巨大種子企業 試験栽培でGM汚染
ニューサイエンティスト
2002年8月24日
カート・クライナー
訳 山田勝巳
別々の種子企業がアメリカとイギリスで試験栽培中のGM作物で汚染を起こす不手際があり、何千と行われている野外圃場での試験基準に疑問が投げかけられている。EPA(環境保護庁)によると、ハワイで2社がGMトウモロコシで他の作物を汚染してはならないとする規制に違反していた。スコットランドでは、試験中のGMナタネに別のGMナタネの遺伝子が入り込んでいるのが見つかっている。 この事故は、環境や人への害は確認されていないものの、これまでずっと起きてきていた、一連のGMによる交雑の最新の発見になる。
先週ワシントンにある公共利益の科学センターは、EPAがマイコジーン・シード社とパイオニア・ハイブレッド社に宛てた書簡を公表した。EPAは、この2社が根を食害する害虫抵抗性の細菌毒遺伝子を持つトウモロコシを栽培する試験圃場を準備するときに適切な手順に従わなかったと話す。
特に、マイコジン社は、風よけの木を植えず、花粉飛散を防ぐための緩衝用ハイブリッドコーンも植えていなかった。 パイオニア・ハイブレッド社は、承認を受けていない他の作物に近すぎる場所で栽培していた。パイオニア社は規則を破っていないと話し、マイコジン社は現在調査中だと話す。
アメリカでは、試験栽培が終了した後に食品としての安全性を審査しているのでこの事件は問題がある。 今回のケースで試用されている組み込み遺伝子の毒性は、食べても安全であることが分かっているが、他のケースでこのようなことがあった場合、花粉飛散により近くの作物が汚染された場合健康被害が起こりうる。
今月初め、ブッシュ政権は試験栽培前にアレルギーを起こす懸念のある新たな蛋白質についてEPAとFDAに事前承認を受けるよう規制を強める提案はしている。しかし、この提案が受け入れられたとしても実施するまでは何ヶ月も掛かる。
イギリスでは、圃場試験前に安全性審査が行われているが、間違って別の作物が植えられた場合には意味がない。アベンティス・クロップサイエンスは、除草剤耐性菜種の試験栽培が承認された種子と承認されていない抗生物質耐性遺伝子を持つ品種の種子を混ぜていた。
汚染の程度は3%と低く、これと同じ組み換えを行った別の作物が他の国で問題もなく商業生産されている。 それでもアベンティスが、これを認めたことは大きく報道されている。 イギリスの環境食糧農村省は、種子検査基準を強化することを検討すると話している。
監視団体は、安全性に重大な懸念があると感じている。「今回の事件も企業が、花粉飛散や遺伝子流動を防げないことと当局が人や環境の安全性を守るために作った指導要領を守らない実例だ。」と公共利益の科学センターのダグ・ガリアンーシャーマンは言う。