世銀がGMを推進
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農薬行動ネットワーク更新サービス
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2002年9月27日
訳 山田勝巳
先月ヨハネスブルグでの持続的開発のための世界サミットで、世銀は、「途上国の飢餓を減らし農村生活の向上のために農業技術を使ったリスクと可能性」について、3年間の国際的評価を始める計画を発表した。 この研究では遺伝子工学を含む様々な農業技術が試験される。 世銀が既にインドやケニヤで組み換え作物推進のための資金融資を密かに行っていることには言及しなかった。
2002年1月7日付の世銀技術説明内部メモによると、いくつかの国で既に農業バイテクのための融資が始まっているとある。 例えば、インドに対し米と綿の組み換え事業に2000万USドルが準備されている。 インド農業研究センター(ICAR)所長のRS・パロダ博士は、世銀が支出する「国家農業技術プロジェクト(NATP)」の主要目的の一つは、高収量耐病性の新品種をバイテクを使って開発することだという。
ケニヤでは、組み換えサツマイモ用に「農業研究国家プロジェクト(NARP)第二段階」を通して資金提供する。世銀の技術説明メモには、ケニヤで既に進行している組み換えサツマイモの圃場試験の写真が入っている。 東アフリカ農薬行動ネット(PAN)によるとこのプロジェクトの第一期はモンサントとケニア農業研究所(KARI)との共同作業として始まり、その目標はGM作物の研究開発だった。 第二期は一部世銀の資金を得て、組み換えサツマイモの圃場試験が含まれている。 [このプロジェクトを推進しているケニヤ側のリーダーは黒人女性でフローレンス・ワンブグ博士。 彼女はバイテク食品を望む第三世界のバイテク業界の報道担当で、彼女の専門家としての教育、訓練はモンサントがスポンサーとなっていたことを考えれば不思議なことではない。]
世銀の技術説明書では、進行中のバイテク研究と能力開発融資はエチオピア、ブラジル、インドネシア、ペルーに及んでいるとある。
「世銀は、GM推進に乗りかかるのに三年間の調査結果を待つ気がない」と北米農薬行動ネット(PANNA)の、マルシア・イシイーエイトマンは見ている。 PANNAは、世銀に対し現在進行中のものと計画されているGMプロジェクトへの資金を今すぐ撤退させ、それを実証済みの低コストで生態学的な土壌肥沃度や集中防除法(IPM)への融資に切り替えるよう要請している。
世銀は、環境影響や健康リスクが殆ど分からない状況でかつ南の債務国がGM食品を拒否している国(欧州、日本、韓国など)の市場を失いかねないのに、農業バイテクを推進しているとして世界中のNGOから痛烈な批判を受けている。 「世銀は、GMを希望しない何万もの農民の声に耳を貸すべきだ。」とエクアドルに本拠のあるアクシオン・エコロジアのエリザベス・ブラボは強く求めており、「私達は、世銀に正しいこと、この危険な技術に対し予防原則を適用すべきだとお願いしているんです。」と言う。
しかし、多国籍農薬・バイテク企業の力と影響力が、小さな農民の声よりも重視されたようで、インドでは世銀のプロジェクトがモンサント、アベンティス、シンジェンタとの共同になっている。 インドのNGO世界団結センター(Center for WorldSolidarity) は、このプロジェクトが農薬・バイテク巨大企業シンジェンタとの共同だと知らされて病害防除部門から撤退した。 CWSによると、このプロジェクトのGM部門にはモンサントとアベンティスが世銀のパートナーになっているという。
2002年7月の世銀理事会では、ヨーロッパの理事も世銀の新「農村開発戦略」案にあるGMについては予防原則を採用するよう世銀経営側に求めた。 ヨーロッパの世銀理事には、組み換え作物が農村の貧しい人達のニーズに応えるものかどうかに疑問を持つ多くの農業開発の研究者や専門家の支持が増えてきている。
カリフォルニア大学バークレィ校の農業生態学教授ミゲル・アルティエリ博士は、「組み換え作物は飢餓や貧困の解決策ではない。逆に貧困の根である不平等を広げる。 途上国の小農民や土着の人達は、既にある費用の少ない、技術の要らない、生態学的に持続性のあるやり方で食料保全ができ、同時に天然資源基盤を保存する方法を示してくれている。」と説明している。
情報源:
世銀が進める科学技術の国際評価 http://www.agassessment.org; 貧困緩和と経済成長のためのバイテク--世銀技術解説メモ2002年1月7日のための課題と選択肢、世界銀行;ワシントンDC;インド国家農業技術プロジェクト用プロジェクト評価文書
(1998), 世銀;ケニア国家農業研究プロジェクト第2段階(1996)、世銀;綿、米を遺伝子操作するICAR;エコノミック・タイムス、2月11日、2000,ニューデリー、インド
(http://sdnp.delhi.nic.in/resources/biotech/news/et-11-2-00-icar.html).
問い合わせ: PANNA (Pesticide Action Network North America)
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