ケンタッキーの鶏肉・安さのからくり
レキシントン・ヘラルド・リーダー社説
2001年12月28日
抄訳 山田勝巳
タイソン食品社が、密入国者を連れ込んだと訴えられても、ケンタッキーの養鶏業を見てきた人は驚かないだろう。 驚くとすれば、こんな暴挙もいとも簡単に「食品が安ければ良い」という言い訳でまかり通ることだろう。 アメリカ人が世界を後目に受けている恩恵は、安い食品がスーパーに溢れていることだ。 本来の原価勘定をすれば、安い食料もさほど安くはない。
養鶏は好例
ケンタッキーでは、養鶏業を優遇税制と政府の助成金で納税者が支えている。 パットン州政権は業界に糞尿による水汚染を防ぐようにさせようとしてはいるが、環境リスクは、市民が負っている。
健康リスクはどうか。 これも市民が負っている。工業養鶏では、日常的に抗生物質を与えているので薬剤耐性菌を育んでいる。 これが、人の命を救うべき薬の効果を下げている。
養鶏や家畜業界は、何十億ドルもの補助金で安い穀物の恩恵を受けているために生産過剰を招いている。 この業界で安全性が省けるのは、安い未熟練の労働力があるからだ。 2年前タイソンの工場で鶏の臓物桶の中で二人のケンタッキー人が死んでいたのを思いだしていただきたい。
最後に鶏業界は、かつて高給で組合労働を雇っていたが、今ではこの国での法的権利を持たない中央アメリカの貧しい労働力に生産ラインが依存するようになった。 今月始め、テネシー州の連邦大陪審は、タイソンの役員が労働者をアメリカに不法滞在させるための偽の書類を入手していた、またこれが生産目標とコスト低減のために大目に見られていたとして起訴した。 安い食糧のために。
2年半に亘る秘密捜査に基づく起訴状は36件に及び、2名の理事と4名の前部長の名前が挙がっている。 タイソンのヘンダーソン郡にある工場も含む15工場が関わっている。
我が国最大の肉処理会社であるタイソン社は、内部調査を行って、4名の部長は解雇し、2名の理事は休職にしており、彼らは会社の方針に反して行動していたと、この告訴に異議を唱えている。 会社の上層部のどこまで波及するにしても、肉処理業者は貧しい移民の困窮賃金に依存していることは議論の余地がない。
ケーグルーキーストンは、ケンタッキーの農村自治区から助成と租税控除を受けていて、不法移民を雇い、その中のクリントンの郡にある工場では少年もいた。 英語が殆ど分からない子供達が大人でも危ない環境で働いていたということだ。
今度フライドチキンを買うために並ぶときは、環境コスト、公衆衛生コスト、納税者、農業政策、労働者の安全と国境警備の費用を考えていただきたい。