「オレゴン州の遺伝子組換え表示義務化法案でモンサントは負けるかもしれない」

とセントルイスの新聞が予想

 

セントルイス・デスパッチ(論説)

02年9月26日

訳 河田昌東

 

モンサント(株)は今苦境に立たされている。このセントルイスに本拠を置く企業とその関連産業は遺伝子組換え原料をわずかでも含む製品に表示を求めるオレゴン州の投票運動を攻撃するために多額の資金を投入する準備をすすめている。モンサントとバイテク及び食品分野の関連企業は、個々の州が表示義務を要求すれば消費者は混乱する、という主張においては正しい。 表示運動は遺伝子組換え食品の安全性に関する根拠のない恐怖によって激しくなった。 すでに何年も前から市場に出ており、アメリカの食料品店の加工食品の70%は遺伝子組換えだというのに、遺伝子組換え原料で作った食品が健康に問題をおこす、という科学的証拠はない。

しかし、この問題は科学や論理の問題ではない。信頼の問題である。また、伝統の問題でもある。それはある種の自己規制の保持に関する問題である。大半は感情論である。世界中のどこでも、人々と食品の関係は私的で、感情的で、人々の心理と文化に深く関わっている。

 

モンサントの社長ヘンドリック・ベルフェイリーは2000年11月にそれを認めて言った。「我々はこの技術が人々に大きな問題を起こすという事実を見過ごした。我々は我々のやり方、まさに我々のアプローチ、が傲慢と見られることを理解していなかった」といった。 ベルフェイリー氏はそのとき事態は変わるだろう、と断言した。しかし、モンサントは未だに表示義務化要求と戦い続けている。合衆国では、少なくとも勝利した。(日本、オーストラリア、いくつかのヨーロッパの国々は表示義務がある)。

 

ベルフェイリー氏のスピーチから数ヵ月後、FDA(食品医薬品局)は遺伝子組換え食品に自発的な表示を要請した。この決定は科学に裏付けられたもので、オレゴンの運動に種を蒔いた。「私が聞いた多くの人々の意見では、彼らは動き回るDNAが心配というより、それを知ることが許されないことのほうを懸念しているの」と言うのは投票運動を提案したポルトランドの女性ドナ・ハリスである。これは基本的な人間の心理である。もし、あなたが、何も心配することは無いという人々を信頼できないなら、あなたはもっと心配になるだろう。

モンサントと関連企業は金のかかる表示法案に反対する無様で格好の悪い連合を形成した。 彼らは目標に向けて600万ドル費やすことを決めた。これは表示支持勢力が使う費用の40倍である。これは完全に負け戦に臨む体制である。それは、表示には多額の費用がかかる、という信念を示すかのようだ。そのことは消費者には伝わるだろうが。 表示が遺伝子組換え原料を含む食品の販売に悪影響を及ぼすとも考えにくい。オレゴンの運動は、あなたが選ぶかどうかは別として、運動の内的ロジック・・・非論理の過剰反応である。しかし、11月に運動が失敗したとしても、それは運動の死を意味するわけではない。カリフォルニアやその他の州の活動家達は彼ら自身の表示キャンペーンを打ち出す準備を話し合っている。

さらに多くの戦いに直面しても連邦表示制度の成立を打ち破る戦いはあっけない勝利に終わりそうだ。 負け犬達をやっつける最も単純で、恐らく安上がりな方法は、彼らを勝たせることだ。 なんと非論理的なことか。(02年9月26日の論説)

 

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