英国の政府機関が遺伝子組換え植物のマーカー遺伝子に警告

 

2,001727

ジュネーブ発

ラガヴァン・チャクラバーテイ

訳 河田昌東

 

食品安全と基準問題を審議した英国政府機関が、遺伝子組換え植物と種子に抗生物質耐性マーカー遺伝子の使用に疑問を呈したようだ。英国の懸念と警告は英国政府の農水省の食品安全と基準グループの合同会議のN.トムリンソンがアメリカのFDAに提出したコメントの草案「企業へのガイダンス:遺伝子組換え植物における抗生物質耐性マーカー遺伝子の利用について」に述べられている。

リード大学の新たな知見を引用した1998104日付けのトムリンソンの手紙は、英国の「社会と科学研究所」の新聞発表で公表された。アメリカのFDAへのトムリンソンの手紙では、次のような理由をあげて、マーカー遺伝子(いわゆる遺伝子操作技術で良く使われる)の利用に伴うリスクについて警告を発している。

農業従事者と食品加工業者が粉塵や花粉の形で組換えDNAに暴露される。

抗生物質耐性マーカー遺伝子が腸内微生物に転移する。

       抗生物質耐性マーカー遺伝子が環境中の生物に転移する。

              組換えDNAは哺乳類の細胞に転移し、

              アンピシリン耐性マーカー遺伝子は髄膜炎の治療に障害になる。

 

MAFF(農水省)の手紙には「食品加工過程における植物DNA分解の相対的困難」を示すリード大学の新しい知見が引用されている。この手紙には口腔内の細菌が外来DNAを取り込み、その遺伝子(群)を発現する、こうした形質転換可能な細菌は気管にも存在する、という別の研究についても述べられている。

農水省は「遺伝子が環境中の生物に転移するという問題について懸念すべきケースもあり、また、抗生物質耐性遺伝子を取りこんだ細菌は人間の病原体と相互作用する遺伝子プールとして働く可能性がある」と警告している。「抗生物質耐性マーカー遺伝子をもつ組換え体を広範に使用すれば、この遺伝子を生物圏に大量に増幅させることになる。これらの遺伝子が発現しようとしまいと、遺伝子組換え作物が大規模に栽培されたときに起こる増幅規模の大きさは、遺伝子の転移可能性が多いとか少ないとかいう議論を無意味にしてしまうことを意味する」と農水省の手紙には述べられている。

 農水省の手紙は組換えDNAが病原性細菌によって運ばれ、哺乳類の細胞に取りこまれる、という最近の論文も引用している。 アンピシリン耐性遺伝子は、ペニシリンやその他ペニシリンと類似の抗生物質を不活性化するベータ・ラクタマーゼという酵素をコードしている。この遺伝子は特に突然変異性が高く、それゆえに多くの他の類似の抗生物質への耐性を広げる可能性がある。「人間の呼吸気管のフロラにはNeisseria meningitides Streptococcus pneumoniaなどを含む注目すべき潜在的な病原菌が存在する。これらの細菌は今はペニシリン耐性をもたらすベータ・ラクタマーゼのレベルは高くない。」

 

英国のオープン大学の分子生物学者のメイ・ワン・ホー教授は、数年来、無関係な生物への遺伝子の水平伝達の危険性に警告を発してきた科学者の一人である。トムリンソンの手紙へのコメントのなかで、メイ・ワン・ホー博士は「政府の科学者自身が取り上げている証拠を考えれば、英国政府が大規模な遺伝子組換え作物の栽培試験を継続しているのは無責任だ」と言っている。彼女は、遺伝子組換え作物の花粉は何マイルも飛散する、と指摘している。 農場労働者と食品加工業者ばかりでなく、一般公衆も組換えDNAにさらされるし、ミツバチは確実に花粉を採取して蜂蜜を汚染してしまう。遺伝子の水平伝達や現在の農場規模の栽培試験の健康に与える影響を監視する予防処置はない。現在の大規模栽培試験には除草剤耐性トウモロコシやナタネの試験が含まれる。 遺伝子組換えトウモロコシには「壊れた」アンピシリン耐性遺伝子が入っていて今は発現していない。しかし、もしこの遺伝子が突然変異をおこせば細菌内で再び活性化する、と彼女は言っている

   

上記の論文はチャクラバーテイ・ラガバンが編集長の南北開発モニター(SUNS)に最初に書かれた。

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