農業補助金につぶされる

 

アマドゥ・トゥマニ・トア(Amadou Toumani Tour)(客員コラムニスト)及び

ブレーズ・コンパオール(Blaise Compaor)   (客員コラムニスト)

ニューヨータイムズ

20037.11

(訳)芦川 誠三

 

長年のグローバル化の波を受けて、我がアフリカ大陸も世界の注目を受けるようになったのは心強いものである。経済的なものであれ、その他のものであれ国際的な支援が貧困と病気との闘いを後押ししてくれるのは間違いない。しかし、何にもまして必要なのは、自らの運命を自らの手中にとらえることであり、アフリカが完全に世界の一員になるのは、自立的な経済の成長発展によってのみ可能である。

 

2001年、新アフリカ経済開発協力機構の設立により、アフリカの指導者達は良質な行政と市場経済の原則に従う約束をした。ここで、何よりも大切なのは、世界貿易の仲間入りを果たすことである。アフリカの最も開発の遅れた2つの国、ブルキナ・ファソおよびマリの大統領として、我々は多角的貿易機構に参画し、その権利と義務を行使することを切望している。その市場参加のチケットは綿花であり、その生産は、何百万という住民の生活のみならず、西部・中央アフリカの経済発展に欠くことのできないものである。綿花は、ベニンやチャドもそうであるが、我々2カ国の輸出歳入の40%以上、GDP10%以上を占めており、農業維持はもちろん、社会基盤整備にも最重要なものである。

 

我々の国のこの最重要経済領域が、金持ち国における綿花生産者への農業補助金により、今、危機にさらされている。国際綿花諮問委員会によれば、2001年から2002年における綿花補助金は、58億ドルにのぼり、これは、同時期の綿花貿易額にほぼ等しい金額である。このような補助金は、世界的な過剰生産を招き、価格をゆがめ、貧しいアフリカの国々から、唯一の貿易上の強みを奪うものである。綿花は、我々経済にとって重要であるだけでなく、唯一輸出できる農産物なのである。

 

アフリカ産の綿花は、最高品質を誇り、且つ、人的労働に頼りながらも、先進国より50%も安いのである。これに比べ、富裕国の綿花は、品質は劣り、大規模機械化農法で生産されるので、雇用にはほとんど貢献せず、且つ、環境問題も引き起こしているのに、綿花が、他のもっと儲かる穀物に置きかえられているのである。2001年から2002年の1年間に、アメリカの25000綿花農家は、約30億ドルの補助金を受け取っているが、これは、200万人が綿花で生活しているブルキナ・ファソの全経済産出額を上回るものである。しかも、アメリカのこの補助金は綿花農家の10%に集中投入されており、この比較的富裕な2500農家への支払いが、予想もされぬことであるが、しかし間違いなく、西部・中央アフリカ1000万人の窮乏化をもたらしているのである。なんとかしなければならない。

 

ベニン、チャド両国の要請を受けて、我々は、9月、メキシコのカンクンで開かれたWTO に、先進国における綿花農家への不公正な補助金の問題について討議するよう提案した。我々はまた、暫定措置として、最未開発国に対する、補助金でこうむった輸出損失補償についても提案した。我々の主張は簡単である。豊かな大国にとって関心のある産物に対してと同じように、貧しい国が明らかに比較優位に立つ産物にも、自由貿易ルールを適用する、それだけのことである。

 

世界は、公平な土俵をという我々の願いを無視しないと確信する。WTO は、それは先進国の問題として付託されるべきであるとし、アメリカは、自由市場経済が世界のすべての国に最適の機会を提供するものであると言明した。この原則をカンクンにおける主題にしようではないか。

 

(アマドゥ・トゥマニ・トア と、ブレーズ・コンパオールはそれぞれ、マリおよびブルキナ・ファソの大統領である)

(この資料は、アメリカ合衆国コード17綱・107章にもとづき、研究・教育目的にのみ頒布されるものである)

 

 

 

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