ISIS レポート
2002年 4月29日
メイ・ワン・ホー
訳 山田勝巳
メキシコ原種、最悪の汚染
メキシコ政府上級職員が、独自の研究者による調査結果を発表してトウモロコシ戦争が一層激しくなっている。メイ・ワン・ホーがハーグのバイオセーフティ会議について報告。
この発表は4月18日にハーグの生物多様性会議の席上で行われた。 メキシコ生物多様性委員会の事務局長ホルヘ・ソベロン上級公務員は、政府の行った検査で汚染の程度は当初報告された以上に悪いことが分かったという。
カリフォルニア大学バークレイ校のイグナシオ・チャペラとディビッド・クィストがメキシコの奥地に生育する原種の汚染を報告して論争が巻き起こした。 政府は、オアハカ州とプエブラ州からサンプルをとり続けてきたとメキシコ政府環境省にあるエコロジー研究所のエゼキエル・エズクラ所長は話す。これらの州は遺伝子原産地である。
1,876本の苗が収集され、カリフラワーモザイク・ウィルス(CaMV)
35Sプロモーターによるスクリーニングで汚染の証拠が見つかった場所は95%に登る。 ソベロン氏は、純系であると思われてきた種の汚染は、これまでの記録では最悪のものであることを確認した。
最悪の汚染は幹線道に近いところで見つかっており、ここでは村人にトウモロコシが売られている。 奥地での汚染は1−2%に下がっている。 モンサント、シンジェンタ、アベンティスのバイテク巨大企業は、全てCaMVプロモーターで組み換え作物を作っている。汚染源を特定するためには、組み込んだGM構造の詳細とゲノム中の位置が分からなければならない。残念ながら、そのような“遺伝子毎の”分子データはあったとしても企業秘密として公になっていないし、情報を出すことも拒否している。(あきれたGM汚染否定を参照)
「これは受け入れがたい事だ。監視するのに必要な情報がない状態でどうやって監視すればよいのか?」とソベロンは問う。 これは、その後だらだらと続いたGMOの荷に付けるべき情報はどうあるべきかという議論を行ったバイオセーフティ会議で提起された大きな問題だった。 アフリカ地区団長でエチオピア代表でもあるテウォルド・イグジアベー博士は、メキシコのトウモロコシ汚染を引き合いに出した、全ての情報を出す必要性を主張した。
オーストラリアの代表は、この主張に対し、ネ−チャーが論文を撤回している事を挙げてかの研究には疑問があり問題は存在していないという印象を与える反論をした。 オーストラリアはアメリカを中心とするマイアミグループの一員で、バイオセーフティ合意に組みしないにもかかわらず、議論を牛耳っている。 だが、このマイアミグループでさえ分裂の兆しが見えてきており、アメリカは次第に孤立してきている。
幸い、これが議論の要になると考えて、私は短い解説文を書き全ての代表に渡した。これらの研究者は組み換え汚染があったことは認めている。論議になっているのは、組み換え構造物が、土着原種のゲノムに入り込んだ時、ばらけていたという発見についてだ。 この論争を決着するには、組み換え種毎の(event-specfic)分子データを入手するしかない。 この私の介入にすぐに反応したのはUS業界グループBIOのバル・ギディングズで、ネーチャーの論文は撤回されたのではなく、反駁されたのだと言う。 これに対して、もう一枚のレポート(あきれた組み換え汚染否定)を代表達に読んで欲しいと配った。
後ほどほとんどの代表は、謝辞を述べ他に情報がないかと尋ねてきた。 このうち少なくとも何人かは、同じ遺伝子が別の作物に入っても同じ組み換えが起こると思っていたようである。
業界にとって分子データを出すことは、組み換え種が元来不安定なものであることをさらけ出すため絶対にしたくないことだ。 それで、問題をすり替え、分子データから関心をそらそうとしているのだ。
OECD(金持ち国クラブ)は、GM賛成派で知られているが、会議の中で「OECD組み換え植物識別ガイド(OECD
Guidance for the Designation of a Unique Identifier for Transgenic Plants)」を提出した。この文書は、GM輸出国からのGM輸入品に関する詳細な情報に対する圧倒的な要求に応えるはずのものだった。 しかし、この「識別法(unique
identifier)」 は、バイオセーフティとは全く関係のない代物だった。 単なる、これまた問題の多い商業目的に承認された作物の科学的電子データベース、バイオセーフティ情報センターのアクセスコードにすぎなかった。 私は、更にOECDの陰謀を警告した「組み換え種毎(event-specific)の分子データに固執すべし! バイオセーフティでいう“識別法(unique
identifier”とは“組み換え種毎の分子データ”である。ISISメンバー用HP」を配布した。
その他の情報源:
“メキシコの貴重な遺伝子宝庫が組み換えトウモロコシで汚染”
ポール・ブラウン、ガーディアン
2002年4月19日
http://www.guardian.co.uk/GMdebate/Story/0,2763,686955,00.html