「我々は正義の味方だ」理解を求める渦中のバイテク技術者

〜バイテク食品で割れる科学界

 

サンフランシスコ・クロニクル 1月22日

抄訳 山田勝巳

 

カリフォルニア大学デービス校で、50名程の学者が集まり、激しさを増すバイテク食品論争にどう対処するか話し合った。この会議はヨーロッパで酷評されたバイテク食品を、対立の火種にならないようにとFDAが出した2つの提案を受けて、デービス校の農業と環境科学部のバン・アルフェン学部長が、コーネルからハワイまでの大学に声をかけて企画した。この中で彼は「我々は、いかにも悪者だと思われている」と語った。

FDAはこれまで任意だったバイテク食品の事前審査を、有機農産物表示を模して義務づけることにした。

農薬や化成肥料を使ったものはFDAが安全だとしているので、「有機」ラベルを貼るかどうかは、農家が決めている。 同様に、バイテク作物もFDAは問題なしとしているので、ラベルを貼るとすれば、「この農産物は遺伝子操作をしておりません」が適切だろうと言う。

FDAのバイテク肯定にもかかわらず、この会議に参加した学者はいらだっていた。試験作物を抜き取られたり、公開討論時のバイテク側発言者への嫌がらせなどに不満を募らせている。特に学者としての人間性を非難されることに憤りを感じている。しかし、簡単に排除できない非難もある。ネイチャー誌は、最近の論説で科学者がバイテク産業と親密になりすぎていると懸念を表明している。「西海岸で特に顕著だ。世界のバイテク企業の1/3がカリフォルニア大学の教授によって創設されている」とし、この論説の中で、医療と農業に触れているが、特に農業部門で、「スイスのNovartis社がカリフォルニア大学バークレー校の植物研究に5年間で2500万ドルの投資を決めて以来ずっと、大学内でこれを非難してきている学生や教授がいる」と伝えている。  

この会議に反対論者として招かれた消費者連合(Consumer's  Union)のマイケル・ハンセンは、「このような関係は、学者の恥だ。かつての企業は寄付した研究費に紐は付けず、どのように使うかは教授任せだった。バイテク食品を作るお手伝いなどせずに、近代農法がバイテクに加えて殺虫剤、化成肥料を使っていかに土壌生態を乱すかという、公立大学でしかできない研究をすべきだ。こういう売り物にならない研究は、企業は決してやらないのだから。」と訴えた。

この会議は、生命科学研究が、どんな方向を目指すべきかを議論するというよりもむしろ、農薬が減らせ、水が少なくても育つようなバイテク作物が世界の飢えをなくせると信じる学者達の作戦会議として開かれた。

「これは消費者には強力なメッセージ」だと言うのは、農業バイテクの大手企業でつくるバイテク情報会議の広報担当テレサ・セントピータースで、彼女は、去年520万ドルの広告費を使ったが、バイテク食品を有利に導けなかったと認めている。「こんな広告は駄目という失敗例をつくったと思う。バイテク技術を知れば知るほど消費者は安心します。科学の分からない母親でも、自分の7歳の子供に安心してバイテク食品を与えられるような分かりやすい説明を考えて欲しい」と助言した。

私はメディアの立場から発言した。まず、複雑な問題を短時間に短い文章にまとめる性質上、微妙な点を伝えきれないことをお詫びした。これに対し、アリゾナ州立大の農学部長ジーン・サンダは〆切に追われた記者に複雑な内容を説明しきれないと分かっているのに、数行のために20分も30分も使うのは時間の無駄だと発言があり、会場から笑いが起こった。

確かに、遺伝子特許から公立大学の歴史的役割まで4時間近く話し合っても、伝えられるのはごくわずかだ。しかし、だからこそどう伝えたらよいかを話し合うためにここに集まったはずだ。自分たちのやっていることをどうすれば理解してもらえるかを話し合うために。

ハンセン氏を常任の批評者としたのは良しとしても、こんなのは序の口だ。他に大勢のエコロジストや土壌学者が、今の農学が自然を理解するのではなく、破壊する方向に偏りすぎていると批判している。これらの大学が一堂に会することは稀だ。互いに非難し合うだけに終わるかもしれないが、溝を埋めようとする努力は必要かもしれない。

農業によって文明が築かれ、農業を向上するために100年以上前に公立大学が設置された。

現在、公立大学での農業研究がどうあるべきか意見が分かれている。先週のデ-ビス校での会議はより意欲的な知的会議へと発展してほしいものだ。

 

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