穀物怪物<モンサント>を襲撃するブラジル農家
オーガニック消費者協会ホームページより
(2003年5月19日 ブラジル サンパウロ発、ロイター電)
(訳)芦川 誠三
先週、ブラジル小作農運動(MST)の闘士が、アメリカバイオ農業の巨人を排斥し、有機農業を打ち立てるという目的で、モンサントの試験農場を襲撃した。彼らが言うところによれば、このMSTとその他の小作農グループ80名による、パラナ州ポンタ・グロッソにある実験農場襲撃は、同州では人気のないモンサント農法をやめさせるために実行されたものである。MSTの指導者、チェリオ・ロドリゲスが言うには、「パラナ州政府も我々生産者も、遺伝子の移植を望んでいない。よって、モンサントがここに技術センターを持つのは正しくない」ということである。
パラナ州は、ブラジル南部の広大な農業州で、モンサントはここで、従来農法と遺伝子組み換え両方のとうもろこしと大豆を試験している。ロドリゲスは、この占拠は、同州からモンサントを締め出し、43ヘクタール(106エーカー)の農場を有機農法に転換させるためだと言う。
ブラジルでは、1998年以来、遺伝子組み換え作物の商業生産は禁止されているものの、ブラジル南部では、モンサントの商標たる<ラウンドアップ・レディ>を使った遺伝子組み換え大豆の闇市場が隆盛を極めている。この大豆は、<ラウンドアップ・レディ>が広く栽培されているアルゼンチンとパラグワイから密輸されたものと考えられる。種子生産者協会「アブラセム」によれば、ブラジルの全大豆生産の大方30%が不正遺伝子組み換え品であるが、南部における不正栽培は、気候がアルゼンチン種やパラグアイ種に適しているためで、他の地域に較べ広大な広がりをみせている。
モンサントが言うには、ブラジルにおける遺伝子組み換え大豆の不正栽培はずっと糾弾しつづけてきたが、遺伝子組み換え栽培実験そのものは合法であり、同社研究の多くは、政府の穀物調査機関である、<Embrapa(エンブラーパ)>と共同で行われてきたものであり、また、農場での試験栽培はブラジルの法律に基づいて行われている。
モンサントは、また、農業化学製品、化学肥料のみならず、従来型の大豆、とうもろこし、その他種子のブラジルにおける、最大の生産者であり、販売者でもある。「彼らは、アメリカ、アルゼンチン、カナダに帰ればいい。そこでは、遺伝子組み換えは自由だから」と、ロドリゲスは言う。
5月9日 800人の闘士に襲われたポンタ・グロッソの農場は、試験所が壊され、とうもろこし畑は焼き払われた。モンサントは、「同社のスタッフと資産、研究およびブラジルの発展に対する暴力行為の責任追及を当局に要請する」と言い、この襲撃に加わった、パラナ州、農業労働者フォーラムのアントニオ・ヴォロチェンは、「我々はパラナ州に生物の多様性という大きな資産をもっているが、モンサントはこれを脅かすものである」と言う。