モンサントの盛況は、強度のラウンドアップ依存

 

ニューヨーク・タイムス

ディビッド・バーボーザ

2001年8月2日

訳 山田勝巳

 

セントルイス発: モンサントは5年前、旧来の化学事業を放出して、遺伝子操作作物を開発するために生命工学を使う、「生命科学」会社として新しい名前を付けたとき未来に向かって突進した。 

 

その展望の下に何十億ドルも (その一部で組み換えコーン、大豆、その他の作物を作り出した)注ぎ込んだ結果、モンサントは繁栄しているが、この繁栄は、アメリカで広く受け入れられ、ヨーロッパや日本で非難されている組み換えスーパー作物の生産の広がりによるものではない。 何がモンサントを健全にしているかというと、20年以上前に開発した除草剤ラウンドアップである。 これが農薬の中で最もよく売れており、去年は28億ドルと他製品を5:1で引き離している。

 

モンサントの収益の5割を占めるラウンドアップの成長が、海外でのGM作物反対や他社が痛手を受けている農業経済の低迷にも関わらず、第二四半期にしっかりした利益を計上している理由だ。 モンサントは、専門家が鮮やかな戦略と呼ぶ、特許が切れる数年前に値段を下げ、遺伝子組み換え作物を早期に立ち上げるために除草剤とGM作物をセットにする戦略でラウンドアップの地位を維持、向上した。 「これは価格政策の標準的で教科書的やり方だ。 1%下げる毎に2.5―3%販売量が増える。」と話すのはモーガン・スタンレィの分析家レスリー・ラビッツである。

 

それでもモンサントには課題がある。 ラウンドアップの低価格と地球規模の占有は、成長の予想を難しくする。 内外の消費者や当局が組み換え作物を拒否した場合、モンサントとその何十億ドルもの投資が大打撃を受ける。だが、この予測に対してラウンドアップで回避しようとしている。 もしバイテクが強い打撃を受けなければ、モンサントは、非選択性除草剤とバイテク種子の市場で80−90%占有し、農業界では最も利益率の高い会社になる。 この組み合わせは、それぞれの製品を強化してランドアップ除草剤でやったように、特定の品種でモンサントの種子が支配的になるかも知れないと専門家は言う。

 

競合他社もラウンドアップの成長と規模には驚嘆している。 「2億ドル製品が大ヒットのこの業界では、明らかに大ヒットだ。 医薬品業界では10億ドルが大ヒットだが、これは100億から150億ドル製品になることが見込まれる。」とダウ・アグロサイエンスの除草剤担当副社長ジェローム・ペリベーアは話す。

これが、専門家がモンサントの今後数年の2桁成長率を見込む理由だ。 これまで、研究費と1990年に種子会社を買収した負債で、利益が圧縮されていた企業にとって、これは目を見張る経常黒字になるだろう。 約60億ドルの負債は、1999年のファーマシアとの合併の一因となった。 ファーマシアはモンサントの医薬部門サーレとその関節炎薬セレブレックスを吸収した後、投資家がモンサントはファーマシアの利益を食うだろうとの苦情に従って、モンサントを別会社として独立させた。その後、モンサントが初めて10月に提示した株価は、ほぼ82%急騰し、以前モンサントを85%所有していたファーマシアのシェアは19%下がってしまった。

 

投資家は2つの傾向に買いを入れた。 先ず、バイテク種子が世界中で8000万エーカー作付けされていること、そして、ラウンドアップが特定の雑草を標的にしない除草剤の世界市場で80%のシェアを持っているからだ。 その上、 モンサントが価格を下げてシェアを維持し、別の用途を見いだして防衛したため、殆どの植物を枯らすグリフォサート除草剤ラウンドアップのノーブランド品を作ろうという競争相手が出なかった。 こうして、競合他社が客を引きつけ持ち去ったかも知れない利益を減らすことによって忠誠を得たのだ。 例えば、1996年にモンサントは、ラウンドアップで枯れない遺伝子組み換え作物を売り出した。 ラウンドアップ・レディと名付けられた作物は、農家が除草剤を圃場に散布しても、作物を殺さずに雑草を殺すことが出来る。 

 

更に、2000年に特許が切れる何年も前に、小売価格を1997年に$44/ガロンだったのを1999年には$34/ガロンに下げており、現在は約28$である。これが需要を掘り起こし、競争を阻止したのだろう。 と同時に、販売量の増加によって値下げ分を相殺したので、利益は落ちなかった。

 

 「1994年から2000年の期間を見ると、価格は45%下がっているが、粗利益は90%上昇している。」とここに本拠をおくモンサントの営業副社長ヒュー・グラントは言う。

 

ラウンドアップは、保全耕起という種まき前には除草せず耕さないシステム(農家は除草剤を撒いて種を蒔けばよい)を導入するのを加速した。 コンティル(保耕)として知られる保全耕起は、労働コストを下げるばかりでなく、土壌浸食を少なくし、燃料を節約して農業機械の消耗を減らせる。

 

この耕作方法は、世界中の約3億エーカーで使われており、その内2/3でラウンドアップが使われている。 モンサントは、アメリカで特許が切れたら、競合他社にグリフォサートを供給する決定をしている。 価格の値下げとモンサントの取扱量(1億6000万ガロン/年の製造量)は、競合他社にとって工場を造ってまで競争するには経済的に困難なものである。

「モンサントは、有効成分をライセンスするから買うなり、再包装するなり好きなようにすればよい。工場を造ったって良いと言ったんですよ。 そう言われた会社の殆どが、乗りましたね。」とベア・スターンの分析家ジェフリー・ペックは言う。

 

 

モンサントは、自分で作らずにモンサントから有効成分を購入する会社と当局の許可を共有することで優位を拡大した。 これで政府の承認が迅速になった。

世界最大の農業化学会社シンジェンタ(去年ノバルティスとアストラゼネカが農業化学部門を統合して出来た)はグリフォサアート成分を作り始めたが市場占有率は小さい。 もう一社のダウ・アグロサイエンスは、10%のグリフォサート販売があり、第2位に甘んずる目標を立てた。

 

モンサントと法廷で争っている会社もある。 デュポン社は、モンサントをラウンドアップとラウンドアップレディ作物をセットしにしていることと、競争相手を排除するために、報奨金や資格を使っていることは、独占禁止法に触れるとして2つの訴訟を連邦裁判所に起こしている。

 

「モンサントがディーラーや商社に掛ける圧力のため、ラウンドアップより安いのに、競争相手が自分のグリフォサートを売るのが非常に困難だ。」とデュポンの弁護士ジョン・ハイドレイカーは話す。 モンサントの広報担当はデュポンの裁判は「全く得るところがない。」という。 何れにしても、モンサントはいつでも除草剤の値段を下げて、それをラウンドアップ・レディ種子で補えるのだから、値段で戦うのは難しいと専門家は言う。 特許で保護されたこのような種子は、アメリカの7000万大豆エーカーの約70%で使われている。

「モンサントは除草剤からかなりの額を引き、その分を種に上乗せしているのだろう。 このため多くの企業が除草剤市場から閉め出されている。」とオレゴン州コーバリスの国際除草剤耐性雑草調査のイアン・ヒープは話している。

 

問題はこのような戦術が今後も元が取れるかである。 専門家は取れる方に賭けるが、障害もある。 保全耕起を取り入れる農家が少なくなりうる。 またラウンドアップも飽和状態になるか、少なくとも大幅な伸びは困難になるだろうと専門家は話す。 業界幹部も「モンサントの現在の問題は、弾力的値段のため量が膨大に増えた。 しかしこの量は減ってくる。 手に負えなくなるのではないだろうか。」とダウ・アグロサイエンスのペリベール氏は話す。

 

それでも、専門家は、モンサントは2年前よりも確実に良くなっているように見えると言う。 ファーマシアが分離してからバランスシートが良くなっている。 事業部をいくつか売却し、コストを削り、バイテク野心を矯めた。 

 

バイテク版の作物を十数個開発する代わりに、コーンと大豆、麦、綿に焦点を絞った。 モンサントは、6億ドルを研究開発に投じており、競合他社を遥かに凌いでいる。 ラウンドアップは過去のものだと認識している。 恐らく今日もそうだろう。しかし未来はバイテクが利益を生み出すものと当てにしている。

 

バイテク種子は、研究と売り出しまでは高く付くが、一旦認可されれば大きな利益を生む。 今年モンサントはバイテク特性(殺虫剤や除草剤耐性を種子に持たせた技術)で約4億ドルの収益を見込んでいる。

 

しかし、ラウンドアップの実力は侮れないと専門家は話す。 「ラウンドアップの値段が下がれば、市場は更に広がるだろう。ラウンドアップは現在も大ヒットしているし、更にヒットするだろう。」とUBSワーバーグの分析家アンドリュウ・キャッシュは話す。

 

 

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