ミシガンの若者2人がBSE症状で死亡
ジョン・ストーバー解説
訳 山田勝巳
添付の情報を最近開かれた神経学会から入手
孤発性のCJDが蔓延する場所で、同時にこんなに若い人が二人も死ぬのは異常だ。 イギリスのBSEが人間に移行すると分かったのは、孤発性のCJDと思われていたものが10人の30歳以下の若人に確認された1996年だった。 それまでは孤発性CJDは稀な病気で、60代に発病するのが普通といわれてきた。 今のところ人の狂牛病(現在は新変異型CJDと呼ぶ)でイギリス人100人以上が犠牲になっており、その数は3年毎に倍になってきている。
何故この二人の若人がCJDを発病したのかは誰も分からない。 しかし、驚きの悪いニュースだ。アメリカが長い間首を突っ込んできていた証拠だ。
同じ南東ミシガンの病院で同時に死んだこの若人が鹿肉を一度も喰ったことがないという発表は信憑性がない。 私はウィスコンシンに49年暮らしてきたが、ミシガン同様鹿が非常に多く、狩が盛んだ。鹿肉のソーセージが出てチーズとクラッカーで食べる。 「何のソーセージだ?」と聞くものは1人もおらず「うまいソーセージだ。」というのが普通の所だ。
この若い人達のCJDによる死亡は、これまで気付かずに来た普通の出来事のように済ますのはとんでもないことだ。 食肉業界の「この国ではあり得ない、この国ではあり得ない」という念仏ではなく、政府の大がかりなTSEの監視、予防、研究が必要だ。
ミシガン州の若年者の孤発性CJD二例(神経学会での研究報告)
アマンダ・C・ペルティエ、ペイシェンス・H・レディング、カレン・クルイン、シャリン・サクライ、
アーマッド・ベイドウン、ジョナサン・エドワード、ピエルイギ・ガンベッティ、
ノーマン・L・フォスター、アン・アーバー、ミシガン;クリーブランド、OH
目的: ミシガンで二人の若者に同時発生した孤発性CJDの臨床的、病理学的、そして一般所見を記す。
背景: 孤発性CJDは60代、70代に発生するもので、30歳以下で発症するのはBSEか人成長ホルモン(HGH)由来の下垂体抽出物に曝される以外では、殆ど報告がない。BSEはアメリカでは発見されていない。
デザイン/方法: 症例報告(省略)
結果:
26才と28才の若人は互いに会ったことがなく、その生涯をミシガンで暮らしたが、急速進行性の痴呆を発症し、同時に当医院で検査を受けた。 どちらもBSE国を訪問したことがなく、HGH(人成長ホルモン)も受けておらず、鹿肉・ヘラジカを食べていないし家族にも痴呆歴がない。 最初の患者は2ヶ月の失語症、引きこもり、記憶障害があった。 入院時に行われたEEG(脳波計による診断)では、脳波にwaxingとwaningが見られ波形がなだらか(wave
discharge)だった。 非痙攣状てんかんの治療をしたが入院中に痙攣性に変わった。 発作は複数の抗痙攣薬にも関わらずミダゾラム昏睡もある難治性で治療に反応しなかった。 EEGはより断続的になり、投薬が減っても反応が良くなることはなかった。
脳の生検とその後の死後検査では、発症後5ヶ月の脳は海綿状の変成をきたしていた。スクレイピー・プリオン蛋白質(PrPsc:異常型プリオン)が免疫組織化学で明らかにされているように斑点状に分布していた。 遺伝子分析と免疫ブロット法では、この患者は孤発性CJDのMM2サブタイプだった。キナクリンによる治療は効果がなかった。
二人目の患者は、10ヶ月間の記憶障害、不適切行動、暴力発作、仕事の困難を経ていた。 診断では動作緩慢、硬直が見られた。 EEGでは周期的平坦(discharge)はなくCSF(脳脊髄)蛋白質14−3−3は陰性だった。海綿状変性が見られた脳の生検後に彼は驚愕性ミオクローヌス(筋痙攣)を発症した。 免疫ブロット法と免疫染色法でPrPscタイプ1の異常プリオンが確認された。 二人の患者とも、T2−と拡散偏向画像MRIで基底核と大脳皮質に強い信号の出る異常が見られた。
結論:
これらの症例は、孤発性CJDをこれまでよりも領域を広げて若い年齢層や非痙攣性癲癇(non-convulsive
status epilepticus)をも含める必要を示している。 南東ミシガンで二人の患者が数ヶ月の間に現れたことはこれまで考えられていたよりもずっと早い時期に始まったCJDが多いことを示している。 あるいは、他に認識されていないリスク要因があるのかも知れない。 特有のEEGやCSF異常がなくても進行性の行動と認識異常を伴う若い人のCJDを考慮することが重要だ。
この研究はNIH助成AG14359と国立プリオン病病理調査センター助成CCU515004及びミシガンアルツハイマー病研究センター(NIH助成P50-AG871)によって支援を受けている。
キャシー・ストーン
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