Nature Online:10 March 2003
April 2003 Volume 21 Number 4 pp 439 - 442
他家受粉植物や単為生殖作物で
選択マーカーを除去した遺伝子組換え体を作るための形質転換方法
Nick de Vetten, Anne-Marie Wolters, Krit Raemakers, Ingrid van der
Meer, Renaldo ter Stege, Els Heeres, Paul Heeres & Richard Visser
アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens )を使った植物細胞の形質転換(遺伝子組換え)は非常に低い頻度でしか起こらないと一般に考えられている。そこで、外来DNAを取り込んだ植物を同定するために使われるのが選択マーカー遺伝子である。抗生物質耐性や除草剤耐性の遺伝子がその目的のために広く使われていている。過去数年間、消費者と環境保護グループは抗生物質耐性や除草剤耐性遺伝子を使うことに対して、生態学的立場や安全性の観点から懸念を表明してきた。この心配の科学的な決定的根拠はないが、マーカー遺伝子のない植物を作ることは確かに遺伝子組換え作物の社会的受容に貢献するだろう。
マーカー遺伝子のない組換え植物を作るためのいくつかの方法がこれまで報告されてきた。例えば、コ・トランスフォーメーション、トランスポーザブル・エレメント、サイト特異的組換え、あるいは染色体内組換え、などである。これらの方法の多くは時間もかかり効率も良くないばかりでなく、選択マーカーのない組み換え体を作ることは容易じゃない、という前提のもとにこれらは使われてこなかった。この論文で、我々は選択マーカーを使わずに遺伝子組換え植物を同定出来る方法を提案する。
この戦略では、毒性A. tumefaciens 株(訳注)による植物組織又は細胞の形質転換とPCR分析後に組換え体細胞又はシュートの選択を行う、という技術を使う。
AGL0株のA. tumefaciens を使ってポテトの組織を処理した結果、使ったポテトの遺伝子形にもよるが5%の効率で組換え体が分離できた。
この方法は、選択マーカーを除去するために、遺伝的分別やサイト特異的DNA欠損システムを使う必要が無く、信頼できて効率よく遺伝子組換え植物を商業利用するために利用可能である。特にポテトやキャッサバのような単為生殖(挿し木や挿し芽など)で増やすものには有効である。
(訳注)通常、遺伝子組換え植物を作る際には、アグロバクテリウムのプラスミドの中の腫瘍形成遺伝子を除去した(無毒化)ものを使う。この実験では、毒性プラスミドのまま外来遺伝子を挿入する。