カナダ、植物飼料の60%が動物蛋白汚染、輸入飼料検査が不可欠
04.12.22
今月初め、フィンランド国家食品庁の検査官として働く獣医が、屠畜場でBSE検査の対象となる30ヵ月以上の牛の検査サンプルを、別の若い牛から採取した訓練用サンプルと故意に取り替えさせたことが発覚した(Two
veterinarians face charges for BSE test sample switch,Helsingin Sanomat,12.2)。後に裁判所が事実を確認、罰金刑を科したが、動機は解明できず、余罪があるかどうかも分からなかった(Inspector
veterinarians fined for switching BSE test samples,Helsingin Sanmat,12.17)。フィンランドでは01年以降、EU規則に従い、毎年13万頭ほどの30ヵ月以上の屠畜牛を検査してきた。今までに発見されたBSEのケースは01年12月の1頭だけだ。しかし、この数字も怪しまれることになる。
米国の食肉検査官の労組・全米食品検査官統合評議会が、米国のいくつかの食肉処理場で30ヵ月以上の牛の脳・精髄等の特定危険部位を人間の食料から排除するという今年1月以来の規則が実行されていないなどと農務省に書簡で警告した。これについては日本でも、今日の各紙で報じられた。
だが、BSEに関しては、この程度のスキャンダルは大騒ぎに値しない。リスク評価なるものは、こんなことは常態と心得ておくのが健全だ。
ただ、カナダ食品検査局の検査で、牛の植物性飼料の60%(70のサンプル中41のサンプル)が動物蛋白質(骨と筋肉の断片)を含んでいることが明らかになったというCBCの報道(Animal
parts found in 'all-vegetable' feed: study,CBC,12.17)だけは見逃せない。これはBSE対策の根幹にかかわる。
検査局はリスクがあるとは限らないと言っているが、どんな動物の骨や肉なのかについてはまったく触れていない。カナダでこんなふうであれば、日本に輸入される植物飼料も当然肉骨粉に汚染されている可能性が大きい。これは、輸入飼料の厳重な検査によってのみ発見できるだろう。
12月6日の食品安全委員会プリオン専門調査会の会合で、山内委員は、EUが「輸入されてくるものについて、動物性たんぱくの混入というのをチェックしていたように記憶しているのですが」と、農水省の検査の姿勢を質した。農水省担当者の答えは、「特に飼料の中にごく微量のSRMが混入するというようなことを分析だけでとらえるというのは非常に難しい・・・」、配混合飼料輸入業者に「どういった原料のものを輸入しているかということをきっちり届出させまして、その中をチェックする」ことが「非常に大事であるというふうに考えておりまして・・・」と、答えにならない。届け出原料に(魚粉以外の)動物蛋白質などあるはずがないのだから、こんな届け出はチェックのどんな助けにもならないだろう。
「飼料規制の実効性確保の強化」は農水省のBSE対策見直し案の柱である。こんな姿勢では、これが本気かどうか疑われる。