モンサントのウェブ操作−舞台裏の攻防

食品チェーンにGM南京錠をかける企業とのネット戦争

ジョージ・モンビオット

2002年11月19日

ザ・ガーディアン

訳 山田勝巳

 

遺伝子組み換え食品が「毒」だというザンビア大統領は、私の知る限りでは間違っている。 まともな安全性試験はまだ行われていないが、在来のものよりも人の健康に悪いという決定的証拠もない。 飢えかGMを食べるかという選択を迫られたら、私ならGMを食べる。

 

組み換え食品の真の問題は、何年もこの欄で指摘してきたが、バイテク大手企業が我々の食べ物に錠をかけることにある。  遺伝子やそれにまつわる技術に特許を取って、我々が食べるものに完璧な支配を築こうとしている。 貧しい国の食糧安全保障にとってはとんでもないことだ。 これが、反対者が激しく抵抗している理由だ。 

 

ザンビア、ジンバブエ、マラウィのどこも今回の 飢饉に苦しんでおり、アメリカ国際開発局(USAID)にアメリカからのGM作物を食べるより方法がないと言われている。 これは全くのうそだ。 これから3月までの間に200万トンの緊急食糧援助が穀物の形で必要だ。 国連食糧農業機構は、116万トンの輸出可能なトウモロコシがケニヤ、タンザニア、ウガンダ、南アにあると言っている。 ヨーロッパ、ブラジル、インド、中国には余剰蓄積が何億トンもある。アメリカでさえ50%以上の収穫がGMフリーのものだ。 南部アフリカやエチオピアその他の世界で飢えている所にも、一切GMを使わずに食べさせることが出来るのだ。

 

しかし、アメリカは大手の寄付国家の中でもお金ではなく現物で出す点で特異だ。 他の国は、世界食糧計画にお金を払い、それで出来るだけ地元で購入する。 この方が安く、地元経済にも良い。 USAIDは、自分の穀物を出来るだけ出そうとする。 ウェブサイトで自慢するように、「アメリカの海外援助の主たる受益者はアメリカであり続けるのだ。 ほぼ80%のUSAID契約と助成金がアメリカ企業に行く。 農業商品の大口市場を作ってきた国際支援計画が、アメリカの工業製品の新たな市場を作り、何十万という仕事を作って来た。」のだ。

 

アメリカの食糧援助計画は、アメリカ農民に大規模な隠れた補助金を与えている。 しかし、最近のグリーンピースの報告が示すように、農民だけが受益者というわけではない。 USAIDの目的の一つとして「GMを地元経済に組み入れる」事がかかれている。 今年初め、途上国にバイテクを持ち込む一億ドルの計画を発足させた。USAIDの「トレーニング」と「意識向上」プログラムは、「シンジェンタ、パイオニア・ハイブレッド、モンサント」のような企業に貧しい国へ「技術移転」する機会を与えるものだとウェブサイトは明かしている。 飢饉がこの計画を加速することになる。 南部アフリカへの輸出の一部が来年の収穫のために植え付けられるだろう事は承知の上だ。汚染が広まってしまえば、これらの国もバイテク禁止を保てなくなるだろう。  

 

これに障害となって立ちはだかるのは、地元の抵抗と環境団体の抗議だけである。 ここ数週間、モンサントはこれへの対策を始めている。

 

6ヶ月前、メアリー・マーフィという名のでっち上げ人物がGM作物に反対する科学者や環境団体を糾弾するメッセージをインターネットのリストサーバーに雪崩のように流していたのをこの欄で暴いた。 これらのメッセージを流していたコンピューターはバイビングというモンサントの下請け広告会社のものであることが分かった。 バイビングの社長は、ガーディアンに対し、影で動き回っていたことを激しく否定した。 だが、オンライン広告担当者は、BBCニュースナイトで、メッセージの一つは「バイビングの下請け」労働者からのものか、我々のサービスを利用している客のものであることを認めた。 しかし、バイビングは、自社のコンピューターがそのような活動に使われたことは全く知らないという。 

 

これが認められたことで、最初にこの話を探り出した研究者ジョナサン・マシューズは、気になっていたメールを再度見てみることにした。 彼は、特にネット上で、アンデュラ・スメタセックという名で著名なバイテクリストサーバーへ送られた一連の毒舌メッセージに関心を持った。 スメタセックは2000年に書き始めている。 彼女/彼は、GM反対者をテロ行為だと繰り返し非難している。 グリーンピースがGM食品の脅威を根拠もなく自分達の財政環境をよくするために広めていると言い募った手紙が、グラスゴーヘラルドに掲載された時は、グリーンピースが誹謗で訴え勝利している。

 

スメタセックは、別のメッセージでは、始めロンドンに住んでいるといい、その後ニューヨークに住んでいるといっている。 ジョナサン・マシューズは、手に入る資料を全て調べてみたが、どちらにもそのような人物が住んでいた形跡がなかった。 ところが、先月、彼の技術に詳しい友人が面白いことを発見した。 最初のも含む3つのメッセージが、インターネットプロトコルアドレスが 199.89.234.124であると分かった。 このアドレスは、gatekeeper2.monsanto.com.のサーバーに割り当てられたものだった。 モンサント社の物だったのだ。

 

モンサントがGM食品をヨーロッパに押し付けようとして失敗し破産しかけた1999年、モンサントの通信部長フィリップ・エンジェルがウォールストリート・ジャーナルに「やり方がおとなし過ぎたかもしれない。 山火事を消すためには、他から火をつけることが必要な場合もある。」と話した。 モンサントは、インターネットが抗議を「沸きあがらせる」のに役立っていたことを認めた。

 

昨年暮れ、元モンサントのやりすぎインターネットの理事だったジェイ・バーンは、彼がモンサントで使った手口を他の数社に説明した。 彼が始める前は、いかにGMサイトの検索トップがGM反対だったかを示した。 彼が入り込んでからは、トップサイトは全て支持サイトに変わった(内4つはモンサントの広告会社バイビングのものだった。)。 「インターネットはテーブル上の武器だと思えばよい。自分が手にするか、相手が手にするか、いずれにしてもどちらかがやられるんだ。」 と語りかけた。

 

バーンは、モンサントにいるときはインターネットニュースレターWOWに対し、ウェブ上でバイテク論議に「自分の時間と努力を惜しまずに参加」したと話している。 AgBioWorldサイトは、彼が「モンサントがまともに発言できるように」したものだという。 AgBioWorldは、スメタセクが作戦活動を始めたサイトだ。 

 

バイテク企業は、企業活動が食糧安全保障と消費者の選択を脅かすことが反対者らによって曝露される限り新たな市場は征服できないことを認識している。 USAIDと共に活動して新たな領域を開拓しながら、反対者への攻撃を裏でやっていたようだ。 製品は、毒ではないかもしれないが、やり方はどうだろうか?

 

 

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