アメリカの農民はGM作物栽培でひどい不利益を被っている

 

ニュージーランド・ヘラルド

2002年8月27日

ガイ・ハッチャード

訳 河田昌東

 

選挙が始まって以来、多くの科学者たちが遺伝子組換えの試験方法は不正確で、ニュージーランドがもし種子の試験を緩和し遺伝子組換え技術を容認しなければ、世界貿易から取り残されてしまう、と主張してきた。こうした主張の多くは不正確で間違っている。GM作物は、実際はアメリカの農業経済に深刻な影響を与えている。

リンカーンの作物食品研究所のホワード・べザールは、GM汚染のゼロ規制は実行不可能だ、と示唆している。彼によれば、1パーセント規制でも分析結果に信用をおくことは難しい、という。実際は、商業的なGM試験研究所は1万分の1でも正確に検出している。数百万ドルの食料品が毎日そうしたテスト結果によって確認され取引されている。その上、スターリンクのような多くの未認可GM品種はゼロ規制下にある。もし、わずかでも検出されればヨーロッパや日本では到着時に受け入れを拒否される。 GM試験はそうした金のかかる回収を避けるために正確でなければならない。例えば、GMフリーと確認された商業種子取引の規制レベルは0.01%以下であって、べザールの主張する1%ではない。同じ作物食品研究所のトニー・コナーは現在のEU(1%)と日本(5%)のGM表示レベルを指摘し、「輸出に決められた規制値を守るだけで良いのだ」という。これも間違いである。この数字は食品表示のための政府の規制値に過ぎない。実際は、ヨーロッパと日本の大半の食品会社はGM成分についてゼロレベルを要求している。これは消費者の要求によるのであって、国際的食糧貿易上、実生活において守られるべき条件である。

 

昨年6月に、GMポテトの痕跡が日本に輸出されたスナックで見つかった。日本の輸入業者が厳密な試験方法を設定したため、アメリカは巨大な日本のポテト市場から37%を失う結果になった。これに応えて、アメリカのポテト理事会はGMポテトを完全に排除するための金のかかるプログラムを作った。全体的に見て、アメリカの食品産業はGM作物導入で数十億ドルの輸出を失った。アメリカのトウモロコシ価格は過去30年来の最安値で、1ブッシェル当たりUS$3(NZ$6.43)から$1.3(NZ$2.79)にまで下がった。1996年にGM作物が導入される以前は、アメリカのトウモロコシ農家は年間14億ドルの収益を得ていた。しかし、昨年(2001年)は120億ドルの損失をこうむった。アメリカ政府はこの3分の1を農業補助金でまかなった。ニュージーランド政府は農家をこのような形で保護することは決して出来ないだろう。輸出市場を失ったアメリカの企業を救う戦略が、認可されたGM品種の0.1%以下、未認可品種のゼロ汚染規制である。ライフサイエンス・ネットワークのフランシス・ウイーバーは我々に多くの国々がGM作物の商業化を進めていて、それに追随しなければニュージーランドはチャンスを逸してしまう、という。実際は、アメリカ、カナダ、アルゼンチン、中国の4カ国で98%のGM作物を栽培していて、全てが撤退を急いでいる。中国とアルゼンチンは商業上の現実に直面していて、GM作物から引き返す計画を策定中である。北アメリカのGM食品がヨーロッパや日本に入り込むゲートはほとんど閉ざされている。EUへのカナダのキャノーラ・ナタネの輸出は1996年には1億8千万ドルあったが、1997年以降はゼロである。アメリカのEUへのコーン輸出も同様に数百万トンからBtコーンが導入されて以来ほとんどゼロに落ち込んでいる。

 

カナダは現在、自発的表示法案を準備中で、新たなGM品種の栽培の制限を呼びかけている。アメリカ農務省でさえ、自発的なGMの分別計画を立てている。北アメリカのGM技術が世界規模で採用されるのはアメリカの農民がそれによって利益が上がったからだ、と言う人もいる。実際には、北アメリカその他におけるGM種子の販売は、急激に市場シェアを確保し、GM種子へ非可逆的にシフトするにように計画された「安売り」政策のせいである。1996年以来、アメリカの農産物セクターの従来の消費者向けの市場取引は、ほとんど全ての種子セクターを獲得した貪欲な農薬・バイテクセクターに負かされてしまった。モンサント・ジュポン連合は現在アメリカの種子市場の70%以上を支配している。市場を制覇したのち、彼らは食物チェーンの中に人為的な価格関係を持ち込んだ。農業セクターとの長期にわたる関係で利益を作り出していたかつての家族的種子企業は、市場シェア拡大を追い求める非採算企業になってしまった。ラウンドアップ耐性大豆のようなGM作物とセットで除草剤を売ることが市場獲得の力になった。1998年から2000年にかけて、モンサントは種子及び遺伝子組換え部門で17億ドルの損失を出し、大豆の種子市場のほぼ70%を獲得した。それによって、モンサントはラウンドアップ除草剤関連で75億ドルの売上を得た。一方、アメリカの大豆出荷価格は1ブッシェル当たり2ドル以上暴落し、大豆農家は数十億ドルを失った。結局、資本金30億ドルの国際バイテク・除草剤企業は3兆ドル規模のアメリカの農産物企業を支配することに成功したのである。こうした経過で農家には何の財政的利益もなかった。輸出市場を失ったことによる農業出荷価格に対するGMの巨大な影響に加え、2000年度のアメリカ農務省による農業収支調査が、アイオワ州の350農家の収量、肥料、除草剤、種子コストなどのデータを報告している。このデータを分析したアイオワ州立大学は、巨額の価格下落をカバーできるほど、GM作物の農場レベルの経済的利益はなかった、と報告した。 その結論は、アメリカの農業部門は不安定になり、記録的な農家の経営破綻が生じた、ということである。同様な戦略は海外でも採られている。

 

真の戦いは、医薬・バイテク企業同盟が特許種子と関連除草剤で世界の食糧市場を獲得できるかどうか、である。その市場戦略は「契約が全て。一般広告、農民への宣伝、政府へのロビー活動に多くを費やし、種子の安売りを」である。アルゼンチンで、モンサントはこの手法により大豆種子市場の90%を獲得した。遅ればせながら、金で頬をたたかれたアルゼンチン政府は、今年度GM作物から転換して農家を救済するために2億ドルの費用を費やす。農家はもう目を覚ますべき時だ。アメリカの農業バイテク連合の全ドル規模から見れば我々の経済などちっぽけなものだ。彼らは我々の農業セクターを操作できる能力を持っている。政府への疑問は、問題が緑の革命対在来農業ではなく、我々の経済の大黒柱である農業セクターを、本心は我々の利益に興味のないアメリカの巨大農業バイテク企業の戦略にさらすべきなのかどうか、なのだ。 

 

農家や食品企業にとってGM作物から利益が得られるという市場モデルは証明されていない。世界の人々の多くはすでにGMの危険性に目覚めている。50カ国以上がGM作物に制限を設けている。もし、我々がニュージーランドのバイテク・ロビーのアドバイスに追随すれば、我々の農業は最後には輸出禁止と多額の補償、不可能でなければ市場を守るための大掃除、といった事態に直面せざるを得ないだろう。農家の財政的独立もリスクに立たされるだろう。政府は我々の種子を守らなければならないし、そうすれば農業部門は不当な外国の影響と所有権侵害から保護される。より積極的には、もっと利益があり、受け入れがたい危険のない我々の農業経済を発展させる別の道もある。ニュージーランドはBSEのないことによるメリットを持っている。我々は同じようにGM作物を持たないことから利益を得ることが出来る。我々は汚染種子の輸入よりは非汚染種子とGMフリー農産物の市場を作り出すことが出来る。特色のある穀物、有機天然農産物の市場も成長しつつある。こうしたトレンドは確実に整備され、今後もさらに拡大する。優位にたつには真の市場情報と農家に対する効果的な教育が必要である。政府と教育部門は農場規模の有機栽培コースを提供し、国際食品ビジネスや規制当局、インターネットによる食品貿易と連携していく必要がある。

 

ニュージー―ランドはGM試験手順を商業実態に合わせて改善すべきである。農業省はバイテク政策とは独立し、非GM認証システムのための商業的に十分でかつ科学的知識を持った試験機関と連携する必要がある。そうすればヨーロッパ、日本、北アメリカやアジアにおいて高価格の非GM市場で我々は有意なシェアを占めることが出来るだろう。

 

著者のガイ・ハッチャードは6月までアメリカのジェネテックID社の経済、規制、市場の主席アナリストで、指導的な遺伝子分析者であった。

 

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