パキスタンがGM種子を開放へ
ナディーム・イクバル
インタープレスサービス
2002年11月20日
訳 山田勝巳
イスラマバード発−GM種子の密輸阻止が困難なため、パキスタンは輸入禁止を解いて規制することでGM製品の使用を管理できるのではと期待している。
「正体不明のGMOがオーストラリア、アメリカ、中国から入り込んでおり、これの被害を最小限に留めるためには、輸入者が製造元その他種子の素性を明らかにしたものを申請するようにして管理するしかない。」と農業省の役人は話す。
現在、GM種子の闇市が繁盛しており、GMのコーン、小麦、綿、野菜種子が高収量で農薬が要らないという触込みでパキスタンではどこでも手に入る。 GMコットン一袋は約2米ドル。
しかし、商業利用に規制が十分にない状態で規制を緩めることは、ここ2年間規制を作るよう求めてきた食品の権利を求める活動家や政府系学者の懸念するところ
だ。
規制ができれば、輸入GMが管理できるだけでなく、パキスタン独自のGMO研究促進や圃場解放が可能になるという。 国立農業研究センターと国立バイオテクノロジー遺伝子工学研究所で独自のGMOに取り組んできた専門家は、パキスタンが1994年に批准した生物多様性国連条約に基づいてバイオセーフティ法を作るよう求めてきていた。
政府科学者は、ガイドラインが遅れると、食料安全保障に欠かせないと見ている研究で遅れをとるという。 「研究室レベルでは、パキスタンは綿、サトウキビ、大豆、トマトのGMOが開発されており、バイオセーフティ法がなければ発表できない。更に恩恵がどれほどのものかはGMOが許可されなければ分からない。」とバイテク委員会の議長アンワー・ナシム博士は言う。
9月初めハイドラバードの農民が政府に原因不明の病気のため1,600ヘクタールの綿花が白いはずが赤くなったと苦情を言ってきた。 政府の研究者が調査したところ、手荷物でオーストラリアから持ち込まれたBt面が植えられた事は分かったが、赤くなった原因は不明だった。
ゴス・アラー・ワサイヤー村では、農家のムハマド・ラムザンがBt綿を14ヘクタールに植えたが、赤みが出る病気で2ヶ月で作物が全滅した。 この状況の中でパキスタン政府は9月にGM種子輸入禁止を解いた。 パキスタンの14300万人口のうち2000万が綿で生計を立てていて、外貨収入の60%がこれに頼っている。 隣のインドでもBt綿の破綻が伝えられ、禁止した州もある。
パキスタン政府がGM綿の研究を開始したのは、害虫被害で数年収穫が落ち、大打撃を受けた綿中心の農業経済を立て直すために1990年代半ばから始められている。
GM綿の破綻が最近報告されても、パキスタンの研究者は、これまで通り病気に強い綿ができて生産費が下がり輸出による外貨収入予測が確実になると主張しており、葉が反る病気だけでも毎年1億2000万ドルの被害があるのに、バイオセーフティ法がないばかりに耐病品種を出すことができないと話している。