裁判に踊るモンサント

2003年7月14日

クロップチョイス

ポール・ビーインゲスナー

訳 山田勝巳

 

 モンサントとブッシュ大統領には共通点がある。どちらも「控えめに行動しムチを振り回す」外交方針であることだ。ブッシュは、アメリカ企業の安全を守るために巨大な経済力を振り回し、モンサントはその経済力で裁判というムチを振り回す。そしてブッシュ同様モンサントもこれまでこの戦略で成功してきている。いずれにしても、住宅地にクラスター爆弾を落とされることも巨大企業に何百万ドルかけてでもという訴訟を起こされるのも壊滅的であることには変わりない。

 

モンサントは、農家に毎年特許種子を買わせることは絶対に譲らない決意だ。そのために75名、年間予算1000万ドルの一大部署をもっている。特許侵害で推定400件の農家がモンサントに訴えられている。カナダの農家はパーシー・シュマイザーの裁判と苦悩を、アメリカの農家はホーマン・マクファーレンやネルソン農場を良く知っている。多くの農家はモンサントに勝ち目の無いことを思って泣き寝入りするので裁判になるのは極めて稀だ。モンサントのライセンス契約には裁判をアメリカのミズーリ州裁判所で行うという条項がある。何千キロも離れたところの農家にはこれが裁判費用以外に掛かってくる。

 

裁判になったケースもモンサントの要求に対し、おとなしく従わざるを得なくさせている。ホーマン・マクファーレンは、モンサントの使用料を払わずにRR大豆を栽培したことで78万ドルの罰金を命じられている。テネシーの農家ケム・ラルフはモンサントとの訴訟以降に起こした、もろもろの違法行為に対し170万ドルと8ヶ月の禁固刑に処されている。

 

モンサントは、積極的法廷キャンペーンの成果に満足しているに違いない。事実、他のことにも使い始めている。モンサントが最近裁判で始めたことは、合成成長ホルモン不使用のオークハースト酪農の広告は誤解を招く、モンサントのホルモンを与えた牛のミルクよりも与えない物の方が良いという印象を与える不当表示であると訴えたのだ。モンサントは世界で唯一つの合成牛成長ホルモン(BGH)生産企業だ。この製品はカナダや他の国で、牛や人間に害があるとして禁止されている。合法であるアメリカでは、これを使わないことを売り文句にしている酪農家がいる。オークハースト・ディリーの表示は、ズバリ「私たちの農家の誓い;合成成長ホルモン無使用」。単純明快に事実を述べることが重大な結果をもたらすなどと考える人はいない。

 

モンサントがメイン州も被告と名指ししても不思議ではない。メイン州には、合成成長ホルモンを使っていない製品にだけ付けられる品質保証シール制度がある。

 

このモンサントの訴訟は農家と消費者の怒りを買っている。オークハースト・ディリーは消費者にはどんなミルクを飲んでいるのか知る権利があると主張している。モンサントがこの裁判に勝つと、不使用ミルクの生産者は差別化が出来なくなる。同じ生産法を取っている農家はこの裁判を注目している。積極的訴訟で薄氷を踏むモンサントだが、ほかの企業が直面するような消費者の反撃は心配する必要がない。 モンサントが直接消費者に売るものは無い。大抵は特定のものを生産しようとした場合モンサントに行く以外に方法の無い農家が相手なのだ。この依存的関係があるため農家はモンサントに対して怒りを持ち続けるわけには行かない。一方モンサントはその容赦の無い暴力を仕返しを怖れることなく振り回すことが出来るのだ。農家の事態はすぐに悪くなる状況に置かれている。

 

beingessner@sasktel.net

 

 

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