メキシコ政府が遺伝子組換えトウモロコシによる大量の汚染を確認
02年4月19日
ガーデイアン(英国)
ポール・ブラウン記者
訳 河田昌東
メキシコ政府は、遺伝子組換えコーンの禁止にもかかわらず、世界の主要な作物の遺伝子銀行の役割をしている地域で広範な汚染があることを確認した。遺伝子組換えによるコーンの最悪の汚染の報告は、昨日ハーグで開かれている生物多様性会議の席で行われた。
これはもともと昨年11月にネーチャー誌で報告され、その後今月になって同誌でかっこ悪く撤回されたコーンの突然変異体の発見で騒ぎになった問題に再び火をつけるものだ。しかし、メキシコ政府の生物多様性問題委員会の上級職員で事務局長のジョージ・ソベロンのスピーチでは、メキシコ政府の試験によると汚染のレベルは当初報告されたよりも遥かに深刻である。
メキシコは悪条件下でも良いコーンを作り出すための交配に使われる数百種類のコーンの品種の故郷である。この遺伝子銀行を保護するために、政府は1998年に遺伝子組換え品種の作付けを禁止した。
はじめ、メキシコ政府はネーチャー誌に載った、カリフォルニア大学バークレー校のチャペラとクイストによる汚染の報告を否定した。しかし、同政府はチャペラらの報告にあった二つの州オアハカとプエブラでサンプルを採取した、とメキシコ環境省の生態学研究所長のエゼキール・エツキュラは言った。この二つの州はトウモロコシの遺伝的故郷である。
野生コーンの苗を全部で1876本採取したが、この二つの州の採取場所の95%で汚染が見られた。1箇所ではコーンの35%に汚染があった。恐らく純粋種のこうした汚染はこれまで各地で報告された中でも最悪のものだ、とソベロン氏は確認した。
「汚染は疑いない」「我々は種子の8%が汚染していることを見出した」と彼は言った。アメリカからメキシコに輸入されたコーンは、GM由来だということに無頓着な農民によって種子として利用されたようだ。最も汚染の酷いのは幹線道路沿いで、GMコーンがこうした村人達に売られたのである。道路から離れたところでは汚染は1〜2%であった。
汚染発見の要因はGM作物で広く使われコーンにも殺虫遺伝子と共に組み込まれているカリフラワー・モザイク・ウイルスのDNAの存在である。ソベロンによればこの技術はGM開発企業のモンサント、シンジェンタ、アベンテイスのいずれも使っている。
政府はこの3品種のどれが汚染の原因か突き止めることは出来なかったが、それはこれらの企業がどんな蛋白質を使っているか、商業的に微妙な情報の公開を拒んだからである。「彼らが情報を提供しないかぎり、何が起こりつつあるかどうやって監視するか極めて難しいことが分った」と彼は言った。
この調査は継続中で、最初のチャペラらの論文が出版されてから論争が起こった後なのでメキシコ政府はこの結果を科学雑誌に投稿する前に慎重に検討している。