シンジェンタ社、UCバークレーから撤退
バイテク分野における公的機関と私企業の提携は終わりを告げる
巨大化学企業、支援引き揚げ
2002年12月20日
サンフランシスコ発AP
訳 中田みち
問題となっていた私企業と公的な大学機関との連携は、バイテク業界の不振により終了する見込みである。シンジェンタ・インターナショナル・A.G.社と、カリフォルニア大学バークレー校(UCバークレー)の間で、2500万ドル、5年間にわたる契約は来年11月で期限切れとなる。しかし、契約更新の期限である先月を過ぎても、シンジェンタから大学側にはなんの連絡もなかった。
大学側の関係者は、このスイスの会社から正式な連絡がないまま更新期限を過ぎてしまったので、この提携関係は更新することなく、来年で終了すると考えている。この見方を裏付けるのは、シンジェンタも他の農業バイテク企業と同様、財政的に不安定であるという事実である。シンジェンタは、この提携関係を監督していたサンディエゴのトレー・メサ研究所を閉所するという。
バイテク業界はここのところの経済不況と遺伝子組み換え作物に対する反対の声の高まりによって、強い打撃を受けている。水曜日にはシンジェンタのライバル会社であるモンサント社で、売上が低下し会社の経営不振を立て直すことが出来ないなか、代表取締役が辞任した。
シンジェンタのスポークス・ウーマン、ロリ・キャプテンによると、経済状況は確かに厳しいが、大学側の見方には驚いたという。「まだ、なにも決まっていないのです。」とキャプテンは言う。
その契約では、シンジェンタは毎年500万ドルをUCバークレーの植物・微生物学部に支払い、その見返りとして、学部の科学者の多くが発見、発明したことのライセンスを得ることができるというものだった。この前例のない契約が1998年11月23日に発表された時、大学内での賛否は真っ二つに分かれた。賛成派は、この資金はまるで神からの贈り物で研究を高いレベルに引き上げるものだとし、反対派は、大学の学部を私企業に売り渡してしまう行為だと激しく批判した。
現在までのところ、シンジェンタ社は大学側の発見を1件ライセンス取得している。キャプテンは「結果が出て満足している。」という。しかし大学関係者は、たった一つのライセンスだけでは、提携の成果は計れないとしている。今日の基礎研究では、5年後にビッグヒットの製品となる可能性もあるからだという。
「この提携が成功だったか、失敗だったかを判断するのは、時期尚早です。」とバークレーでこの提携の運営管理に当たっているスーザン・ジェンキンスは言う。しかし、ジェンキンスによると、大学側としてはこの提携を成功と見ているようだ。シンジェンタの資金によって、研究者たちは政府の資金はとても得られないようなリスクの高い実験にも取り組むことができたという。今はこれらの実験から得られたデータを使って、政府の研究資金をうまく勝ち取ることが出来ているために、シンジェンタの資金がなくなった分の埋め合わせができるという。また提携が更新されなくても、大学側は他の資金供給元から資金を得ることができると自信を持っている。ジェンキンスによれば、大学側は研究者が個人的にシンジェンタ社の研究資金を確保することができるだろうと見ているという。「私達は研究を縮小するつもりなどは、まったくありません」と彼女は言う。