メキシコの9つの州でGM汚染

 

オアハカ、プエブラ、チファファ、ベラクルズの先住民・農村共同体《CECCAM, CENAMI, ETC Group, CASIFOP, UNOSJO, AJAGI》による記者発表

2003年10月9日

訳 河田昌東

 

メキシコにおける遺伝子組み換えトウモロコシによる汚染は恐れていたよりはるかに悪化している。

    チファファ、モレロス、ジュランゴ、メキシコ、プエブラ、オアハカ、サンルイスポトシ、トラハカラ、ベラスケスの9つの州で汚染が見つかった。

    分析によれば、アメリカではヒトの食用には禁止されているスターリンクという組み換え遺伝子による汚染があった。

    いくつかの植物では、二つ、三つ、四つの異なるGMタイプの、全てがバイテク企業の特許のある組み換え遺伝子の同居が認められた。

    メキシコ先住民と農村共同体はコーンの輸入停止を要求し、GMトウモロコシ栽培禁止の継続と、メキシコ議会で審議中のバイオ安全法案の廃案を求める。

 

オアハカ州、プエブラ州、チファファ州、ベラスケス州、及びメキシコ農村改良研究センター(CECCAM)、先住民伝道センター(CENAMI)、侵食・技術・独占反対運動(ETC)、社会分析・情報・住民訓練センター(CASIFOP)、オアハカ州シエラ・ラレス組織連合(UNOSJO),先住民支援ヤリスカ協会(AJAGI)はメキシコの9つの州における組み換え遺伝子の存在に関する独自の調査結果と結論を発表した。9つの州とは、チファファ州、モレロス州、ジュランゴ州、メキシコ州、サンルイスポトシ州、プエブラ州、オアハカ州、トラハカラ州、そしてベラスケス州である。分析は2000検体の植物について行われ(全部で411個所)、138箇所は農村・先住民共同体からのものであった。9つの州の全サンプルの24%を採取した33共同体で野生コーンに組み換え遺伝子の存在が検出された。第2回目の分析では汚染は1.5%から33.3%だった。汚染があった9つの州では、アベンテイス社(現バイエル社)の特許であり、アメリカでは人間の食用に禁止され今は市場から排除されているはずのスターリンク遺伝子を示すBt−Cry9Cタンパク質と一致する遺伝子汚染が認められた。これらの州では、モンサント社、ノバルテイス/シンジェンタ社のBt組み換えコーン作成に使われた他のBt形質と、モンサントが除草剤耐性に使い特許を取っているCP4EPSPSタンパク質の存在が検出された。

 

分析はAgdia社の商業用検出キットを使い、DAS―ELISAテストで行われた。第一回目のテストはメキシコ国立オートノマス大学の生物学者の技術支援のもと、共同体と各団体自身の手で行われた。第ニ回目のテストはメキシコでこのキットを販売している会社によって行われた。 「我々の分析は、以前カリフォルニア大学バークレー校の研究者チャペラとクエスト 、そして国立エコロジー研究所(INE)と国家生物多様性委員会が発表した野生コーンの汚染を確認した。今我々は汚染がメキシコの少なくとも南部、中部そして北部地域にまで広がっていることを発見した」とCECCAMのアナ・デ・イタは述べた。彼女はさらに「これはわずかなサンプルの分析に過ぎない。にもかかわらず、問題の深刻さを示している。もし、我々が都心から遠く離れた先住民・農村共同体でランダムに採取したサンプルや、彼ら自身がこれまで使ってきた在来種に汚染を見つければ問題はさらに大きくなる。スターリンクの存在は特に深刻だ。なぜなら、これらの共同体ではコーンが食べられなくなってしまうからだ。いくつかの村では2つ、3つ、4つの異なる組み換え遺伝子が同時に入っているのが見つかったが、これは汚染が何年間も続いてきて、小さな農場では汚染したトウモロコシが何世代も交配し、その遺伝子の中に全ての異なる組み換え遺伝子を取り込んだことを示している。」

 

ETCグループのサリビア・リベイロは「最近のアメリカの遺伝子組み換えコーンは、プラスチックや接着剤の生産、精子殺傷や堕胎用のものまであり、これらの汚染が起こればさらに危険性は大きくなる。既にアイオワとネブラスカでは非食用物質生産用のコーンが偶然逃げ出す事件が起きている。法律でGMコーンの栽培が禁止されているメキシコからは遠く離れた場所での汚染だとしても、こうした他のタイプの遺伝子汚染が同様に広がらないという保証はあるのか?」といった。リベイロはさらに続けて「世界中の全てのGM同様、我々が検出したものも全て企業の特許だ。世界中の遺伝子組み換え作物の90%の市場をもつモンサントは、カナダの農民パーシー・シュマイザーを特許侵害で訴え、すでに裁判で勝っている。彼の畑はモンサントのGMキャノーラが勝手に汚染したのに。モンサントと他のバイテク企業による農家を相手の同様な裁判がカナダとアメリカですでに2000件はある。」

ベラスケス州の弁護士エリザベスは次のように宣言した「企業自身が汚染の罪で裁かれるべきだ。我々は彼らの責任を公に宣言し、メキシコの如何なる地域でも彼らが起こす訴訟は認めない。なぜなら彼らこそ組み換え遺伝子で我々のコーンをだめにしたからだ。」

チファファ州の先住民共同体のメンバー、ペドロは被害を受けた先住民・農村共同体の多くの代表が表明した見解を繰り返しのべ、自分達にとってコーンの汚染は最も深刻な文化的ルーツへの攻撃であり、自分たちの基本的な継続性と自立性に対する脅威だ、と述べた。「我々の種子、我々のコーンは、我々の社会の食糧主権の基本である。それは単なる食べ物以上の存在だ。それは我が聖なるものの一部分、我々の歴史と現在・未来の一部なのだ」

 オアハカ州の先住民農家のバルデマル・メンドーサは記者会見で、オアハカと他の州で見つかったGMトウモロコシに奇形が見つかったと報告した。「我々はこれまでもコーンの奇形をたくさん見てきたが、こんなものは今まで見たことがない。 我々のテストでGM陽性と出たあるオアハカの奇形コーンは3個の異なる組み換え遺伝子を持っていた。 村の年寄り達もこんな奇形は今まで見たことがない、と言っている」と言った。彼は又、政府の代表団は自分の村にも来たが 「汚染は心配ない。なぜならいくつかの国で既に5年から6年も使われているが健康に有害だという証拠はないから」と彼に言ったと報告した。 「しかし、我々は我々自身の証拠を持っている。我々は自分達のトウモロコシが健康に良い、という証拠を10000年も持っている。それを遺伝子組み換えトウモロコシで汚染することは、全ての先住民とそれを栽培し何千年も人間の利益のために改良してきた農村共同体にたいする犯罪だ」とメンドーサは言った。

  CENAMIのアルバロ・サルガドはナファツルの詩を引用し、メキシコ社会におけるコーンの役割を強調し言った。「それは我々の命の母。子ども達が同じ家族であるという絆と自覚を与えてくれる。我々が母なる大地を愛し大地を見捨てることがないようにしてくれる。それは我々を人間にしてくれる。我々は喜びをもってコーンを分かち合うが、誰にもその所有者として振舞う権利はない。トウモロコシは我々全てを養ってくれるが、我々は誰もそれを私物化できない。我々は互いに依存しあうがゆえに、コーンを狐やコヨーテ、ネズミから守る。我々はコーンがなくなるのを望まない、なぜならコーンに感謝しながら存在するから。」

サルガドはさらに言った。「汚染は単に一つの問題にとどまらない。それはメキシコのアイデンテイテイーと先住民に対する侵略である。それゆえに我が共同体と組織は問題を自らの手に収めることを決定した。我々は農薬や雑種種子を我々に与える技術者や研究機関、企業がやって来て、心配するな解決策は彼らの種子にある、というのを許さない。我々は自分自身の種子を欲し、汚染から守り、助けようとしているのだ」

AJAGIのカルロス・シャベッツは更に言った。「政府が汚染を知ってから2年間が経ったが、政府は汚染がどこまで広がったか何も調べなかったし、汚染の原因を調べることもしなかった。INE-CONABIOによる研究を除けば、政府の研究結果も農務省が行った調査も公表しなかった。」 シャベッツはまたバイオ安全・遺伝子組み換え生物に関する閣僚委員会で、大臣の代理が「オアハカの汚染は自然の実験室だ」と述べ、国内で遺伝子組み換えトウモロコシの作付け禁止を解除するようにと発言した、と指摘した。「これはGMコーンを生産している5つか6つの多国籍企業を利するだけだろう。その一方で、その上院議員はバイオ法案を議論無しに全ての政党の支持を得て通すと認めた。メキシコの利益を守る代わりに、この法案は我々を汚染する多国籍企業を保護し、予防原則を排除するものである。予防原則はメキシコが広大な国でかつコーンその他の食用作物の原産国であるので最優先の課題である。先住民と小農、全てのメキシコ人を大事にするのでなければ、この法案は現在議論中の閣僚会議で承認してはならない。メキシコで我々に必要なのは、在来種を汚染し、我々を依存させ、我々にとって必要ない遺伝子組み換え作物にノー、と言うことである。」とシャベッツは言った。彼はさらに付け加えた。「小農や先住民からトウモロコシの種を集め、世界で最も大きなトウモロコシの種子銀行を持っているトウモロコシ・小麦改良国際センター (CIMMYT)のような国際機関でさえ汚染の存在を公式に認めることが出来ないばかりか、GMトウモロコシと小麦の開発プロジェクトを立ち上げた。彼らは貧農を助ける、という彼らが自分達の使命だと言っていることさえ裏切ったのだ。」

 

CECCAMのアナ・デ・イタはこの調査に参加した団体や共同体の要求を次のように要約した。

       遺伝子組み換え作物の全面的排除。

       遺伝子汚染を合法化するだけのバイオ安全法案を廃案に。

GM作物の国際的生産者、特にモンサント、シンジェンタ、バイエル、ジュポン、ダウ、そしてBASFを汚染の責任者と認める。我々は彼らの「特許侵害裁判」を排除する。これは農民の権利の直接的侵害である。

メキシコ政府と農水・畜産・食品省(SAGAPRA)は汚染調査の結果を全て公開せよ。

        GMトウモロコシの栽培と環境放出禁止を維持せよ。

        汚染の主たる原因と見られるGMコーンの輸入即時停止。

先住民と農村共同体は彼らが選ぶ団体の支持を得て、GM汚染をストップさせ自然を回復させるために特別な行動を開始する。

我々は全ての先住民と農村共同体が我々のトウモロコシを守る運動に参加るよう呼びかける。

チファファ州、プエブラ州、オアハカ州、トラハカラ州、ベラスケス州その他の州の先住民、農村共同体                    CECCAM (Center for Studies on Rural Change in Mexico)

              CENAMI (National Center to Support Indigenous Missions)

              ETC Group (Action Group on Erosion, Technology and Concentration)

              CASIFOP (Center for Social Analysis, Information and Popular Training)

              UNOSJO (Union of Organizations of the Sierra Juarez of Oaxaca)

              AJAGI (Jaliscan Association of Support for Indigenous Groups)

 

野生コーンの遺伝子汚染テスト:結果の要約(2003年)

分析は、138の農村先住民共同体から採取した2000検体(411個所)について行われた。チファファ州、モレロス州、ジュランゴ州、メキシコ州、サンルイスポトシ州、プエブラ州、オアハカ州、トラハカラ州、ベラスケス州の33の共同体(全サンプルの24%)で、在来コーンに組み換え遺伝子の存在が認められた。 この調査に参加した全ての共同体は、キャンペシノと呼ばれる小規模農業を家族労働で行い、農薬もほとんど使っていない。生産されたコーンは基本的には家族内で消費され、自家製の種子で1から2ヘクタールの畑に植えられる。多くの共同体は都心から遠く離れた地域にある。この調査に参加した各共同体はサンプルサイズを統一し、採取場所はランダムに選択され、各採取場所の中心と四隅から採取した。

2003年1月に、プエブラ州、ベラスケス州、チファファ州、サンルイスポトシ州、メキシコ州、モレロス州の105個所から採取した520検体の葉を分析した。 2003年8月には、トラハカラ州から追加サンプルを採取し分析した。それらも下記のような同様の分析法で陽性となった。

 

Adgia社製の商業用テスト・キットを使い、DAS-ELISA法でエンドトキシンの存在を決定する試験で、620nmのフィルターを装着した光電比色計を用い、第一回のテストはGM生物がもつ5種類のタンパク質が存在するかどうか決定した。 これらが検出する4種類のタンパク質はバチルス・チュウリンギエンシス(Bacillus Thuringiensis)由来のBt−Cry1Ab/1Ac、 Bt−Cry9C, Bt-Cry1C, Bt-Cry2aで、他の一つは除草剤耐性のCP4EPSPSである。

53共同体の95箇所から採取した105サンプルのうち、48.6%が組み換え遺伝子陽性であった。これらのうち17%は3種類以上の遺伝子陽性で、13%が2種類以上の陽性、18.6%が1種類のみ陽性であった。分析した全サンプルのうち、21%でCry-1a/1acが検出され、26.67%がCry9C(スターリンク)陽性であった。他の34%はCP4EPSPS陽性だった。

2003年7月・8月には第二回目の調査が行われ、1500検体の葉からなる306サンプルが分析された。これらのサンプルは、オアハカ、プエブラ、チファファ、ジュランゴ、ベラスケスの6つ(5つ?)の州の101の先住民共同体の畑の四隅と中心から採取したサンプルを使って行われた。分析はAgdia社のキットを使い、DAS-ELISA法でFumigaciones y Mantenimiento de Plantas S.C.研究所が、620nmのフィルターを装着した光電比色計を使って行った。検出したのは、害虫抵抗性植物が作る3種類のBtトキシン、Bt-Cry1Ab/1Ac、Bt-Cry9C,Bt-Cry1Cと、除草剤耐性の一種類CP4EPSPSである。この場合、全306サンプルのうち32サンプル(10.45%)が陽性だった。内訳は、1%がBt-Cry1Ab/Ac、1%がBt-Cry9C, 3.6%が除草剤耐性CP4EPSPSであった。4.9%は2種類または3種類の異なるタイプのBt(Bt-Cry9C、Bt-Cry1Ab/1Ac)と除草剤耐性で、0.65%が2種類の組み換え遺伝子CP4EPSPSとBt-Cry1Ab/1Acを持っていた。

残り0.33%はCP4EPSPSとBt-Cry9C陽性だった。

105箇所のサンプルのうち18個所で、1.5%から33.3%が陽性だった。オアハカ州とチファファ州で見つかった奇形トウモロコシはGM陽性だった。

 

メキシコのトウモロコシで見つかった組み換え遺伝子作物を市場に出している企業と商品:

       Bt-Cry-9C はアベンテイスのスターリンクで、アメリカでは食用禁止。

Bt-Cry 1Ab/1Acはモンサント社のイールドガード・ブランドと、ノバルテイス社(シンジェンタ所有)のノックアウト・ブランド、マイコジェン社のネーチャー・ガード・ブランドに含まれる。

Bt-Cry1C はマイコジェン社の製品に含まれる。CP4EPSPSはモンサント社の除草剤耐性、ラウンドアップ・レデイー・トウモロコシに含まれる。地域的にはフェナとかバスタと呼ばれる除草剤グリフォサートに耐性である。

 

詳しい情報は下記にお問い合わせ下さい。

      ETC Group in Mexico: (+52-55) 55 63 26 64), silvia@etcgroup.org

      CECCAM (+52-55) 5661 1925 , ceccam@laneta.apc.org

      CENAMI, cenamidad@terra.com.mx

 

 

 

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