アーパッド・プシュタイ博士が語る21世紀の食糧

 

英国ハンガリー フェローシップ主催

ポーランド・ハース・クラブ開催

ケンジントン南

5月7日1999年

アンジェラ・ライアン

訳 山田勝巳

市民科学研究所(Institute of Science in Society)

 

注:講演者が話したことを正確に伝えるために一人称で記録している。 講演者は内容が正確であることを認めている。

 

過去50年間、使う農薬の種類が増加してきており、今ではより以上に使わなければならなくなっています。 それに環境と農民への負担を克服するためにバイオテクノロジーが求められています。 DNAの発見以来、何故これが切り札になってきたのか主な理由が4つあります。 農薬に抵抗力のある病害が増えてきており、殆ど全てのGM植物はこの範疇に入り、確かに利点はあるのです。 収量、耕作時間、生育特性の向上が求められており、まだこの分野では製品が出ていないが第2世代のGM作物では栄養価の改善への要求があります。

 

GM作物は、今ではどこにでもあり、イギリスでは3種類しかスーパーマーケットの棚に出ていないが、この技術を手に入れ事実上全てが遺伝子操作されています。 モンサントのラウンドアップ除草剤に耐性のあるGM大豆、ノバルティスが作ったBt毒遺伝子のあるトウモロコシ、ゼネカのフレーバーセーバーでゆっくり熟して農家に便利なピューレ(訳注:トマト)等。 GM植物を作るために、希望する遺伝子を挿入するには植物の持っている抵抗力を破壊しなければなりません。 遺伝子工学者はこれをするのに色々な仕掛けをします。 スイッチ;プロモーターで遺伝子をオン・オフする。 遺伝子を取り込んだ細胞を選び出すために全部を上手く働くようにする。 このためにレポーター遺伝子を使う。 細胞を育てて組み換えが上手く言ったものを識別する。 そのために抗生物質耐性遺伝子を使う。 一個の遺伝子を入れるのではなく、一群の遺伝子が必要なのです。 遺伝子を挿入するのにはプラスミドを使うか、高圧銃で撃ち込みます。 この技術は根本的に予測不可能で、組み換え遺伝子は何十、何千という他の植物の遺伝子が発現している環境中に割り込んで行くのです。

 

それで、我々の研究では、2つの株を使い、全く同時に組み換え研究を行いました。栽培中2つの株は、違ってきたのです。 この意味するところは、組み換え遺伝子が植物ゲノムの違う場所に入ったということです。 この位置の影響を予測するのは困難です。 これを理解するために、矢を的に射るウィリアム・テルを考えてみてください。 彼に目隠しをするのは遺伝子研究者が組み換えするときの実態です。 彼は、組み換え遺伝子が受け取るゲノムのどこに入り込むのか全く分からないのです。

 

10−20%の成功率で組み換えし、さらに確実にすると5%に落ちる。 これらを再生してまた選ぶ。 常に選ばなければならない。 我々は始め隔離した実験室で組み換えポテトを育て、後にはロッテルダムの野外の土地で育てました。

 

ここで一言、私が騒ぎを起こしさえしなければ今頃このポテトを皆さんが食べていたことでしょう。 この捜査はプシュタイ博士対ジェームズではないのです。 英国民の税金を160万ポンドかけた知識です。 皆さんが払ったのです。 我々は、ありとあらゆる科学的助言を受けました。 我々の場合もこの情報はロウエット研究所に留まるはずだったのです。 しかし、私は問題を起こしました。

 

審査機関には12名の専門家がいました。 私は、科学的審査官達と呼びます。つまり、研究機会もなければ結果も出さないのですから。 我々は結果があり、発見したことを暴露すべきではなかったと言われていますが、私は今でも人間をモルモットにするのは正しくないと信じています。 私は、審査官達が業界から何を得ているのか知っていました。 厳格に試験されていると聞かされていますが、食べたときの安全性に関してはたった一件の論文しか公表されていません。 私に言わせれば、少なくとも12件なければいけない。 事実と保証は、後で嘘と分かることもある。イギリス国民の健康が掛かっている場合、疑って掛かることが非常に大切です。

 

1995年に我々スコットランドのダーハムとロウエットグループは、このGMポテトの研究に入札しました。 これらのポテトはスコットランドと英国の市場向けだったので副食だけれども検査が必要だったのです。 我々は、27グループを相手に落札しました。 ここで申し上げたいのは、入札の手続きとして、この入札は専門家が審査していると言うことです。 我々が良かったとすれば、明らかに理由があって良かったはずです。 私たちは、反栄養素(anti-nutritional factors)の遺伝子を識別するという目的を持っていました。 

 

虫に害があって哺乳類には問題のない遺伝子です。 ポテトの場合、害虫は、葉を食害するアブラムシ、根を食害する線虫がいます。 それで遺伝子産物をいくつか試験して、昆虫を人工飼育してみて繁殖が正常か、健康か病気になるかを観ました。

 

遺伝子は人間に悪さをしてはいけません。 ラットが哺乳類なのでラットを使いました。 それも若いのを。 その方が比較的小さくて弱いので悪影響がはっきり出やすいからです。 ラットと人では類推するのに十分な重複があります。 私の研究所は主に家畜飼育・家畜栄養研究所でして、これがロウエットの中心テーマで人間の栄養と関連があります。 最近EU向けに生物学検査論文を書きました(私を首にしておきながら、私に科学論文を書かせるのですから、おもしろいものです。) 我々は、30年以上検査をしてきて、50以上の論文を発表しています。これが第一の目的で、ポテトに組み込む適当な遺伝子を探すのに7年も掛かりました。 それは、後で大きな違いが出ます。 我々には、しっかりした根拠を与えてくれた研究の柱があったので、この遺伝子から出来たものは人が食べても安全だと分かっていました。

 

同じ組み換えポテトから71と74という2つの株が得られ、これを親株と共に育てました。全く同じ条件で一緒に育てるのは非常に重要です。 2つの株が実質的に同等であることを確認するには比較がとても重要です。 実質的同等については、生物学的検査をする必要は一つもありません。 作物の成分が似ていればよいのであって、これがGM作物を認可するやり方です。 しかし、実質的に同等であるわけがないのです。 新しい遺伝子を、時にはいくつも挿入しているのですから。 蛋白質と炭水化物と糖分含量、その他に反栄養的糖アルカロイドを調べました。

 

一方の株は他の株より蛋白質が20%少なかったし、他の要素も調べて、我々はこれらの2株はその親株と実質的に同等ではないと判断しました。 これは予測できなかった。 予測不可能なのは個々のGMプロセス毎なのではなく、組み換えの全てでのことなのです。 我々のプロジェクトはここで終わるべきだったと私は思うのですが、全てのGM植物に使える新たな検査技術を開発しなければなりませんでした。

 

継続して給餌試験をしました。 親株のポテトを与えるラット、親株のポテトプラス組み換え遺伝子産物の蛋白質を与えるラット、それと両方の組み換え株からのGMポテトで、全ての実験は同じ条件下で行いました。 全てのラットは、同じ家系(クローンではないがクローンに近いほど同系交配されたもの)で、給餌量も同じで同じ環境で飼育されました。

 

問題は、正常に育つかでした。 もし正常に育たないとしたら、組織に何が起こっているのか。 通常ラットは100gから120gに10日で成長します。 また組織は比例的に育っているか。 肝臓は1gから1.2gに大きくなっているはずです。肝臓が正常に育っていないとしたら毒物の影響を示しています。 脳の大きさ・機能も重要です。 これらの臓器やその他も生と乾燥重量を計りました。 そして、比例的に育っていないものが多いことが分かりました。 何故そうなるのか。 免疫システムと機能を調べました。 ここでは他で見られないものが見られます。 細部まで精確に実験しました。 我々は最先端研究者で不器用な素人ではありません。 私は、これらのことが試験されたことのないものだったので懸念を感じていました。 実験が進むにつれて懸念が大きくなって行きました。 リンパ球の反応力にも異常が見られました。 これは正真正銘の免疫システムへの影響で正常ではありませんでした。 

 

私は、組み換え食品には重大な問題があると感じられる事実がありましたので、TVの世界の動き(World in Action) という番組で150秒の証言をしました。 科学的論文が出るまで2−3年掛かることもあり、それまでにはこれらの食品が棚に並んでいたでしょう。私は、懸念を表明しました。 その結果職を失いましたが、私は何度でもやります。

 

他の科学者には、何故行動規範に反して、専門家の検閲する雑誌に発表する前に話したのかと聞かれることが時々あります。 私は、もし私がそうしなかったら今頃はこのポテトを食べていて、GM食品の安全は議論されなかっただろう、と答えています。

 

 

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