2003年8月6日
厚生労働大臣 坂口 力様
遺伝子組み換え食品の表示・安全性確認基準に関する質問
1. 遺伝子組み換え食品の表示は流通を認めたすべての食品について表示がされなければ消費者の選択権は保証されません。植物油・醤油など未表示食品、食品添加物および飼料への表示導入を求めます。また、分別証明のある「不使用表示」に5%程度の混入を認めているのは偽表示であり、「不使用表示」は現在の高い混入率を少なくとも欧州並みの0.9%以下にすべきです。今後表示制度の充実をどのように図っていくのですか。
2.前回、遺伝子組み換え食品の安全性確認基準について、コーデックスで見直しがされたと言われましたが、その見直し内容を明らかにしてください。また、遺伝子組み換え食品の安全性に関する日本の基準の見直しの柱を具体的に教えて下さい。
3.「安全性の確認がされた後、新たな科学的知見が出た場合に見直しをされる」と言われましたが、見直しをする仕組みを教えて下さい。
科学的知見の情報をどこが収集し、新たな知見として再評価を判断するのは誰が、どういうプロセスで行うことになっているのですか。
4.前回、遺伝子組み換え品種同士の掛け合わせが安全とされる根拠を質問しました。FAO/WHOの報告を基にした当時の食品衛生調査会の「後代交配種の取扱いについて」を根拠とすると説明されましたが、「後代交配種の取扱いについて」は組み換え品種と従来の品種のかけあわせの場合のものです。組み換え品種同士の後代交配種を安全とされた根拠を再度お示しください。
5.組み換え品種同士の掛け合わせを安全とする根拠となる文献、および先のFAO/WHOが安全とした根拠の文献を示し、提供してください。
6.遺伝子組み換え食品の安全性確認を企業の申請データのみによるのではなく、国独自の検査を行うことが不可欠です。政府の取り組み、見解をお聞かせ下さい。
7. モンサント社の遺伝子組み換えダイズに関して、その安全性確認に申請された資料を書き写し、問題点を2000年9月提出しましたが、回答をいただいていません。質問に対する科学的根拠を示した回答を文章で早急にいただきたくお願いします。
8.遺伝子組み換え食品の安全性確認の基準作成を管轄する省庁名、担当部署名、責任者名を、確認させて下さい。
以上
食・農ネット
ストップ遺伝子組み換え汚染種子ネット
全国農民組織連絡会
中部よつ葉会
反GMイネ生産者ネット
日本有機農業研究会
音羽米研究会 ほか
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議 事 録
■表示に関して(1)
しょうゆ、油などの加工農産物では、GM-DNAが製造過程で分解されて検知できないものについては表示の対象としていない。今後は様子を見ながら検討してゆきたい。
■GMの混入率5%以内という点に関して分別流通管理を行ってもGMの混入は起こっている。食品衛生法の表示基準は、流通などの実態を踏まえた上できめることが必要ではないか。
H13年度、制度導入の際、それらの実態調査を行ったうえでIPハンドリングをしても起こりうる混入率を5%以内とした。
混入率の上限はできるだけ低くするのが望ましいと考える。従って、IPハンドリング技術の向上に伴って考えてゆきたい。
混入率の問題については現在、農水省とも共同会議を持っており、今後検討の課題としてゆきたい。
○H13の実態とはどのように捉えられているのか
■当時の流通の現状からして5%を超えるものではなかった。
○欧州では1%以内ということになっている。それに対して日本では5%以内ならばGM表示をしなくてもよい。欧州に輸出できないものを、日本になら輸出できる、しかも表示の必要がないという点についてどう考えるか。日本の消費者が馬鹿にされているように思う。そういう状況を放置しておくのか
■今後、共同会議の中でも論じてゆきたいと考えている。
○IPハンドリングの混入率を具体的に向上させるための方策が何かあるか
■よくわからない。
IPについては農水省からガイドラインが出ていて、食品衛生法とJAS法からのものがあり、それぞれふたつの制度に基づいて行うことになっている。輸入、積み上げ、輸送などの段階で証明書を発行することになっている。実態とあまりにかけ離れた基準では意味がない。
○日本が米国の追認をしているからいつまでたってもIPハンドリングの基準が改良されてゆかない。
■意見として聴いておく。
○共同会議で話をしてもらえるのか。
■遺伝子組み換えの制度についてももう一度検証する。これから2年間のうちに。今は原料原産地について検討中。今後の検討課題については明確にはできない。共同会議は12月から立ち上げるので、少し時間をもらいたい。
○96年のGM導入にあたって、分別は難しいから5%と農水省が決めていて、その基準をそのまま厚生省が使っている。しかしながら農水省は米国の見解をもとにして基準を採用している。安全性には現在早急な検討が必要だ。5%以下での混入なら、混入なしというのは偽装表示といえる。混入なしと言ったらなしとしてほしい。
■意見として聴いておく。また、共同会議の中で検討してゆく。
○昨年末、名古屋港でスターリンクが食品の中から見つかった。米国では栽培が禁止されているのに、飼料用には毎年平均的に混入している。その状況についてどう考えるか。
■スターリンクはH13から栽培されていない(明確な回答なし)。
○食品の安全性について(2)
今年、コーデックス委員会で安全性のガイドラインが設定された。日本の基準を食品安全委員会と厚労省とでどちらが審議するのか。
■厚労省の基準審査課太田
日本の安全性の見直しについては、食品安全委員会で行う。
リスクマネジメントについて。リスクアセスメントを経た上で、安全であると確認されれば、市場に流してもよいとするところが、リスクマネジメント。厚労省と両者で検討するということになる。
○食品安全委員会で確認されれば、リスクマネジメントではそのまま流通させてよいということになるのか。
■食品衛生法に基づいて確認するので、安全ということであればよい。
■新たな科学的知見について(3)
平成12年5月、食品の添加物の安全性の手続き4条で、厚生大臣は安全性審査を経た食品について、新たな科学的知見が生じたときに、食品安全委員会の意見を聞いて再評価を行うということになっている。
新たな知見の判断とは:
厚生大臣の判断
食品安全委員会の判断 がある
○コーデックスの日本語版はあるのか
■英仏版が公式のものとなっている。日本語版としては仮訳があって、この7月2日のコーデックス総会で採用された。
(8に対して)厚労省基準審査課と食品安全委員会との間で検討する。
■安全の認められたGM作物同士の後代交配種は安全である、ということの根拠について(4に対して)。
GM作物と従来の作物の掛け合わせという点で審議されていて、厚生労働大臣から小泉首相あてに出されている。
○GM作物とGM作物の後代交配種についての安全性の根拠はどのように確認されたのか。
■(4.5について)
H9年の審議会長から厚生大臣に答申されたものでは、GM種とそうでないものとの掛け合わせの考え方について。96年にはFAOとWHOの合同報告書がバイオテクノロジーと食品の安全性として出ている。それによると、動物や植物における伝統的手法などの従来的手法を用いて、遺伝子組み換え品種の後代品種が出てくるものと思われる。安全性評価を行うのに、GMの安全性が評価されている場合には、これらを掛け合わせた後代品種については両方の親品種の評価結果を適用し、実質的同等であると評価すべきである、としている。英文では stack(別個の遺伝子の積み重ね)について where
the geneticaly modified organizms....,these further strains should be assessed
on their meritとなっている(これらの後代品種が・・・ということで複数表示されていて、というのは単に後代交配種がこれ以降いろいろ出てきても対応できるように、との意味合い)。
○ 生井兵治の論文によれば、通常では同一の配列の遺伝子同士の掛け合わせでは、遺伝子の位置が入れ換わることはないが、バイテクによる組み換えの場合は、染色体上の遺伝子の位置が不定であるとされている。安全性がどのように科学的に認められているのか。
■安全性審査の手続き告示4条よると、6月末日までについては審議会(大臣の諮問機関)にゆだねていて、バイオ部会、分科会での議事録はでているので確認していただきたい。組み換え同士の交配の場合は、今回のように除草剤耐性と害虫抵抗性の代謝経路が互いに影響しあわないようなGM品種同士の掛あわせについては、獲得されたそれぞれの性格が変化していないこと、亜種間との掛あわせがないこと、(消費者による交配種の)摂取量、食用部位、加工方法について変更がないことで調査会において安全性確認をした。分科会についても確認された。
■(4.5について、2点目)
根拠になっているもの。
ワークショップで各国研究者の間で検討がなされるのが通常。
1995年1月、WHOワークショップの報告書では、バイオテクノロジーより得られた植物に由来する食品あるいは食品成分の安全性評価についての実質的同等性の適応の中にGM食品がより一般化するので、GM同士の交配種も開発される。たとえば熟する形質を遅らせるGMトマトと除草剤耐性トマトがいずれも実質的同等性が証明されている場合には、これらを交配させてできた品種は・・実質的同等である。これは我々が言っているわけではなく、95年のワークショップを受けた96年の報告書で述べられている。WHOが組織の中でどのような判断でこのような報告書に至ったかを答える立場でないので申し上げません。
○基本的にこの情報は古いと思う。これは96年のもので、やっと除草剤耐性大豆の商業栽培が始まった頃。もう2003年ですから、全然状況が変わっている。いろいろな個別の組み換え体に対する問題がこの後出てきている。この当時、まだ具体的なことは何もわかっていなかった。従ってこれを根拠にするのは危険ではないか。
FAOとWHOのGMOに対する評価で実質的同等性を再評価すると言うのが2000か2001年に出されているはず。今、資料を研究室においてきているので、もう一度調べてみるが・・・。
遺伝子同士の相互作用がないといわれたが、それが本当に実験的に調べられたものかどうかについては疑わしい。Btと除草剤耐性の間に理論的には関係なさそうに見えるが、遺伝子の調節とかつくられた蛋白質同士の関係は単純ではないことがわかってきている。であるから、現在の知見の上で判断するべきだ。
■7/1と7/2では、GMを取り巻く状況が変わってきている。
コーデックスのガイドラインについては、ステップ8に上がっても、コーデックス総会で大体6割以上が没になる、という状況だ。最新の知見によってどのように考えるかという点については、7/2にまとめられた植物ガイドラインを基に安全性審査基準が安全委員会で検討された新しいガイドラインがあるので、それで検討される。
日本が事務局となったコーデックスで、7/2にまとまるかどうか心配されたが、世界から評価を受けて取りまとめることができたガイドラインであり、それ以前においてはWHOのガイドラインを無視するわけにはいかなかったという経緯がある。総会での新ガイドラインが出て、新しい項目が加わったりということがあれば、食品安全委員会で見直しをしようと念頭に置かれている。
2年前に行ったように、厚生労働省のガイドラインから衛生法に基づいて審査を行ったように、不足の部分については猶予期間を持って見直されてもよいだろう。
○もしそうであれば、こんなに急いで認可する必要はなかったのではないか。科学的に見てもリスクは高まると思われる。安全委員会で改めて取り上げていただきたい。
■それにお答えする前に6、7について
企業の審査データで判断すべきでなく、独自で判断すべきだということに関して:
食品衛生法では、食品の安全性確保は一義的には、それを扱う事業者が責任を持って行うべきである。GMについても同様である。これまでに厚生労働大臣による安全性審査の手続きにおいては、事業者が厚生労働省に提出した安全性に関わるデータを専門的見地から策定された安全性審査基準(H12年5月の)に基づき、審議会の専門家が試験等の的確さを決めて科学的に検証しており、提出されたデータでは安全性が確認できないと判断された場合については、事業者に必要なデータを求める。必ずすべての項目について、追加指摘が行われている。この的確な審査を経て、審議会から安全性審査について答申がなされている。
2000年9月の質問について(7):
当時の担当者(三木)に確認したところ、廃棄したとのこと。既に処理済と推定している。
河田先生の指摘について:
7/3については急いだのではない。
今回厚労省で審査していたもので終わらなかったものが3項目。パパイヤ、アミラーゼ、リパーゼについては、安全委員会で審議が続いている。急いでいるわけではない。
○GM作物同士の掛あわせが安全だという確認がされたかということだ。
■今回の6項目についての申請書の内容については、企業側に特許シーケンスがないため、黒ヌリの部分が一切ないまま食品保険協会にすべての条項(3項目だけ)が載っている。
○たった3項目ではだめだということを言っている。
■当時、コーデックスの基準が出ていなかったため、WHOの基準で判断している。その点については全世界的に確認しているのは日本だけだ。
○日本以外にGMO同士の交配について認めている国はどこがあるのか。
■日本が最初です。審査会の意見としてはよいだろうということになっている。
注:後代交配種とは、厚生労働省では「承認済みの遺伝子組み換え品種と従来品種とを、従来の方法で掛け合わせたもの」と定義しています。