ニュージーランドのGMO試験再開にマオリ族が猛反発

 

ボブ・バートン

キャンベラ発

2,001年10月31日

 

ニュージーランド労働党政府が今週決定したGMOの野外試験再開を認めたことに対し、この技術を環境に放すことに反対しているマオリ族が激しい反対をしている。

 

マオリ族の反対を和らげるため、自身マオリで労働党との連立を組んでいるサンドラ・リー保全大臣は、マオリ族の懸念を取り除くように更に変更を加えると約束した。遺伝子がある種から別の種へ移行して行くのは、「常識的にマオリにとっては受け入れられないことで、命の冒涜だ」と感じていると認める。1852年にマオリと結ばれたワイタンギ条約に政府が違反しないように変更を加えると約束した。 組み替え体への懸念は、これから設置される生物倫理委員会で検討することになるだろうとリーは話す。 

 

昨日、へレン・クラーク首相が発表した、政府の遺伝子組み換え作物の圃場試験の再開許可に対する論争について、「医学、バイオテクノロジー、産業政策に遺伝子情報をもたらす科学に背を向けるわけには行かないが、同時に、遺伝子組み換えの懸念される点についても無視できない。」 とクラーク首相は言う。

 

この決定は来年の遺伝子組み換えトウモロコシ、ジャガイモ、砂糖大根、豆、パインの野外試験を許可するもの。 政府は、遺伝子組み替え体の商業許可については、「人や動物への直接の恩恵がある場合を除いて」2年間禁止とし、倫理、社会、環境への懸念について更に時間をかけて検討するという。

 

遺伝子組み換え推進ロビー団体、生命科学ネットワーク(SLN)は、政府の決定を歓迎して、「政府の発表で付けられた条件は、以前、環境リスク管理局(ERMA)で検討した範囲のもので新たなものは一つもない。 ERMAが今後とも不合理な感情論ではなく科学に基づく決定をするよう期待する。」とLSN会長ウィリアム博士は話す。

党員集会から退席したマオリ出身の労働党議員9名は、昨日「自然が弄ばれないことに特に注意している。」、「科学を否定するものではないが、環境中に遺伝子組み替え体を放つことは受け入れられない。 短期的商業利益のために社会、文化、環境の完全性を失う危険性を感じている。 遺伝子を植物、動物、人間の種を越えて移すことは、人の生存を脅かすものだ。(マオリ)は様々な生命の形を認めるもので、相互に貢献しあう事を認めるものだ。 生命のあり方に干渉することは無礼で、文化の傲慢さの更なる一面を示すものだ。」という声明を出した。

 

今年始め、マオリの全国団体は、14ヶ月目に入った遺伝子組み換え王立委員会に対し、全ての生命特許の禁止を支持すると伝え、「バイテク多国籍企業がGM実験をするためにアオテアロアに入ることを阻止し、自由貿易交渉を」止めるよう要請した。

   

また政府がGM食品の輸入を将来のために止めて、ニュージーランドが有機農産物の生産国に変わるための投資をするよう要請した。

 

王立委員会(遺伝子組み換えの政策と規則についての諮問機関)の最終報告は7月末に提出されている。 その中で、マオリ族の根強い懸念は認めるものの、彼らの提案の殆どを拒否している。

 

反対は、マオリ族だけではない。 草の根キャンペーンは、数万人を動員してニュージーランドがGEフリー政策を宣言するよう求める集会を開いている。

 

一方GM推進派は、ERMAが採用する個別の評価方式を支持しているが、これにはグリーンピースは懐疑的だ。 「我々はERMAを全く信用していない。 ERMAは申請のあった野外試験を全部承認しており、殆ど力のない監視機関だ。 政府は、野外試験と商業的解除をわざわざ分けているが、国民への責任と環境の健全さを酷く損なうものだ。」とグリーンピースGEキャンペーン担当アネット・コッターはいう。

 

労働党政権は、議会での多数を獲得するために緑の党に頼っている。 緑の党は政府の決定に強く反対しており、クラーク政権は支持基盤を失う危険を冒している。 緑の党の党首ジャネット・フィッツサイモンは、2002年の11月に予定されている選挙の前にGEを重要案件にすると断言した。

 

「政府は、マオリと環境保護者の支持がなければ選挙に勝てない。 今回の決定は、両方とも遠ざけてしまった。」とコッターは話している。

 

 

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