NAFTA委員会、メキシコへのGMコーン輸出は慎重に、報告書発表を抑える米政府
04.10.2
今年4月、北米自由貿易協定(NAFTA)付属の北米環境協力協定(NAAEC)にかかわる個別問題での決定に意見を与える共同諮問委員会(JPAC)が、メキシコへの遺伝子組み換え(GM)コーンの輸入のモラトリアムを勧告したと伝えた(⇒NAFTA委員会(JPAC)、メキシコへのGMコーン輸入モラトリアムを勧告,04.4.14)。JPACは、カナダ、米国、メキシコの各国政府によりそれぞれ5名ずつ指名される15人で構成される独立委員会である。この勧告は、3月11日にメキシコで開催された環境協力委員会(CEC、環境法執行状況を調査・報告するNAFTAに関連した監視機関)のトウモロコシと生物多様性に関するシンポジウムで出された意見を反映したものとされ、CECの最終報告書は6月21-23日のCEC会合前に発表されるとされていた。
ところが、この最終報告書が出されたというニュースはまったくなく、どうなったのかと気にかけていたのだが、9月29日の”シカゴ・トリビューン”紙の報道で、漸くわけがわかった。著名な科学者や政策専門家の手になるこの報告書は、米国からメキシコに大量のGMコーンを輸出する貿易政策に対し、最初の段階での製粉を含む用心深さを要請している。GM食品の安全性をめぐる世界の論争に影響を与える可能性もあるという。CECは先週、この報告書を米国・カナダ・メキシコの政府に手渡した。これら政府は、これを公表すべきかどうか、60日以内に決定しなければならない。だが、ブッシュ政府がこれを握りつぶそうとしている恐れも出ており、大論争が起きているのだという。
環境団体は、米国政府当局者が報告を包み隠すようにCECに圧力をかけていると言う。これら団体は、少なくとも農業州の投票が結果に重大な影響を及ぼす11月の大統領選挙まで、そして恐らくはEUのGMOモラトリアムに対するWTO提訴の結果が出るまで、報告書発表は先延ばしされるだろうと怒る。専門家委員会の議長を努める国立メキシコ自治大学の著名なJose
Sarukhan生態学教授は、報告書を独自に発表することを他の委員たちと協議しているという。
政府当局者は圧力をかけていることを否定、米国環境保護庁(EPA)のスポークスマンは、勧告が完全に”科学”に基づくものであることを望み、60日以内の決定のルールは「十分に柔軟な」ルールだと言う。
報告書案は、「米国からの輸入コーンはメキシコに入ったときに直ちに製粉されるべき」と勧告、これは、メキシコ農民が栽培できず、組み換え遺伝子が拡散しないように保証するためだと述べる。しかし、米国当局者は、法外に高くつき、重大な貿易障壁になると言う。
米国は今年、630万トンのコーンをメキシコに輸出すると予想されており、大部分は中西部のアーチャー・ダニエルズ・ミドランド(ADM)社などにより輸出されるもので、その半分はGMコーンと言われる。ほとんどは家畜飼料となり、栽培や人間の消費のためには使われない。米国穀物委員会のメキシコ代表は、米国コーンの輸入が止まれば価格が崩壊、シカゴ取引所に甚大な影響を及ぼすと言う。
だが、食糧援助や輸入でメキシコに入ったGMコーンが農民により種として播かれ、原生コーンの世界的中心地で遺伝子汚染を引き起こしている事実は、既に多くの研究が明らかにしている。
CECは、発表の遅れについて、コメントを拒否した。
報告の起草者は、彼らの科学的データに対する批判を一蹴している。議長によると、報告書は、僅かなマイナーな訂正を除き、6月には最終版が出来上がっており、起草者たちは結論の変更は受け入れなかった。報告書の勧告についてどんな議論があったかは明らかにしていないが、委員会はメキシコがGMの扱いにおいて「予防原則」を採用すべきことに合意した。
彼は、「真の安全のために」、現在は存在しないメキシコにおけるリスク評価と監視システムが必要だと強調、他方、GM技術はメキシコがマスターすべき極めて重要な技術で、どんな遺伝子組み換えが、どこで、どのように利用されるべきか、自身で選択する能力をつけるべきだと言う。
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もしそうならば、報告書は、ヨーロッパやアフリカ諸国へのGM作物輸出を阻止してきた様々な懸念を一掃しようとする米国の努力を台無しにする恐れがある。米国政府が発表を遅らせ、握りつぶす挙に出るというのは、環境団体の根拠のない憶測とは言えないだろう。