続くモンサントの農民いじめ
ニューヨーク・タイムス
2003年11月2日
種子保存する農民は特許訴訟に
アダム・リプタク
訳 山田勝巳
ツペロ、ミシシッピー発
10月30日 ホーマン・マクファーリング氏は生涯ここで大豆と若干のコーンを栽培してきた。収穫後は種をとっておく。「農家はみんな次に植えるために種を取ってきている。」と話す。
1998年に、マクファーリング氏は1000袋の遺伝子組み換え大豆種子を購入し、いつものように種を保存した。だが、この種はラウンドアップレディと呼ばれ特許があった。彼が、保存種子を蒔いたのを知ったモンサントはセントルイスの連邦裁判所へ特許侵害で訴え78万ドルを勝ち取った。 モンサントは保存種子を蒔くことは海賊行為だと言い、このような裁判や示談で農民から何百万ドルも勝ち取っているという。マクファーリング氏は連邦高裁に上告した最初の人で、特許食品と農業の歴史と共にある慣習をどう調整するか審理する事になる。
高裁の判決でマクファーリング氏61歳が敗訴すれば、彼は破産を余儀なくされ職を失う。「自分で栽培できるものに特許を取るなんてのはおかしい。」モンサントの広報担当ジャニス・アームストロングは、会社は種子開発に何億ドルも投資しており「知的所有権を守って次なる製品を開発する必要がある。」という。農民が種をまた蒔いても良いとなれば、「モンサントは急速に権利を失う。」と高裁での会見で述べた。特許のある種子一袋が次の年には36袋になる。幾何級数的に増えて3年目には5万袋近くになっている。アメリカには大豆農家が約30万軒あり、モンサントが争っているのは一年に100件ほどしかなく、そのほとんどは時を移さず示談で解決しているという。
ここの農民が言うには、モンサントが保存種子の栽培を調査するやり方は、強引であくどく高圧的だという。「ツペロの夜警を雇えるだけ雇って、調査のために我家の道路向かいに地所を買った。飛行機代、ヘリコプター代、探偵、弁護士、全てに大金を払っている。」と話すのは、同じく種子保存して栽培していると訴えられているミッチェル・スクラグス54歳。「判事に対しお金の問題ではないといった。俺を破滅させて他のものの見せしめにしたいのさ。」と自分の農場でコットン・ジンを3本空けながらまくし立てた。
法律専門家は、マクファーリング氏が通常の契約に署名しているので、モンサントが控訴審で勝訴する可能性が高いという。彼は、契約を読まなかったと言いモンサントから135,000jの請求書を受け取るまで法に触れる事をしたとは考えていなかった。1000袋の種子に24,000jを一袋あたり6.50jの技術料を含めて払ったのみ。
契約書には「1シーズンのみで種子は保存してはならない。」とかいてある。
農民の弁護士等は、裁判で有効な弁護を考えつこうと最大の努力をした。スクラグス氏の場合は特許自体の有効性を攻撃して独占禁止法違反であることを示そうとしている。スクラグ氏の場合技術契約に署名していない。それでも彼は不利だと専門家はいう。保存種子を植えるということは、生命特許を認めた最高裁の二つの判例から間違いなく特許侵害になるのだ。
マクファーリング氏もスクラグス氏もモンサントの商品を使う事を裁判所命令で禁じられている。在来の種で全く問題はないのだが、よく効く除草剤が他にはなかなか見つからない。「あの種を保存するのは神の与えたもうた農民の権利だ。土から命を掻き取るのが農民なんだ。」とスクラグス氏はいう。