未だに使われるカナマイシンと抗生物質の相互作用

 

ジョー・カミンズ

ISIS レポート

訳 山田勝巳

 

カナマイシン耐性遺伝子が、この抗生物質は既に使われていないという理由で選択マーカーとして認可されている。しかし、カナマイシンは未だに使われており、カナマイシンと類縁の抗生物質間で交差反応が日常的に起こっている。

 

カナマイシン抗生剤は、作物の遺伝子操作で選択マーカーとして広く使われている。

選択マーカーは細胞や生体内に挿入され、挿入された細胞や組織を選択的に増殖させるためのもので、組み換えがおきていないものはこの過程で除去される。作物遺伝子操作では、選択マーカーは商業化したい組み換え体細胞や胚を識別するために用いられている。   

選択マーカー遺伝子は実験室で一度だけ短期間使われるのだが、その後も組み換え作物にはその全ての細胞にこの使うことのないマーカー遺伝子は存在し続ける。

 

抗生物質の中には、特定のタイプに交差耐性を持つものが知られている。ある抗生物質に対して抵抗性突然変異を起こすとその抗生物質の属する科全てに耐性を持つ場合がある(1)。

カナマイシンは、アミノクリコシド科の抗生物質である。カナマイシンと他のグリコシド科抗生物質、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、トブラマイシンの交差耐性は、個々に大きく違うことが分かった。ここに挙げた抗生物質は全て人の治療に使われている。 

アミノグリコシド抗生物質ネオマイシンは、カナマイシンBと交差反応して、リボヌクレアーゼ P リボザイム による16s リボソームRNA と tRNA の生成を阻害することが発見された(2)。

 

病原性バクテリアは、アミノグルコシド抗生物質への交差耐性と共に、一個のプラスミドが持ち込む多剤耐性を獲得することが多々ある。例えば、コレラの病原体であるビブリオ・コレリーは、最初インド、バングラディッシュ、タイ(3)で単離されたが、そのプラスミドは、テトラサイクリン、アンピシリン、クロラムフェニコル、カナマイシン、ゲンタマイシン、サルフィトアゾル、トリメトプリムに耐性を持っていることが発見された。 病原性バクテリアは、抗生物質を多用する地域では多剤耐性遺伝子を持つプラスミドを確実に獲得する。

 

カナマイシンは、もう医療では使われていないと遺伝子工学者は思い込んでいるが、警告ラベルもなしにカナマイシン耐性のある作物が市販されている北アメリカでは、この抗生物質が広く使われている証拠がある。カナマイシンは結腸と直腸(4)の内視鏡検査前と、目の感染症治療(5)に使われている。鈍い精神ショック(blunt trauma)の緊急治療(6)に使われ、大腸菌Oー157にベロ毒素を出させないで効くことが分かった(7)。 

 

結論として、GM作物に広くカナマイシン耐性マーカーを使うことは、現在の医療利用から考えて妥当ではない。

 

参考文献

1.. Onaolapo J. アミノグリコシド抗生物質間の交差耐性. Afr J Med Sci .1994, 23,215-9.

2.. Mikkelsen N, Brannvali M, Virtanen A and Kirsebom L. アミノグリコシドによる

p RNA分割の阻害. Proc. Natl Acad Sci USA, 1999, 96,6155-60.

3.. Yamamoto T, Nair G and Takeda Y. ビブリオ・コレリーの多剤耐性プラスミドによるテトラサイクリン耐性の出現 0139. FEMS Immunol Med Microbiol 1995,11,131-6

4.. Ishikawa H, Ikuko A, Minami T, Shinmoura Y, Ojo H and Otani T. 結腸と直腸の内視鏡治療後に起こる感染合併症の予防 J Infect Chemother, 1999, 5,86-90

5.. Hehl E, Beck R, Luthard K, Guthoff R and Drewelow B.アキュビューコンタクトレンズを使った患者の水溶液へのアモノグリコシドとフルオロキニノロネの浸透改善 Eur J Pharmacol, 1999, 55,317-323.

6.. Yelon J, Green J and Evans J. Efficacy of an interperitoneal antibiotic to reduce incidence of infection in the trauma patient a prospective randomized study. J AmCollSurg, 1996, 182,509-14.

7.. Ito T, Akino E and Hiramatsu K. Evaluation of antibiotics for enterohemorrhagic Escherichia coli 0157 enteritis effect of various antibiotics on extracellular release of verotoxin. 感染症学雑誌,1997, 71,130-5.

 

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