「ラウンドアップ・レディ大豆の安全性についての問題点」
ジュディ・カーマン フリンダーズ大学
南部オーストラリア 1999年8月
以下は、モンサント社が自社製品ラウンドアップ・レディ大豆 (またはグリフォサート耐性大豆 40-3-2) を人間および、動物が摂取する場合の安全性を示した、アセスメントの中で使用された手法について評価したものです。
評価した手法は、ANZFA(オーストラリアおよびニュージーラ
ンド食品協会)に出された「全アセスメント報告書および規定影響アセスメント」(モンサント社作成)にでてくるものものです。
除草剤ラウンドアップは、ある種の芳香族アミノ酸を植物が合成するときに必要な酵素を阻害することによって植物を死滅させる働きがあります。この酵素は、5-enolpyruvyl shikimate-3-phosphate synthetase またはEPSPSと呼ばれています。ラウンドアップ・レディ大豆の遺伝子操作の過程でこの酵素の細菌バージョンを(土壌細菌CP4株から)
大豆の中に組み入れて、ラウンドアップから大豆を保護することができるようにします。このようにして、大豆と雑草に一緒にラウンドアップを散布しても、雑草だけ死に、大豆は残ることができるのです。
この遺伝子が大豆に組み入れられた方法からわかるように、いくつかの他の遺伝子も存在しています。
この大豆の唯一の新しい蛋白質はEPSPS酵素であると、この申請では述べています。が、 この実験をどのように行なったかは述べられていません。
人がこの新しいまだ機能的な酵素を食物の中から摂取する可能性があるのです。申請した会社は、このことについて考慮したとは見受けられませんので、家畜の細胞中のこの酵素の量、酵素が通常の調理の間にも生き残る可能性、あるいは酵素が人間を含む動物に与える影響を測定する研究を行ったとは考えられません。
人の食事で一般的な大豆製品はレシチンであり、食べ物の中の乳化剤として使用されます。遺伝子組み換え大豆の申請が提出されたすぐあとで、大豆におけるグリフォサートの許容範囲を200倍に増やすことを許可するようANZFAに申請が出されました。モンサント社は非常に高いレベルのグリフォサートがラウンドアップ・レディ大豆中にあることを想定しているようです。
実験は農場から収穫された大豆を使って再度行うべきです。申請元の会社は、ラウンドアップ・レディ大豆と普通の大豆の比較を水分、繊維、灰分、蛋白質、アミノ酸、脂肪酸、種子の貯蔵、トリプシン・インヒビター、レクチン
、イソフラボン、ラフィノース、およびスタチオースについて行っています。このとき、有意な差は見つからなかったとしていますが、使用したサンプル・サイズがANZFAの書類には書かれていません。また、使用したサンプル・サイズを正当化するためのサンプル・サイズ計算も書かれていません。もし使用したサンプル・サイズが小さ過ぎた場合は、ラウンドアップ・レディ大豆と普通の大豆に差異があったとしても見つからないでしょう。ここでは、グループごとに1つの性別につき10匹のラッ
ト(おそらくグループごとに20匹を意味する)に、普通の大豆とラウンドアップ・レディ大豆を、任意にさまざまな大豆食濃度で与えたとしています。生化学検査、免疫機能検査、全身解剖、あるいは組織検査
(すい臓を除く) などは何も行っていないようです。また、動物に投与したのは4週間のみです。書類では、ラットの低レベル摂取グループから高レベル摂取グループへの移行についていずれも報告されていません。
同様に、5〜6頭の ホルスタイン種の乳牛のグループに生大豆を与えています。ラウンドアップ・レディ大豆を与えられた乳牛は、より多くの脂肪調整牛乳を生産しており、これは食物摂取でわずかな増加がみられたためであると説明されています。この実験は貯蔵された血液サンプルで行われており、ラウンドアップ・レディ大豆は普通の大豆と同じくアレルギー性があったとしています。ところが彼らはこの仮説をテストするための人間での調査を何も行っていません。少なくとも、以下の調査を独立した機関によって行うべきであると考えます。
農場からとれたラウンドアップ・レディ大豆の化学的分析を行って、そのような大豆中にあるグリフォサートのレベルの範囲、および非遺伝子組み換え大豆との比較方法を判別する。食物摂取量、体重、全生化学検査、全免疫機能、肝臓機能、腎臓機能、腫瘍検査、各グループの死亡率、および動物の死亡時の全身解剖 (腸部分および組織検査を含む)。また、子孫への影響がないか調べるために動物を繁殖させることを許可するべきである。体重、全生化学検査、全免疫機能、肝臓機能、腎臓機能アレルギーの可能性および一般健康審査。ラウンドアップ・レディ大豆が許可されている国において、この大豆の低レベルから高レベルまでの消費者を含むグループ別調査体制を確立し、多年におよぶ追跡調査を行って長期的な健康への影響を調べる。
他の遺伝子組み換え食品の安全性アセスメントにも欠陥がある可能性があります。
このような食品について、長期間にわたる動物および人間の実験を含む独立した試験が早急に必要です。そうでなければ、何百万人に対する巨大な食物投与実験を許しているのと同じことになります。
このような製品は、非常に純粋であるので植物細胞や遺伝子物質や蛋白質は含まれない、というようなことは考えられません。
最後に、この申請会社は、遺伝子組み換え食品や、そこから作られる製品(油など)にラベル添付することに難色を示しているようです。