メキシコのGM汚染は水平遺伝子伝達?

 

メイ・ワン・ホー

2001年12月4日

訳 山田勝巳

 

メキシコの人里離れた地域に生育する野生種のトウモロコシに組み換えDNAの汚染があった。分子生物学者は水平遺伝子伝達がCaMV35S(カリフラワーモザイクウィルスのプロモーター)を持ちこんだのではないかという。

 

カリフォルニア大学バークレィ校の研究者が、南メキシコ、オアハカ州シエラノルテの山越えの道から20km以上入った2ヵ所から3本の野生クリオロを採種して来た。 一本に150―400粒の実がついており一粒毎が受粉の結果できたものある。 バラのディコンサの検体を地元にある政府の食糧支給店舗から入手した。 7種の検体を一般に市販されているGM作物全部に使われているカリフラワーモザイクウィルスCaMV35Sプロモーター用プローブを使って組み換えDNAがあるかどうか分析した。  

 

野生のクリオロ6検体の中4検体でCaMV35Sプロモーターが陽性で、ペルーにあるクスコ渓谷の青トウモロコシとオアハカ州シエラノルテの歴史的コレクションからの検体は共に陰性だった。 バラの検体ディコンサは強い陽性で、その強度はモンサントのラウンドアップレディ・トウモロコシやBtトウモロコシと同じくらいだった。 これは、(生産国で)望まれない組み換え食品が「食料援助」として多くの国へ捨てられていることを証明している。

 

メキシコ政府は、独自に組み換え汚染はオアハカ州以外の州でも野生の品種に拡がっていることを確認している。1本の穂の粒では3―10%が組み換えで、バークレィの研究者の結果と似ている。 クリオラの4本中2本から、ディコンサ検体同様、ターミネーター配列T-nos(アグロバクテリウム・チュメファシエンス由来)に陽性の物が出た。3番目のCaMV35S陽性検体にはBt遺伝子配列があった。

 

研究者は、次に組み換えCaMV35S挿入位置の隣りのDNA配列を調べた。 各検体に大きさの違うDNA断片が1個から4個見つかっている。 CaMV35Sの隣の配列は多様だった。2つは、ノバルティス社のBt11のような現在市場に出回っているGMトウモロコシ入っているadh1遺伝子の一部分を含む、人工合成された配列構造とそっくりであった。他の配列はレトロトランスポゾンを含むクリオロ・トウモロコシのゲノムの一部である。 それ以外は、遺伝子銀行(GenBank)に登録されている配列に似ている物はなかった。

 

どうしてこれ程人里離れたところにある野生種が汚染されたのか。 メキシコでは組み換えトウモロコシの栽培禁止は1998年から施行されている。 汚染は、禁止がいい加減にしか守られなかったからか。 それとも1998年以前に混ざったのが生き残ったのか?

 

単なる花粉による交雑では、水平遺伝子伝達と組み換えを示す汚染破片の配列の多様性を説明できない。 研究者自身はこの可能性をのべていない。 特筆すべきは汚染された検体の全てがCaMV35Sプロモーターを保持していたことで、それ以外の組み換え構造はなくなっているか別の物に変わっている。

 

この発見は、CaMV35Sプロモーターには組み換えホットスポット(訳注:突然変異頻発領域)があり、ばらけたり他のDNAとくっついたりして水平遺伝子伝達や組み換え(文献2−4)を起こしやすいという我々の警告と一致する結果になった。 我々はCaMV35Sプロモーターを使った組み換え作物は、早急に止めるように1999年に要求した。 それ以来、CaMV35Sプロモーターのホットスポットを発見した研究者は、これ以上このプロモーターを使わないように勧告はしたが(5)、中止までは呼びかけなかった。

 

文献

1.. Quist D and Chapela IH. 組み換えDNAがメキシコ オアハカで伝統トウモロコシの野生種に入り込む. Nature, 414, 541-3, 2001.

2.. Ho MW, Ryan A and Cummins J. カリフラワーモザイクウィルスプロモーター、災害のレシピー?

Microbial Ecology in Health and Disease 1999: 11: 194-197.

3.. Ho MW, Ryan A and Cummins J. Hazards of transgenic plants with the cauliflower mosaic viral promoter. Microbial Ecology in Health and Disease 2000: 12: 6-11.

4.. Ho MW, Ryan A and Cummins J. CaMV35S promoter fragmentation hotspot confirmed and it is active in animals. Microbial Ecology in Health and Disease 2000: 12: 189.

5.. Christou P, Kohli A, Stoger E, Twyman RM, Agrawal P, Gu X. Xiong J, Wegel E, Keen D, Tuck H, Wright M, Abranches R and Shaw P. Transgenic plants: a tool for fundamental genomics research. John Innes Centre & Sainsbury Laboratory Annual Report 1999/2000, p. 30. See "Top research centre admits GM failure" ISIS News 7/8, February 2001, ISSN: 1474-1547 (print) ISSN: 1474-1814 (online) www.i-sis.org

 

 

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