メキシコのコーンの研究にカリフォルニア大学バークレー校で魔女狩
コーンの研究でカリフォルニア大学は苦悩
デイリー・カリフォルニア
02年4月9日
エンジェル・ブレワー記者
訳 河田昌東
カリフォルニア大学(以下UCと訳す)バークレー校の助教授ミゲル・アルテーリによれば、UCの植物・微生物学部は彼らの仲間の一人の科学者の立場を破壊しようと組織的に動いている。
先週、権威のある雑誌ネーチャーが11月号に載せたUCバークレー校の助教授イグナチオ・チャペラと大学院生デービッド・クイストの論文を撤回すると表明して、大学中で混乱が起こった。元の論文は充分な客観的レビューを行って載せたもので、それは数名の科学者がそれを読み、掲載を承認したことを意味している。
チャペラとクイストの論文は遺伝子組換えコーンがメキシコの在来種に侵入したと結論している。メキシコ政府は遺伝子組換えコーンの栽培を1998年に禁止しているので、この発見は科学界にショックをもたらした。しかし、ネーチャー誌によれば、他の科学者から批判を受けて一連のチェックを行った結果、チャペラらの研究は十分な基礎に基づいていない、と編集者は結論した。UCの同学部の教授達は、チャペラの論文に失望を表明して「メキシコの遺伝子組換えトウモロコシ・スキャンダルにおける科学的談話を支持する」とする共同声明を発表した。
UCバークレー校の教授と大学院生19名の署名のある共同声明は、チャペラに対する「マッカーシスト・キャンペーン」を非難する114名の個人と団体が署名した請願に対応して出されたものである。 学部長のアンドリュー・ジャクソンは声明に署名した19名の一人である。「何かを出版すれば、いつも批判にさらされるものだ。明らかにチャペラのアプローチは本来あるべきものに比べて厳密性にかけている」と彼は言う。
反対派は共同声明の公表だけでなくネーチャーがチャペラの論文を撤回した背景を詮索し問題にしている。「チャペラの論文は出版前に専門家のレビューをすでに受けていたのだ。批判する教授達のやり方は倫理的でない。もし、彼らが何かを言いたいなら、そこの所をあいまいにすべきでない」とUCの環境科学、政策、管理学部のアルテイーリはいう。
アルテイーリの懸念は、強力な製薬会社シンジェンタが、チャペラの仕事を論破する研究に関わった教授達に影響を与えていなかったかどうか、である。
1988年に、バークレー校は当時ノバルテイスとして知られていたバイテク企業(現シンジェンタ)と厄介な同盟関係を結んだ。その同意書では、同社がUCの植物・微生物学の研究者たちに2500万ドル(約33億円)を提供することになっていた。チャペラはノバルテイスとの契約に反対するグループのスポークスマンであり、その結果ノバルテイスの資金が欲しい学部教授達の軽蔑の的になっていたかもしれない、とUCの環境科学・政策・管理学部長のステーブ・ベイシンガーはいう。「チャペラは遺伝学で儲かる企業を脅かした。それが彼の仕事を異常な精査の対象にしたかもしれない」とベイシンガーは言う。
アルテイーリは先週彼自身の声明を発表し「倫理的な合意形成のためのキャンパス中の議論」を呼びかけた。その声明の中で、彼はバイオテクノロジー分野で、ある教授が一時的に沈黙を強いられ、それから攻撃された同様なケースについて述べている。「今、ある人々はチャペラとクイストに対して同じことをし、他の学者たちに遺伝子組換え生物にたいする反対を止めるように警告しようとしている」とアルテイーリは声明の中で述べている。
チャペラも彼の研究の批判に他の同僚達が加わっていることに注目している。
エデンバラ大学(英国)の高名な教授アントニー・トレワバスは 「バークレー校は科学の評判を落としたと言うことだけでもチャペラの地位を奪うべきだ」という電子メールを、UCバークレー校の教授達に送った。
共同声明の署名者達は声明がチャペラを攻撃するためのものではない、としている。しかし声明の結果、チャペラは昇格と在職権の見なおしの対象になっている。「チャペラは今どんなダメージも彼の昇格に影響する地点に立たされている。それは彼のキャリアに影響与えようと試みる人々の仕業かもしれない」とベイシンガーは言っている。