された。
水田であるので、水の管理が必要だが、大雨などであふれると横の溝に流れ込むようになっていた。また、そもそも、水が浸透する構造であり、水処理ということがきちんとおこなわれていない点も指摘されていた。
土壌の処理についても、組換え体を土壌に鋤き込むことになっており、土壌の焼却処理まで考えられていない点もずさんであった。鳥、動物なども入ることができそうなものであり、強風、大雨、台風などに対して万全な設備とはいえないものに見受けられた。
以上
※「スギ花粉症GM米に反対する会」は、上記の説明会後、有志が集まり連絡会として設置したもの。