トラブル続きのモンサントがヨーロッパでのGM推進をスケールダウン

 

ザ・ガーデイアン

02年8月20日

デヴィッド・テーサー記者(ニューヨーク)

訳 河田昌東

 

アメリカのモンサント社は同社の遺伝子組換え製品に対する広範な反対に直面し、ヨーロッパでの販売認可を勝ち取るまでに少なくともあと3年はかかる、と認めた。GM作物反対キャンペーンの標的になった同社は、ヨーロッパでは2005年までは進展を見込めないという前提で仕事をしている、といった。ヨーロッパでは1998年以来、危険性にたいする一般の懸念が原因で新規のGM作物の認可は停止したままである。ヨーロッパの消費者は狂牛病を含むさまざまな食品に関する恐怖から不安になっている。モンサントも大豆生産のキー国であるブラジルがGM作物栽培へのワシントンからの圧力に抵抗するよう決めたことを受けて、2005年まではブラジルでも進展はないだろうと予想している。

 

この数日間、英国の大臣たちはアメリカとアメリカのGM産業界からGM製品を受け入れるよう強烈な圧力を受けている、といった。GM作物はアメリカの農地でたくさん植えられてきた。先週放送されたBBCラジオ4チャンネルの「今日のプログラム」の中で、大臣のエリオット・モーレーは「この国でGM作物と種子を認可するようにという巨大な国際的圧力がバイテク企業からかかっている。それは政府やWTO(世界貿易機関)、を通じて行われておりEUにプレッシャーになっている」といった。

英国の環境大臣マイケル・ミーシャーは昨日、英国はアメリカによるGM作物受け入れ要請をいそいそと受け入れることはないだろうと言った。モンサント社ベルギー支社長のヘンドリック・ベルフェイリーはフィナンシャル・タイムズに対して、2002年度の収益が期待より3分の1少ない見込みであるという最近の警告に従い、ビジネスの成長についてはもっと現実的になる必要がある、と話した。「我々はヨーロッパでは2005年までは成長はないと予想している。見込み違いで売上が少ないよりは予想を少なく見積もったほうがいい、ということを我々は学んだ。私はがつがつ稼ぎたくない、それは苦痛だ」と彼はいう。

 

英国はバイエル社の子会社アベンテイス社から提供されたGM菜種の試験栽培を国内で3年間行っている。この試験栽培はGM種子の環境への影響を調査するものだが、政府と同社の契約の一部を正式に再確認する目的のためでもある。しかし、この試験用GMナタネの種子が抗生物質耐性を含む未承認の種子で汚染していることが先週判明し、反対者たちがこの試験をすぐに中止するよう求める騒ぎになっている。

ミーシャー環境大臣もこの試験で環境への広範な影響がはっきりするわけではないことを認めた。このGMナタネの商業栽培が許されるかどうかはEUレベルに委ねられるが、フランスやギリシャを含むいくつかの国の反対は強固である。 それにたいして、ワシントン政府とモンサントのような企業がヨーロッパでGM作物とその種子を売ることが出来なければ貿易戦争だ、と脅しをかけている。

GM栽培の世界の全面積は1996年の170万ヘクタール(420万エーカー)から、2001年には5260万ヘクタール(1.31億エーカー)にまで広がった。その3分の2はモンサントの除草剤耐性GM大豆である。財政的圧力下にあるモンサントはGM食品のメリットに疑いを持つ人たちを説得しようと躍起である。この論議の的の企業は最近、公債市場で6億5千万ポンドの資金を調達しようとしたが、3億9千万ポンドしか借りることが出来なかった。 同社はアメリカでのラウンドアップ除草剤の特許が切れて、除草剤の販売低下にも直面している。ラウンドアップはモンサントの収益の45%を占める。 モンサントは、アメリカの医薬品メーカー、ファーマシア社が2年前に買収したばかりの同社を先週手放したことでさらに弱体化した。 モンサントはそれでも資金繰りの危険はないと否定している。 長引くGM作物への疑念は、最近ザンビアが旱魃に見舞われている南アフリカ各国と歩調を合わせて、アメリカからのGMトウモロコシの受け入れを拒否したことでさらに鮮明になった。この荷物は食糧危機を回避するための国際的緊急援助の一部であった。

 

101年のビジネス

1901年 モンサント化学会社はセントルイスでサッカリンとカフェインを製造する会社

として出発。

1957年  デズニ―ランドで未来のプラスチック・ホームを建設。

1960年  除草剤を作る農業部門を発足。

1966 年 人工芝アストロターフを作る。

1982 年 遺伝子組換え植物細胞で歴史的出発。

1993年  最初のバイテク製品の販売認可を得る。

1997年  バイテクに焦点を当てるために化学兵器販売。

1998年  EUが新たなGM製品のモラトリアム。

1999年  消費者の反対でシェア低下。

2000年     ファーマシア社とアップジョン社との3社合併。人間と動物の遺伝子を食物連鎖に持ち込まない            約束。英国が(モンサントの)GMナタネの3年間試験栽培開始。

2002年 インドが3月にGM作物認可。4ヵ月後、EU議会がGMに厳しい表示案を通過。

モンサントは再び単独の企業に。

 

 

戻るTOP