科学者らはヘルシーな魚油を含むGMビーフを作る
インデペンデント紙
http://news.independent.co.uk/world/science_medical/story.jsp?story=487945
04年2月5日
科学記者 スチーブ・コンナー
訳 河田昌東
この話は台所では大事件に聞こえるかもしれないが、科学者らはもうじき魚の油の性質をもつヘルシーな牛肉を作り出すかもしれない。研究者らは哺乳動物に遺伝子組換えでオメガ―3−オイルを筋肉に含ませることができることを証明した。この研究は実験室のマウスで行われたが、ハーヴァード大学の科学者らは同様なことが家畜でもやられるのは時間の問題だ、と信じている。ジン・カングはハーヴァードとボストンのマサチューセッツ・ジェネラル・ホスピタルの研究チームのリーダーだが、彼の言うには通常魚類に豊富にあって心臓病や動脈硬化の予防になるとして知られているオメガ―3−脂肪酸を哺乳類は作ることが出来ない。しかし、この研究チームはマウスの胚にオメガ―3−脂肪酸を合成する酵素を導入すると、マウスの筋肉にはオメガ―3が多量に含まれ,役に立たないオメガ―6−脂肪酸は比較的少量になることを見出した。この酵素はオメガ―6をオメガ―3に変える働きがある。「今後は家畜も遺伝子組換えし、その組織にオメガ―3が含まれるかどうか調べる」とカングは語った。
ニワトリのような家畜は既にオメガ―3の含量を増やす目的で魚油の多い飼料を食べさせている。しかし、科学者らはGM家畜のほうがより効果的だろうと信じている。カング氏は肉やミルク、卵などをGM動物で作っても魚くさくはない、という。なぜならオメガ―3は無臭だからである。「通常オメガ―3が欠乏している西ヨーロッパの食事を変えることはいくつかの近代病のリスクを減らす第一歩になるだろう」とカング博士は言った。
この研究で使われた酵素の遺伝子は線虫由来のものである。このfat−1と呼ばれる遺伝子はオメガ―6脂肪酸をオメガ―3脂肪酸に変える働きがあるが、見かけ上実験室で遺伝子を変えたマウスには有害な影響は起こっていない、と研究者らは言う。「この研究の他の可能性は、遺伝子治療によって人間の組織に直接fat-1遺伝子を導入することだ。」と彼は付け加えた。このアイデアでは人の体内でオメガ―3脂肪酸を作れるようにできるかもしれない。
有機農家を認証する土壌協会の政策部長、メルチェット卿はこの研究が人間の健康に役に立つ家畜の生産につながるという考えを否定した。「我々は殆ど全てのそうした主張がくだらないものだったことを知っている。 GM家畜はGM作物よりも人々に受け入れがたいだろうという考えは広く行き渡っている」と彼は言った。世界農業コンパッションのジョイス・ドシルヴァはオメガ―3をもつGM家畜を作るというアイデアにはぞっとするといった。「オメガ―3は菜種油など植物から容易に摂取できる。GM動物やクローン家畜はしばしば奇形の足や器官など広範な欠陥を持っている。」とドシルヴァは言った。