メキシコにGM汚染広がる

科学者は作物の品種数が劇的に減少するのを心配

BBCニュース(イギリス)

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ニック・マイケル(BBCメキシコ通信員)

訳 河田昌東

 

グローバルな食糧安全保証に関する問題を議論するために、政治指導者と学者らが月曜日(10日)からローマで3日間の会議をはじめる。 この国連食糧サミットは遺伝子組換え作物の広がりと南アフリカの飢餓に関する緊急の問題も議論する。

メキシコからの最近の報告では、GMコーンの栽培禁止にもかかわらず、数1,000種類のコーンを持つコーンの遺伝子の故郷はGM遺伝子で汚染されていることを示唆している。最も酷く汚染しているのはオアハカ州で、ある地域ではコーン試料の4分の1がGM陽性であった。

 

GM汚染

この地域には数1,000の零細下請農家が住んでいる。州のセントラル・マウンテンの高地に住む、そうした農民の一人、オルガ・マルドネードは彼女の小さなコーン畑の草取りをしていた。畑はたった40平方メートルしかなく、彼女と家族の食糧をまかなうには到底足りない。

「コーンは私達の生活手段よ。私達が食べるトーチラスやスープのほとんどはコーンで作るの」と彼女は照りつける太陽の下で私に語った。

しかし、6ヶ月前オルガはショックを受けた。彼女の畑のコーンが組換え遺伝子で汚染していることがわかったからだ。 今彼女は子ども達の健康が心配だ、という。「子ども達はいつもコーンを食べているのだから心配だわ。食べてもいいものかどうか私達には分らないのだから。政府は何も言ってくれないし。本当に何も」 ここからちょうど10マイル下ったところに、白い作業衣のメキシコの田舎の労働者には似つかわしくないハイテク研究所があり、そこで外国産のコーンの試料を分析している。コーンの分析所では電気スターラーのブーンという音がなっている。この民間研究所がメキシコ各地のコーン試料からGM汚染が広く拡散していることを発見したのだ。

4年前からGM作物のモラトリアムが始まっているにも関わらず、その網の目をかいくぐって沢山のGM品種が入りこんできた」というのは研究員のユアン・マーチンである。「推定ではメキシコで収穫したコーンが、アメリカからの輸入コーンと混ざってしまった。そのコーンは人間の食用のはずだったが、農家はそんなことは気にせず、自分の畑に蒔いてしまった」と彼は言う。

 

魔神が放たれた

この問題についてメキシコ政府の態度を知るのは容易でない。州政府と連邦政府はGM汚染の存在そのものについても互いに矛盾しているように見える。 「かりにGM汚染があったとしてもそれは政府の失敗のせいではない。我々は農家が輸入コーンを種子に使わないように沢山のキャンペーンをやった。この4年間こうした汚染が起こらないように農家に徹底させてきたのだから」というのはメキシコ農務省のスポークスマン、ビクトル・アランビュラである。

 

しかし、汚染は起こった。GM遺伝子は瓶の中から這い出し、多くの人々が心配している。GM作物を食べたらどんな健康リスクがあるかに関して世界的に受け入れられている研究はないが、環境保護者達は多くのGM種で害虫が抵抗性を持つようになる、と言っている。

「メキシコのコーンの品種数が大幅に減るかも知れない。今までは世界の何処かでウイルスが発生したら人々はここにくればウイルス抵抗性のコーン株を見つけることが出来た。 GM汚染はそんな状況をすっかり変えてしまうかもしれない。 数1,000種類のコーン品種は永遠に失われ、世界中の食糧安全保証が脅かされるだろう」というのは40年にわたってメキシコのコーン栽培者と研究を続けてきた、アメリカで教育を受けた79歳の元気な植物学者ブーン・ハルバーグ氏である。

 

ともあれ、オルガのような零細農家が最も直接の影響を受ける。彼女にとっては毎日の食事時が今では心配時になった。彼女は子ども達に自分が育てた遺伝子組換えコーンで作ったトーチラスを食べさせなければならないからだ。「私は政府にだまされたと感じている。メキシコでは相変わらず農家の願いは無視されているのだよ」と彼女は蒸したコーン・ドリンクをお玉じゃくしでボールに移し替えながら言った。

 

http://news.bbc.co.uk/hi/english/world/americas/newsid_2034000/2034512.stm

 

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